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 色々な事が起きましたが日々は過ぎて行きます。


 学園に戻ると、不憫そうな顔をして見てくる学友達。

 婚約者を取られたご令嬢達には殊更不憫がられ、カフェでランチをご馳走になったり慰めの言葉を頂いたりと私の周囲は大忙しでした。


 あの日からフレディとはまた疎遠になってしまい、私とフレディはすでに破局を迎えた、婚約破棄までのカウントダウンは早いだろうと噂になっています。


 

 

 「はぁ……」

 「ルー大丈夫?」

 「噂の的と言うのも大変なものね……」

 「ふふ、そうね。ルーは顔に出やすいから特に大変かもね」

 「ベスみたいにはできないわ……あー剣振りたい……」

 「もう、ルーったら……」


 

 カフェテラスでベスと談笑していると、周囲がザワリと騒がしくなりました。

 

 チラリと入り口を見るとかのご令嬢と取り巻き達が入って来る所でした。



 「あら! ベス様ルー様ご機嫌様!! ジムもフレディも皆で楽しく元気にやっていますよ!」

 

 

 はぁ……こちらが何も言わないのをいい事に好き勝手な事をキャンキャン吠えてきます。


 ここは学園内なので一応皆平等とは言え王子や高位貴族に対して呼び捨てはどうかと思いますね。


 私が口を開こうとした瞬間にベスが先に口を開きました。



 「ご機嫌よう。それは何よりですわね」

 「──ジムは毎日楽しいって言ってますよ? 私の側はリラックスできるって!」

 「あらそれは素敵ですわね」

 「──っ、フレディもいつも私と一緒に居るのよ。忙しそうだけど必ず顔を見せてくれるのよ?」

 「あー、そうですか。それはようございましたね」

 


 私がそう答えるとかのご令嬢は苦虫を噛み潰したような顔をして、フンッと顔を背けてカフェテラスの中央の席を陣取りました。


 甲斐甲斐しく世話をする子息達の姿は何とも情けない物に見えました。


 

 「──スージー!! 私を置いて行かないでくれよ」

 

 大声で情けないセリフを吐いたのはジェイムズ殿下でした。


 少し目元に隈ができていますね。

 子息達も目元に隈があります。

 毎晩寝不足ですか??


 

 「ジム! 置いてなんて行かないわ。先に来て席を取っていたの」


 かのご令嬢は殿下にしなだれ掛かり、胸元を押し付けた形でベスに視線を送ってきました。


 

 「ふぅ……ルー行こう」

 「あーOK」


 

 席を立ちカフェを出ようとすると殿下が声をかけてきました。



 「ルー! フレディの事は残念だったな!」


  

 何の事でしょうか?意味が分からないのですが……。

 不思議そうな顔をしたのが気に入らなかったのでしょうか殿下は大声で話を続けます。

 


 「お前とフレディの婚約解消だよ! フレディはオレ達と一緒にスージーを守るのだから」



 ザワリと周りの空気が揺れました。

 周囲の視線は全て私の方へ。


 

 ……はぁ、と溜息を吐いてから殿下の顔をジッと見ます。


 するとオドオドとして目を逸らした殿下は少し唇をグッと噛み締めていました。

 そんな殿下に気付かずかのご令嬢は殿下の言葉に乗っかって嬉しそうに話を続けてきました。

 

 「ルー様! ジムが言う通りフレディは私達と一緒に居るのが幸せなのです。だから安心して下さいね!」


 

 ……しんどいですね。


 この場に剣の類がありましたらヤバかったと思います。

 私は自分で言うのも何ですがそんなに気が長い方ではありませんので。


 血の海にならなくてようごさいました。


 そんな私を知っているベスは少し顔を青ざめさせて袖をクイッと引いて目で訴えてきます。


 分かっておりますよ。


 この場で事を起こすのは愚策だと言う事を。



 「──フレディの事はよろしくお願いしますね? では」


 

 そう言ってカフェテラスを去りました。


 勝ち誇った表情のかのご令嬢の顔は醜く歪んで見えました。


 カフェテラスにいた他の方々の悲鳴にも似た騒めきがいつまでも残っておりました。





 ◇◇◇




 「ルーッ!!!!」



 その日の夜リビングでお茶をしているとバタンと扉を開く音と共にフレディが入ってきました。


 

 「あら、フレディ。どうしたの?」

 「ルー! 婚約! 解消って!! 何!?」

 

 

 何の事でしょうか?



 「何? フレディ落ち着きなさいよ。婚約解消したいの?」

 「──!! 違う!!!」



 ソファに座る私をギュムギュムと抱きしめてくるフレディには余裕が見られません。



 「ジムがアイツ、変なこと言いやがって。あの女! 許さねぇ!!!」

 

 

 ああ、昼間のカフェテラスでの事をきいたのですね。



 「フレディには申し訳ないけど、めんどくさいから、しばらくの間……」

 「イヤダ!!!!」

 「だって……」

 「イヤダ!!!!」

 「フレ……」

 「イヤダ!!!!」

 「フ…」

 「イヤダ──!!!!」

 「愛してるわ」

 「オレも愛してる!!」



 あら、そこはちゃんと話を聞いているのね。



 「ほらあと少しでしょう? がんばって」


 

 私からフレディの両頬を包んで唇を寄せました。


 チュと軽い音をさせてフレディを見ると涙目で真っ赤になっていました。



 「ルーだいすき。オレ……がんばる!」



 はい、がんばってね。




 

 

 

 


読んで頂きありがとうございます!

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