戦士に拾われた命
10年前・・・・
パラララ、、、タン、タン、、、パラララ
遠くて近い乾いた甲高い銃声が響き渡る。
「はぁはぁはぁ」
湿地帯の森林の中なのに肺が乾いてしまいそうなくらいの浅く早い呼吸を繰り返してはまた走っていた。
どれくらい走ったのだろうか、太陽と月の位置と時間をなんども確認しながら西へ向かう。
ミッションは成功したが追手の追跡が早く仲間ともはぐれてしまった。
走っては警戒しを繰り返して3日、離脱ポイントまでやってきた。
気付かない間に銃弾を受けていたのか足や腕に銃弾の傷ができていた。
致命傷ではないが、一般の怪我で言えば十数針は縫う大けがでもある。
ミッションで一緒だったチームメイト8名のうち3名はいなかった。
最後に現れてきた私に黒人の兵士が素早く近寄って敬礼した。
「クリス少佐、離脱ポイント到着4名、2名死亡、1名不明となっております。」
「死んだのはアップルジャックとウィスキーか」
「はっ、肯定であります。」
「ウォッカは私の前を走っていたが離脱ポイント前の3キロ地点で見失った」
事務的な会話が終わると黒人兵士は再び敬礼し所定の位置についた。
離脱ポイントからの移動時間まで10分少々、3日走りづめで10分の休息である。
規定時刻に集まらなければ無慈悲にも現存のメンバーだけで行動が開始される。
全員が腕時計の針に目をやる。
「規定時刻だ、前進する」
全員は点検を済ませると帰還のための行動を開始した。
離脱ポイントから2時間の場所がヘリの回収ポイントとなる。
そのポイントと時間に間に合わなければ戦死扱いとなる。
回収ポイントに到着すると同時にヘリコプターの回転翼の音がだんだんと近づいてくる。
同じくして背後から接近してくる音がする。
敵兵であれば音を立てずに近寄ってくるだろうが、お構いなしの足音だ。
味方の足音と全員が確認するが用心のため銃口は向けたままだ。
「まってくれ!」
草むらから現れたのは間違いなくウォッカだった。
その腕には小さな男の子が気を失った状態で抱かれていた。