銀河中心方向へ
銀河中心方向
太陽系から銀河中心方向までの距離は約二万六千光年ある。
当然、銀河中心に行くまでの間には数多の星系があるのだが人類は太陽系から約二百光年までにしか星系国家が存在しない。
しかしこれは、二百光年以上離れた場所に拠点ともいえる星系が存在しないだけで二百光年以上の距離の探索は公私問わず進められていた。
いくつかの惑星には入植が進められているが、二百光年以上の位置にある星系には正式な国家という物は存在しない。いわゆる無法地帯だ。
しかし、ある者には別の呼び方、新天地と呼ばれていた。
サバーブは今後の方針を立てる為に新天地を目前で流彗星号を巡航速度へ移行させた。
「さて、新天地最初の星系、ウエストランドを目前にしたところで確認だ。今回の目的は“宇宙のオーロラ”の確認。それで間違いは無いですか?」
「そうだ。私が子供の頃聞いた話だ。宇宙を移動していると不意に虹色のオーロラの様な輝きを見る事が出来る……そう聞いた。」
ミカエルの言葉にサバーブは頷く。
「結構。次にオーロラの目撃情報についてだが……連宋。」
「オーロラの目撃情報は太陽系連合の星系内での目撃情報はない。」
連宋の言葉にリランドは不敵な笑みを浮かべた。
「“太陽系連合の星系内には無い”つまり、そこ以外にはあると言う事だな?」
「その通り。連合星系以外の場所ではかなりの数の目撃情報があった。わしが調べたところ今向かっているウエストランド星系近くでも目撃されている。」
リランドと連宋の話を聞いていたミカエルも思い出すかの様にぽつりと言った。
「そう言えば自分が二十歳の頃、宇宙船で移動する際に見た記憶がかすかにある。確かにあれはオーロラと呼べる物だった……。」
ミカエルの言葉を隣で聞いていたハンニバルは少し引っかかりを感じた。
(ミカエルはイラメカ出身であるのは聞いている。だが、イラメカでは黒人は宇宙船に乗れないはずだ……。彼はどうやって宇宙船に乗りオーロラを見たのだろうか?)
ミカエルは隣でひとしきり考え込むハンニバルをよそに話を続ける。
「自分が記憶している”宇宙のオーロラ”は映像で見る惑星上のオーロラとの違い虹色だった。どちらも美しく輝く物だったよ。」
ミカエルの話を聞いた連宋がサバーブに尋ねた。
「なぁ、サバーブ。惑星上でオーロラが見られる条件と言うのがあったとわしは記憶しているのだが……?」
連宋の話にサバーブは同意する。
「その通りだ。惑星上でオーロラが見る事が出来る条件は”太陽風”、”磁場”、”大気”の三つだ。これが無いとオーロラは見えないとされている。」
「大気の無い宇宙でオーロラか……。宇宙空間に何らかの気体が漂っていて……と言う事は無いのか?」
「仮に条件を満たせたとしてもオーロラの光が虹色だからな。」
「?」
「オーロラの色は励起した原子と受けたエネルギー量により変わる。窒素原子ならピンクや紫、酸素原子なら赤や緑だ。」
「それが虹色か……いったい何があるのだろうか?」
「それが宇宙の不思議というやつさ。」
そう言うとサバーブは期待に胸を膨らませた。




