救出計画
モータビアの宇宙港から出発した流彗星号は長距離ジャンプの準備に入っていた。
乗客であるカークランド提督も引っ張り出され作業を行う中、流彗星号の調整をしていた連宋の声が船橋内に響きわたる。
「流彗星号ジャンプ準備完了。サバーブ、ジャンプ出現地点は何処にする?」
流彗星号の能力ならソロリティ星系内からハイラート星系内の任意の位置へジャンプが可能だ。
「流石に惑星ハイラート上空……と言うよりハイラート星系内は不味いだろう。外周部の航宙管制用自動応答装置が届く範囲でいいだろう。ただこれだとどれだけ時間がかかるのか判らないのが問題だな。」
サバーブはそう言うと腕組みをして考え込んだ。
「でもま、サバーブ。相手との距離が一日分開いているだけなら問題は無いだろう?流彗星号の能力なら十分外周部で捕捉出来るはずだ。」
「それもそうなのだけどな……。」
そう言ってサバーブは言いよどんだ。そのサバーブを見てカークランドはサバーブの言わなかった言葉を続けた。
「そうだな。相手が海賊なら使っている船は輸送船か旅客船。どちらもソロリティ星系からハイラート星系まで三日はかかる。だがそれは相手の船が一般の宇宙船だった場合だ。」
カークランドの話にサバーブは大きく頷く。
「その通りです。これはあくまで海賊船の船が一般的な民間船であった場合の対処です。もし一般の宇宙船ではなく軍用船を偽装しているのなら、海賊船はもう既にハイラート星系内を航行している可能性があります。」
「軍用船?海賊が?何故?」
連宋が首をかしげながらサバーブに疑問を挟んだ。
「連中のやり方がね……スマートすぎるのだ。海賊なら拉致するのに一人と言うことはありえない。少なくともアリシア嬢と同じ場所にいた他の連中も拉致しているはずだ。」
「……言われてみればその通りだ。」
サバーブの言葉に連宋が頷いているとメインモニターからビィの声が流れた。
「そんなあなた方に私からの対策計画をモニターに出します。」
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計画を見たサバーブは頭を抱えて考え込んだ。そんなサバーブの姿を見て連宋は声をかける。
「サバーブ、今回は大活躍(予定)じゃ無いか。」
連宋の声にサバーブは顔を上げた。
「……確かにこの計画では俺が縦横無尽に活躍する必要がある。流彗星号の能力ならこの計画にある様に連続ジャンプも可能だろう。しかし強化防護服一つで救出活動というのは無理があるのでは?単機で大気圏突入なんてリランドの仕事じゃ無いか。」
サバーブはそう言うと再び頭を抱えた。すると今度はモニターにサバーブの強化防護服が映し出された。
「その点も心配いりません。サバーブさんの強化防護服は機動型であり、追加ユニットに大気圏航行能力を持たせています。」
「いやいやいや、一番の問題はそこじゃないから。連続ジャンプも大気圏突入も出来るだろう。アリシア嬢の救出……これも難易度は高いと思うが可能だ。しかし、救出終わった後はどうする?流彗星号は連続ジャンプで惑星ハイラート上空にはいないのだぞ?」
ビィが対策計画では流彗星号が惑星ハイラートの衛星軌道上を目標にジャンプを行う。そこで強化防護服に乗ったサバーブを発進させアリシア嬢の救出へ向かう。流彗星号はサバーブの発進を確認後、再度ジャンプを行いハイラート星系から撤退する。再度ジャンプでハイラート外周部へ到達する。ここで正式にハイラート星系への通行権を得る。
そしてサバーブは流彗星号が来る一日の間、アリシア嬢を守り通さなくてはならないのだ。




