ゲート(仮)の捜索
オーロラが宇宙ゲートだと仮定すれば出入りする為の装置が宙域に残っている可能性が高い。と言うよりも残っていなければ不自然である。
連宋はいくつかの候補地をピックアップする。
「まず中心から調べようか?それとも円周上から?何処にする?」
連宋が尋ねるとサバーブは少し間を置いて答えた。
「ゲートが開くのが任意なのか自動なのか判らない以上、探索中に開く事も考慮する必要があるな。」
「探索中にゲートが開く場合か……運が悪ければゲートの斥力フィールドによって流彗星号に被害が出る?」
「おそらくな……探索は外側から行う。ゲートを構成する異星人の装置が斥力フィールドを展開している。だからオーロラの内側にその装置があるだろう。円周を螺旋状に中心へ向かい探索すればその装置を発見る事はたやすいはずだ。探索自体は分布図を考えて上側からの探索だな。さて、何が出てくるか……。」
「そうだな。何が出てくるのかわしも楽しみだよ。」
連宋の言葉にリランド、ミカエル、ハンニバルの三人も生き生きとした表情で大きく頷く。この時はそれほど時間をかけずに遺跡が見つかる……船橋にいる者全員がそう思っていた。
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宇宙のオーロラを見てから三日が過ぎた。
何十周もこの宙域を探索しているが宇宙ゲートの影も形も見つからない。それどころか小惑星さえ存在しない場所だった。
メインスクリーンに表示される探査データーの前でサバーブが腕組みをして唸る。
「流石に何も出てこないのは……。根本的な考え違いをしているのかもしれない。」
キャプテンシートからメインスクリーンを眺めていたミカエルが尋ねる。
「それは宇宙ゲートでは無いという可能性かな?」
しかし、サバーブはその言葉を否定する。
「いいえ。宇宙ゲートである事は最初の探査で確定しています。」
サバーブの言うとおり、最初外周部を探査した時に宇宙ゲートがある事は確定していた。
最初の探査結果が示したデーターは宇宙オーロラの位置に星間物質が何も検出されず、何も無い空間がチューブ状になっていたのである。
加えてチューブの内側の星間物質のデーターが外側とは著しく異なっていた。
そして海賊船はこの宙域で消えている。
これらを加味した結果、この宙域に宇宙ゲートが存在した事は間違いが無いと結論づけたのであった。
「宇宙のオーロラはここだけでは無く様々な場所でも目撃情報があります。この事から異星人は宇宙ゲートを恒常的に使っていたと考えられます。ですがその多くは開発星系もしくは開発の終わったばかりの辺境と呼ばれる星系です。太陽系近くの中央星系では全く目撃情報がありません。」
「目撃情報が無い?異星人は太陽系付近まで広がっていない?」
「いいえ、ミカエルさん。オーロラの目撃情報の無い地域でも異星人の遺跡は発見されています。その事から考えて異星人は広範囲、太陽系連合よりも大きな範囲に広がっていた事は間違いないのです。しかし宇宙ゲートの発見には至っていない……。考えられる事は二つ。」
「……?」
「一つは宇宙ゲート自体があまり使われていなかった。つまり数が無かった。だがこれはオーロラの目撃場所の多さから否定される。」
「もう一つは?」
「宇宙ゲートの遺跡と判らず回収した。その結果、宇宙ゲートが機能しなくなった。」
ミカエルはサバーブの説明に納得し膝を打った。
「しかし、サバーブ君。自分にはもう一つ疑問があるのだが……。」
「疑問ですか?何でしょう?」
サバーブは自分以外の者が疑問に思う事が事態解決の手がかりになる事を経験上知っていた。
「何故宇宙ゲートの装置が斥力フィールドの内側にあるのかね。」
「それは宇宙船を中心に斥力フィールドを展開させるから……あ!」
サバーブは再度メインスクリーンの分布図を見る。その分布図には綺麗に丸く小惑星帯が切り抜かれた様な図になっていた。




