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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは学園に行く

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奪還!

 尚も追いすがるドローンを振り切り一路レプリカ・アントーンマント・チャーチのある人工島へ向かう。

 人工島の周辺では飛行制限がありスカイグライドのパネルに警告が出る。がそんな事はお構いなしに人工島へ突入した。

 サバーブはスカイグライドを変形させレプリカ・アントーンマント・チャーチの突き出た屋根に取り付く。

 教会の明かり取り用の大きな窓から下をのぞくと今正に結婚式の最中であった。


「もう始まっていたか!」


 下から神父の厳かな声が響き新郎の声が響く。


「はい、誓います。」


「新婦アリシア・カークランド、あなたは新郎チョイ・クーデアを夫とし……」


 どうやら結婚式の宣誓まで事は進んでいる様だ。サバーブは咄嗟にスカイグライドの外部スピーカーをオンにした。そして何かを言いかけたアリシア嬢に先んじて横やりを入れた。


「その宣誓、ちょっと待った!」


 スカイグライドの外部スピーカーから大音量で響かせるとドーム状の天窓の縁に手をかける。マシンアームが唸りを上げ天窓の縁が悲鳴の様な音を出しながら無理矢理引き裂く様に取り外された。


 サバーブはスカイグライドを操り取り外したドーム状の天窓を近くの尖塔に引っかけると外した天窓の内側に飛び込む。スカイグライドはオプションの羽を少し折りたたんだ状態で祭壇の上で静止した。

 天窓から照らす光と真っ白いスカイグライドの姿と相まって神々しい姿に見えたのか、その場所にいた神父が一心不乱に祈り出す。


「……神よ!」


 神父のそんな姿を気にもとめずサバーブは辺りを見回しアリシア嬢を確認する。


「アリシア嬢ですね。私の名前はサパーブ・Q・デジト、ソロリティ学園の依頼によりあなたを救出に来た者です。」


 サバーブの言葉にチョイが驚きの声を上げる。


「ソロリティ学園の依頼だって!?そんな馬鹿な!そんなはずは無いだろう!」


「いや、事実だ。」


 サバーブは淡々とした声でソロリティ学園からの依頼の電子データーをチョイに提示した。その電子データーを確認したチョイの顔はみるみるうちに青ざめて行く。


「……そ、そんな、馬鹿な……。」


 スカイグライドはゆっくりとアリシア嬢の側に降り立つと手を差し出し、片膝をついた。


「アリシア嬢。お迎えに上がりました。少し狭いですがこの”スカイグライド”の後部座席にお乗りください。」


 アリシアがスカイグライドの腕に足をかけるとアリシアの体がゆっくりと持ち上がって行く。スカイグライドを見ると肩の部分から繋がるユニットの一部が開き座席らしい物が見えた。

 アリシアは器用にスカイグライドの上を移動すると後部座席に乗り込んだ。


「それでは発進しますよ。シートベルトをしっかりと締めてくださいね。忘れ物は無いですか?」


「あ、そう言えば指輪が……。」


 アリシア嬢がつけていた指輪は結婚指輪として神父の前にあるジュエリーボックスの中に鎮座していた。サバーブはスカイグライドの手を前に出す。


「……アリシア嬢の指輪を……。」


 すると先ほどまでアリシア嬢の側で控えていた男がジュエリーボックスから指輪を取り出すとスカイグライドの手に向かい大きな山なりで放り投げた。

 その場にいたほとんどの者の目が山なりに動く指輪に目が留まった。


「おい、放り投げるやつがあるか……。アリシア嬢この指輪で間違いないでしょうか?」


 サバーブはスカイグライドの手で指輪を受け止めるとアリシア嬢に尋ねた。


「……いいえ違います。私の指輪は何の模様も入っていない指輪です。これではありません。」


「違う?どう言う事だ?」


 サバーブがジュエリーボックスの方を見るがその場にいた男はいつの間にか入り口の方まで移動していた。


「やれやれ。予定とは少し違いますが指輪が手に入ったので良しとしましょう。このまま使用出来れば良いのですが……。」


 億劫そうに話す男にチョイは声を上げて詰め寄ろうとした。


「レイター!これはどう言う事だ!花嫁を誘拐してくるとは聞いていないぞ!それに予定とは!?」


「……あ、チョイ・クーデアか……。」


 チョイの姿を見るとレイターと言われた男は深々とお辞儀をした。


「チョイ様。長期にわたるお雇いありがとうございます。おかげでこの通り、目的の物を手に入れる事が出来ました。ここにお礼申し上げます。また、名残惜しいですがこれにてお暇させていただきます。」


「レイターお前は何を言って……。」


 レイターと呼ばれた男は懐から丸い塊を取り出すとサバーブ達の方へ放り投げる。そして、その丸い塊が地面に落ちるとまばゆいばかりの閃光を発した。

 辺り一面真っ白になり全く何も判別出来なくなる。やがて正常な光景が戻ってきた時にはレイターと呼ばれた男はその場から消えていた。


「逃げられたか……。申し訳ありません、アリシア嬢。指輪を持って行かれました。」


 サバーブの謝罪を聞いたアリシアは首を振る。


「問題ありません。あれはオリジナルでは無くレプリカ。簡単なパスしか開ける事が出来ない物です。もっともオリジナルはお爺さまが持っているので行方不明なのですが……。」


 その言葉を聞いたサバーブが先ほどまで繋いでいた外部スピーカーとの接続を切り内部スピーカーに接続する。


「アリシア嬢。先ほど”ソロリティ学園の依頼”と言いましたがそれ以外にももう一人依頼主がいるのですよ。」


「え?」


「……あなたのお爺さま、カークランド提督からの依頼でもあるのです。」


「……お爺さまが……見つかった?」


 驚くアリシアにサバーブはモニター越しではあるがにっこりと微笑みかける。


「お爺さまが船でお待ちです。早速ここから脱出しましょう。」


 サバーブはそう告げるとスカイグライドを急上昇させる。後には呆然と飛び去って行くスカイグライドを見るチョイと参列者だけが残されていた。

流彗星号へ向かうスカイグライドの機内にて


サバーブ 「あ、大変な事を思い出した……。」


アリシア 「どうなさいました?サバーブ様?」


サバーブ 「教会の天窓、外したままだ……。」


アリシア 「まぁ、それは大変ですわね……。」


サバーブ 「経費で落ちるかなぁ……?」


アリシア 「大丈夫ですよ。その程度の事なら経費で落ちると思います。お爺さまはもっとすごい事をした事があるとお父様から聞いております。だから問題は無いともいますよ。」


サバーブ 「……もっとすごい事?何だろう?」


カークランド大尉のもっとすごい事が気になるサバーブであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] おおっと、ちょっと待ったコールだー!!(古い)
[一言] こっちも嫁ゲット?w
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