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なかなかに有意義な時間が過ごせたと思います。
キース達四人は、少しの間ここに捕まえておくという形になりました。
そして部屋にシリルと二人だけになると、シリルが話し始めました。
「お嬢。昨日の話の続き……」
「シリル、私は大丈夫なのよ?」
「──もしお嬢が戻ってくるなら……オレが…」
「オレが……何だ? シリル」
声がした扉の方を振り返ると腕を組んで扉に寄り掛かっているフレディの姿がありました。
「──あらフレディ。来たの?」
「──ルー! そんなつれない感じで言わないで!」
「ッチ。なんだお前も来たのかよ……」
「来ちゃ行けないか? オレはルーの婚約者だよ?」
「お嬢の事大切に出来ないようなやり方でしか動けない奴にはお嬢を渡したくないね!」
「───それは……」
「ほら、そんな風にしか出来ないんだろ? だったらここで剣降ってた方がお嬢らしく生きられる」
「─── っっ」
昔からこの二人はすぐに険悪ムードになるのです。はぁ、と溜息が溢れてしまいます。
「──シリル、勝手な事言わないでくれる? どこでだって私は私らしく生きるわよ。フレディもそこで言葉に詰まらないでちょうだい」
「ルー……ごめん。本当に色々ごめんなさい」
「お嬢……」
フレディは近寄ってくるとフワリと抱きしめてきました。
シリルはそれを見てはぁと溜息を吐いてヒラヒラと手を振って部屋を出て行きました。
「──終わったの?」
「下準備はね……ルー会いたかった……」
フレディは抱きしめたまま大きく息を吐き、髪に顔を埋めると「もう離れ離れは嫌だ……」と呟きました。
ポンポンと背中をさすって抱きしめ返すと、フレディは頬にキスを落として顔を見合わせました。
「ルー。もう離さないからね。こんなのもう二度とやらない」
真剣な顔で宣言すると今度はおでこにキスをして、最後に唇に軽くキスをするともう一度ギュッと抱きしめてきました。
お疲れみたいですね。
今日はもうゆっくりしていってもらって、帰るのは明日にしましょうか。
だってかなりの強行突破で来たのでしょう。
私が王都を出てすぐに手紙を送り、色々片付けて次の日には王都を飛び出して来たと言う事でしょう? しかも馬車ではなく馬を走らせて来たと言っていたので疲労は相当だと思われます。
「今日は泊まれるの?帰る?」
「泊まる。もう半分寝てる……」
「了解。朝の訓練は参加させられると思うけど大丈夫?」
「──ガンバリマス」
◇◇◇
翌日フレディは朝からシリル始め兵士さん達からメッタメタになるまで手合わせをさせられていました。最後にコーエン団長までもが出てきて、少し可哀想になりました。
家族に別れを告げて王都へと戻ります。
父母は卒業パーティーには王都に来るそうです。
馬車に揺られグロッキーなフレディを膝に乗せて王都へと向かいます。
行きは3日程でしたが、帰りはフレディが2日程使い物にならなかったので少しのんびりと5日かけて到着しました。
王都の自宅に戻り少しするとベスがやってきました。
「ルー!! お帰りなさい!!」
ギュッと抱きついてくるベスを宥めながら久しぶりに三人で夕食を囲みます。
「それにしても……まあ早かったわよね?」
「そうね。もう少しかかるかと思っていたけど」
「オレが耐えられなかったの!! ルーと離れ離れなんて!!」
アハハッと久しぶりの明るく楽しい食事の時間は過ぎて行きました。
「ルー、今日はオレも帰るけど……」
「明日からはいいの?」
「大丈夫。ルーも明日から学園にまた来るよね?」
「ええ。そのつもりよ?」
「じゃあ、迎えに来るね」
「え? いいの?」
「うん。泊まって行きたいくらいなのに……」
「うーん、まだ止めた方がいいんじゃない?」
「大丈夫だよ!」
そういうとギュッと抱きしめてきました。
仕方のない人ですね。
「じゃあ私は帰るわね。ごちそうさま〜」
ベスはそう言ってヒラリと手を振り帰って行きました。
「あ、そうだコレ使う?」
フレディに書類束を手渡すと目を通して驚愕の表情を浮かべました。
「え!? コレって!!」
「どうする?」
「ルー!! 君は本当に!! ……少し用事ができたから今日は帰るね」
「分かったわ。朝も迎えは結構よ?」
「ごめんね。ルーありがとう」
フレディはチュと唇に軽くキスをすると、急いで部屋を出て行きました。
「ふふ、がんばってね……婚約者様」
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