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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは学園に行く

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レプリカ・アントーンマント・チャーチ

 レプリカ・アントーンマント・チャーチ

 地球にある”著名な建築家の設計による永遠に完成しないと言われた某教会”のレプリカとして建てられた観光目的の建築物である。

(某教会は完成した五十年後、RC工法の問題点が浮上し再建築となった曰く付きの建物である。)

 この建築物は観光で成功を収めた”レプリカ・St.ミカエル山”をなぞらえる様に計画が進められた。問題は”レプリカ・アントーンマント・チャーチ”の建設予定地に大きな陸地が無く岩礁地帯であったという事だ。

 大きな陸地を建設地点に選べば良かったのだが、成功を収めた”レプリカ・St.ミカエル山”が地球上にあるオリジナルと同じ緯度、経度の地点に建築された事も成功の一つとされた為、”レプリカ・アントーンマント・チャーチ”も同じ緯度、経度で建設される事が決定された。

 岩礁同士を巨大なトラスで繋ぎその上に人工島を作る形で建設された。その為、”レプリカ・アントーンマント・チャーチ”の下部には巨大な空洞が広がっており人工島へ船でやって来る人々の寄港地になっていた。

 その寄港地には一隻の豪華客船が停泊しており、客船自体ある人物によって貸し切りになっている様だった。


 客船を貸し切った人物は豪華客船に施された装飾を見回すと満足げに頷いた。


(これならば花嫁にも満足していただけるに違いない。)


 黒い上下を着こなす理知的で端正な顔立ちの洗練された男、宇宙軍士官学校を首席で卒業しこの度、太陽系宇宙軍に少尉として任官されたばかりの軍人である。実家は過去には何人も議員を輩出したことのある名家。

 この男、”チョイ・Y・クーデア”は所謂エリートであった。


 そのチョイにオールバックの髪に白髪が少し交じった男が恭しくお辞儀をする。


「チョイ様、式場の準備が整いました。」


「おお、そうか。何時もすまないな、レイター。君がクーデア家に来て何年になるかな?」


「そうですね……チョイ様が生まれる少し前ですのでもう二十年になりますか……。」


「……月日が経つのは早いものです。今日、この日・・・を迎える事が出来るとは……。この日の為の努力が実ったかと思うと感無量でございます。」


「……レイターは大げさだな。だが君には感謝しているのだよ。」


 だが、レイターが言う“この日・・・”と言うのはチョイが考えている“この日”とは全く別物である事に何も気づいてはいなかった。


 ―――――――――――――――


 一方その頃、誘拐されたアリシア嬢は教会の一室で真っ白なウエディングドレスに着替えさせられていた。

 このウエディングドレスはアリシアの体型に合わせて事前・・に作らせていたものらしくアリシアの体型に寸分の狂いも無く合っている上、アリシア嬢の可憐さがより引き立つデザインであった。

 等身大の鏡の前で自分の姿を見たアリシア嬢は軽くため息を吐いた。


(何時かは着るものと思っていましたが……。相手のチョイというお方は数年前にお父様が断った方だと記憶しております。一体何故この様なことになっているのでしょうか?」


 アリシアはあれこれと色々考えるが何も浮かんでこなかった。


(……あれこれ考えていても仕方がありません。相手のチョイという方と会って話をしなければなりませんね。)


 アリシア嬢は外へ出ようと扉の方へ向かおうとするが、着付けを手伝ったメイドが前に立ち塞がった。

 あまりにも素早いその動きにメイドとは異なる何かをアリシア嬢は感じ取っていた。


「アリシア様、どちらまで?もうじき式が始まりますわよ?」


「……えっと、少しお手洗いに……。」


 なんとか誤魔化そうとするが、メイドの方は部屋に備え付けてあるトイレ室の方を指さす。


(どうやら脱出は難しいようですね。……仕方ありません。式の最中に話すしか無いようです。相手が判っていただければ良いのですが……。)


 そんな考えも見透かされていたのか、アリシア嬢の父親の代役を務めるのは相手の執事であるレイターであった。


(小さい頃、家によく遊びに来ていたお爺さまの部下によく似た雰囲気の人物ですね。外見よりも少し若い様に思えます。)


 そして何よりその動きに普通ではないものをアリシア嬢は感じ取っていた。


(何かをしようにも有無を言わさず妨害する実力はありそうです。)


 そしてアリシア嬢が躊躇している間に式は進む。アリシアとチョイは神父の前に二人並び立っていた。


(!!今この時しかありませんわ!)


 アリシアは恐る恐るチョイに声をかけようとした。


「あの……。」


 するとチョイは自分の唇に人差し指を当て“静かにと言うジェスチャーをした。


「愛しい人よ。話は後でいくらでも出来る。まずはこの儀式を進めよう……。」


 そう言うとにっこりとアリシアに微笑みかけ神父の方へ顔を向けた。


(だ、駄目ですわ!この人は話を聞こうとしません。後では遅いのですが……。)


 アリシアが困惑していると神父の声が厳かに響く。


「新郎チャン・クーデア、あなたはアリシア・カークランドを妻とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り愛を持ってお互いに支え合うことを誓いますか?」


「はい、誓います。」


 チャンの宣誓に神父は大きく頷く。


「新婦アリシア・カークランド、あなたは新郎チャン・クーデアを夫とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り愛を持ってお互いに支え合うことを誓いますか?」


 アリシア嬢が何かを言おうとした時、教会の上の窓から声が聞こえた。


「その宣誓、ちょっと待った!」

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