プロローグ
イラメカ帝国は銀河中心から太陽系を中心におくと左側にある国で皇帝イラメカ六世の統治する絶対君主制の国家である。
皇帝イラメカ六世は帝国はじまって以来初の女帝であり、その帝位も皇太子であった兄から奪い取った簒奪者だ。
イラメカ帝国は立憲君主制の様な体裁を整えているが議会はイラメカ六世の息のかかった者のみで運営されており実質、絶対君主制の国家となっている。
そのイラメカ帝国の帝都アイリーン(元の首都名はアインであったがイラメカ六世の即位十周年と同時に変更された。)でイラメカ六世が報告を受けていた。
彼女は白い肌、碧い目と黄金の髪を持ち均整のとれたプロポーションの美女である。だが、外見が美しいからと言って内面も美しいとは限らない。イラメカ六世はその最たる例だ。
彼女は“この世の生きとし生けるものは全て妾の為に存在する。“と言って憚らないのだ。
そのイラメカ六世の前に初老の研究者らしい男が平伏していた。
「……以上が遺跡の記録を解読した結果になります。」
イラメカ六世は研究者が提出した資料を端末で流し読みをする。その途中でページを動かす手が止まる。
「この資料に書いている事は事実?」
「はい。下賜された指輪のおかげで解読がはかどりました。」
「それで進捗状況は?」
「動力源はかなりの大きさのジェネレーターが必要になりますが、稼働の目処は立っています。」
「そう……。」
気のない返事をすると再び報告書を読み進める。しかし数分もしないうちにイラメカ六世の指が再び止まる。
「この研究の進捗状況は?」
「その研究は完成間近です。動力源の確保さえ出来れば研究はもっと前に進むでしょう。」
イラメカ六世は玉座に座りじっと考え事をする。そのイラメカ六世に対し今度は別の若い研究者が声をかける。
「陛下。それよりも私の……。」
何かを言いかける若い研究者を周囲が驚愕の表情で見つめた。考え事をしていたイラメカ六世はゆっくりと若い研究者に視線を移した。
「貴方は妾の計画に意見するのかしら?」
若い研究者はイラメカ六世に問いかけられ自分がとんでもない失態を犯したことに気が付き顔色が青くに変わった。
「お、お許しを……。」
「妾の帝国にお前の様な者はいりません。衛兵!」
「「はっ!」」
イラメカ六世の命令と共に二人の屈強な近衛兵が若い研究者を両脇から抱え引き摺ってゆく。イラメカ六世は何事もなかったかの様に再び何かを考え始めた。その場に居合わせた者には長い時間が過ぎたかの様に思わせていた。
数分後、初老の研究者を呼び寄せた。
「この研究成果の再稼働の目処は立っていると言いましたね?」
初老の研究者は黙ってうなづく。
「では、その稼働実験を至急行いなさい。……しかし連合の連中に気取られると厄介ですわね。どこかいい場所はないかしら?」
「はっ、それでしたら陛下、一つ候補地がございます。」
「述べよ。」
初老の研究者は自分の端末を操作すると壁の一面が大きなモニターに切り替わった。そのモニターにイラメカ帝国の宙域図を呼び出す。
「……暗黒宙域のこの場所はいかがでしょうか?この宙域は怪現象が多く見られる為、我が軍の駐屯地域となっています。」
「……そこはダメね。でも暗黒宙域を使うのはいい考えね。至急実験場所を想定しなさい。」
「はっ!」




