スターが辺境にやって来た。 その1
古今東西、スターにとって厄介な存在の一つにスクープを狙うカメラマンの存在がある。
彼らはスターのスクープの為ならプライベートであろうと日夜つけ回す非常に困った連中だ。
そしてその彼らはこの宇宙時代にも存在していた。
スターとなったミカエルを付け狙うカメラマンは十人では利かない。しかも彼らはいくつかのグループに分かれて様々な星系に網を張っていた。
当然、辺境の星系であるエキドナ星系にも少ないながら彼らの仲間はいた。
その彼らの端末にリーダーからメールが入る。
「……ん?メールが入っているぞ……珍しい。」
「どうせ何時もの応援依頼だろ?今度は何処の星系だ?」
別の男がトーストを咥えながら返事をする。辺境の星系は暇な事が多い為、人数が必要な時には応援と称してかり出される事が多いのである。
「……どうも応援じゃ無いみたいだ。何々……。」
スワイプしメールを読み進める男の手が不意に止まる。
「何だと!そんな事があるのか!!」
「何だ?どうした?」
男は仲間の男に震えながら言葉を発した。
「大変だ……ミカエル・J・ソーンがエキドナ星系に来るみたいだ。」
聞いていた男は咥えていたトーストを落としてしまったが落とした事自体に気づいていない。
「何だって!」
それはトーストを落とした男が発した驚きの声だった。
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スターであるミカエルの移動はプライベート宇宙船、アバロン号を使っての移動であり、一般の旅客用宇宙船を使う事はない。
宇宙船にはミカエル用の船室の他、オフィス、医務室、スポーツジムも備え付けており万全のサポートが可能である。
「ハンニバルさん。彼らからの返事はどうなりましたか?」
「ソーリー、彼らは正規の手続きをして欲しいとの事だった。騒ぎにならない様に考慮したのデスが……。」
ハンニバルは辺境星系でもミカエルが現れれば騒ぎになると考えていた。その為には内密に移動する必要がある。
ただ問題はこの宇宙船がミカエルのプライベート宇宙船という事が知られていると言う事だ。
その為、サリーレの方から迎えに来てもらおうと考えてメールを送ったのだ。
「やはりミカエルの名前が欲しいのカ?」
ハンニバルの疑念にミカエルは笑って答える。
「彼らにそんな野心はないよ。どちらかと言うと判らなかったのではないかと思うよ。」
「WHY!ミカエルの名前を知らない?」
「そこが彼ららしいのだけどね。」
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ミカエルが乗る宇宙船、アバロン号が姿を現すとレルネー1の管制室は騒然となった。
それもそのはず、アバロン号はミカエルのプライベート宇宙船である事は広く知られており、その事は辺境星系であっても例に漏れない。
そしてそのアバロン号が来たと言う事は辺境星系にミカエルと言う大スターが来た事を意味していた。
アバロン号の姿を見た管制官の一人はミカエルと起こるだろう騒ぎを想像すると緊張と興奮のあまりその場で失神した。




