茶番劇
海賊の親分は切り札らしい隠し兵器の片腕を損傷し無力化。その部下も右腕らしい男は上下に両断され、三騎あった強化防護服も全て大破。完全に無力化出来たとみて良いだろう。
圧倒的なまでの現状を見たサバーブが多目的装甲車を降り、連宋を賞賛する。
「流石連宋だな。強化防護服は動力源を避けての無力化、海賊の親分は切り札を壊され、右腕らしい男は両断……!こいつはサイボーグか!」
「うむ。おかげで簡単に無力化出来た。わしの強化防護服は機械類のセンサーを無効化するのは最も得意だからのう。」
「いやいや、だからといって殺さずに無力化ってどんな腕前だよって話だ。」
そう、恐るべき事に無力化された海賊達に死人は一人もいない。
両断されて死んだかの様に見える男も動力部分が生きている為かろうじて生命は維持出来ているのである。
三騎の強化防護服も動く事は出来ないだけで操縦者は生きているのである。
「とりあえず海賊の親分に話を聞くか……。」
サバーブと連宋が海賊の親分に持っていた物について尋ねようと近づくと突然地面に頭をこすりつけ跪いて平伏した。所謂、土下座と言う奴だ。
「命ばかりはお助けを……私はしがない商人でございます。」
「おいおい何を言って……。」
サバーブと連宋があっけにとられていると遠巻きに見ていた観客をかき分け物音を立てながらその場に近づく一団がいた。
「これは何の騒ぎだ!我々はサザンアルブス防衛団と団長のコクウである!」
大声を上げてサバーブ達と海賊の親分の間に割って入った。
「コクウ?」
サバーブはその名前に聞き覚えがあるのか首をかしげる。その彼の目の前でコクウは海賊の船長に近づく。
「おお!これは、これはコクウ団長殿……。お助けください。」
「これはキョウツ殿、いかがした?」
「……実はそこの暴漢に襲われまして。」
「な、な、なんと!温厚な商人であるキョウツ殿を襲うとは……。何という非道の輩だ。」
サバーブ達は目の前に行われる茶番劇を呆然とした表情で見守っていた。
「うぬぬぬ。許せん。無辜の市民を襲うとは非道の輩め!サザンアルプス防衛団団長、コクウ様が直々に成敗してくれる!そこに直れ!でやぁぁああ!」
「あ、馬鹿!」
何を考えているのかサザンアルプス防衛団団長コクウと名乗る男がサーベルを振りかざし連宋の強化防護服を斬りつけようとする。
しかしそこは多目的装甲車の防御範囲であった。
硬い金属が細かく砕ける音がしてコクウのもつサーベルの刃がはじけ飛ぶ。その音を聞いた連宋がポツリと感想を述べた。
「何だか石に鋸で引いた様な音だな……?」
「うぎゃああああ!我が輩の無尽サーベルが!!」
サバーブと連宋が呆れた顔をしていると顔を真っ赤にしてコクウが詰め寄ろうとする。
「これでも私は太陽系連合の少佐だった男だ!それにあの有名な”バレーヌの脱出”にも関わっているほどなんだぞ!」
つばを飛ばしわめきちらすコクウを見たサバーブが何かに気がついたのか声を上げる。
「連合少佐、”バレーヌの脱出”……お前コクウ・G・シデルか?」
「ぬ?何故我が輩の名前を……。」
コクウが目を細めながらじっとサバーブの顔を見る。
「……!!」
「げぇっ!サバーブ・Q・デジト!」
どうやらサバーブが知っている男の様だった。




