スターの来訪
ミカエルの名前を聞いたリランドが首をかしげながら振り返りサバーブや連宋の方を向いた。
「なぁサバーブ。ミカエルという名前で何を思い浮かべる?」
「ミカエル?そりゃミカエルさんの事だろ?流彗星号の元持ち主の……。」
「わしも同じだ。」
「そうだよな。俺も同じなんだよ……。でもすごい人と言われるミカエルという人物が想像出来なくてなぁ……。」
リランドは頭を掻きながらキャサリンを見た。
「えぇ?リランドはミカエル・J・ソーンを全く知らないの?ミカエルはポップス界の貴公子とも言われているのよ?音楽を聴くでしょ?」
「ポップスか……俺がよく聞くのはジャズだからなぁ……。」
首をかしげるリランドの後ろからサバーブと連宋の声が聞こえる。
「私は主にクラッシックだな。」
「わしは雅楽だね。」
「え、ジャンル違い?……皆さん知らないのですか!?少し待ってください確か……。」
キャサリンは自分の端末を検索するとミカエルの映像を映し出しリランドに見せた。
「リランド、この人よ。この人がミカエル・J・ソーン。今をときめくスターよ。」
リランドは繁々と目を細めながら映像を見た。
「……なんだ、ミカエルさんじゃ無いか。キャサリンがすごい人が来ると言うから誰かと思ったよ。」
リランドの言葉を聞いたサバーブや連宋も同様に頷いていた。
「え?」
キャサリンの視線はリランドの顔とサバーブ達の顔を往復する様な動きをしていた。
「リランドの言うミカエルさんとミカエルは同じ人物?……!!そう言えば先ほどミカエル・J・ソーンは流彗星号の元の持ち主だと言っていた……。」
キャサリンはまさかと思うこの状況に驚きを隠せず呆然としていた。そのすぐ隣でリランドが歓喜に溢れる表情をする。
「サバーブ、連宋。ミカエルさんが来るんだってよ。」
「何?ミカエルさんが?それでは我々で出迎える必要があるな。」
「ビィはどうする?サバーブ?」
「ビィか……説明は状況によってだな。それでは出迎えに行こうか?」
三人は大きくうなづくとミカエルを出迎えに玄関に向かおうとする。
それまで呆然としていたキャサリンは我に帰るとリランドを追いかける。
「ち、ちょっとリランド!」
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ミカエルは集まる群衆を割りながらサリーレの玄関へ辿り着く。その後ろをハンニバルは群衆をかき分け何とかついて行っていた。
「やれやれ、ミカエル、Youは辺境でも人気だ。これは喜ばしい事だがここまでYouがここに来る必要はあったのか?」
ハンニバルは両手の掌を上に挙げて肩をすくめる。
「ええ、ハンニバル。彼らは貴方よりも前にお世話になった人達です。私が出向くのも当然のことなのですよ。」
ミカエルはにこやかに微笑みながらサリーレの入り口に向かい一歩を進める。
半透明のガラス製の扉が音も無く開き、ミカエル達の目の前に大きなエントランスホールが広がった。そのエントランスホールの中心には男達、サバーブ、リランド、連宋の三人が立ち歓迎の意を表した。
「「「ようこそ、我が社へ。ミカエルさん。」」」
「三人とも久しぶりだね。元気そうで何よりだ。」
ミカエルはにこやかな笑顔でサバーブ達と握手をしてゆく。
その様子をハンニバルや大勢のファン、そしてサリーレの新入社員達がぼんやりと眺めていた。




