メールは告げる
キャサリンが部屋を出て一時間もしないうちにリランドは音を上げた。
それもそのはず、ここ一ヶ月に学園にきたメールだけでも数万件のメールがある。その中から怪しいメールを探すというのはリランドにとっては”藁山の中から針を探す”様な物だ。
膨大なメールを前にしてリランドの顔色が悪くなる一方だった。
(予想よりも多い……いや多すぎる。学校にはこんなに手紙が届く物なのか?!)
これはリランドの見積もりが低すぎただけであるのとリランド自身が量子コンピュータにあまり強くないと言った事から来る。
(とは言って泣き言は言っていられない。とりあえず確認作業を……。)
更に一時間が過ぎ、キャサリンが部屋に戻ってきた頃、リランドは頭を抱え途方に暮れていた。
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「……はぁ。もしやと思っていましたが……。相変わらずリランドは端末の操作は苦手なのですね。セリア先生が受け取ったメールは……。」
「面目ない……。こういうチマチマした作業は苦手でなぁ……。」
キャサリンはリランドの隣の端末にある前に腰をかけるとメールの検索を始めた。リランドは隣で端末を軽快に操作するキャサリンの前で肩を窄めている。
キャサリンはそんなリランドの様子をよそに何かに気がついたのか不意に手を止めた。
「……このメールかしら?でも今いる場所の天気や行った店のメニュー、感想……普通のメールね。でも変ね……。リランドこのメールは?」
他のメールを調べようとしたリランドの手が止まる。
「どれだ?キャサリン。そのメールをこちらに送ってくれないか?」
キャサリンは端末を操作すると先ほどのメールをリランドが操作する端末に転送した。
「……”あなたに言われた惑星アクエリアスで食べたサモーネを主菜にしたオードブルは絶品でした。あなたには感謝しても仕切れません。”これはおかしいな、キャサリン、他にも似た様な物はないか調べてくれ。」
「判ったわ……。」
キャサリンは検索条件を修正しいくつか候補を挙げる。リランドはそれらのメールを見て確信が言ったかの様に頷いた。
「見ろ、キャサリン。どのメールも紹介された店の感想や礼がほとんどの何の変哲も無い手紙だ。」
「そうね。一見すると何の変哲も無いお礼の手紙にしか見えないわ……。」
「だがこの手紙を受け取ったのがセリアなら話は異なる。キャサリン、確かセリアは小さい頃からソロリティから出た事が無かったのだよな?つまり……。」
リランドとキャサリンが同時に声を上げる。
「「このメールが連絡用の暗号メール!」」
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「だがこのメール……と言うより、この暗号方法は一般的な方法では無いな。送られてきた箇所もこれだけ広範囲に広がっているとなるとかなり組織だった者の様に思える。」
リランドの言うとおり送られてきたメールは太陽系連合内にある星系国家の約半数の場所から送られてきている。それらの星系国家の多くが連合内の左側にある事は偶然では無いとリランドは考えていた。
「太陽系連合の左側と言えば……。」
「イラメカ帝国ね。でもどうして?」
リランドには今回の誘拐には何かとんでもない事が隠されている様な気がしてならなかった。




