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屋敷に戻り、汗を流すために先に軽く湯浴みを済ませて食事に向かいます。
食堂に向かうと家族勢揃いで既に私を待っている状態でした。
「遅くなりました」
「ハハ、賊を捕まえてからシリル達相手に体を動かしてたって?」
父がニヤニヤしながら話し掛けてきました。
「お父様、久しぶりにお父様と手合わせさせて頂いても宜しいのですよ?」
「──コホン。まあ良い、そうだルーに手紙が来ていたぞ? 部屋に運ばせておくから後で読んでおきなさい」
「はい」
そんなやり取りの間にお母様も少し心配そうな顔で話し掛けてきました。
「ルー? ──大丈夫なのよね?」
「ええ、きっと大丈夫だと」
その後は和やかに夕食が済み部屋に戻るとテーブルに手紙が置いてありました。
お父様が言っていた手紙ですね。
誰からかと確認をするとフレディからでした。
中を見るとヒラリと花びらが数枚落ちてきました。
白い……花びらでした。
それ以外には手紙等は何も入っていません。
それを手に取り、ふむと考え、私は私にできそうな事をやろうかな? と部屋を出るのでした。
◇◇◇
翌日は剣を片手に昨日の残党の所へ行き話をしました。
「なぜ始めの兵士団による討伐の時は逃げる事が出来たのにこんなにもすぐにわざわざここを越えようとしたのですか?」
「───」
「わざと? わざと捕まる為? それで先に捕まった人達をココから出すつもりでしたか?」
「───」
「本当は昨日の時点で接触して貰う物貰って逃げる筈でしたか?」
「───」
「──密輸は薬よね?」
「…… 」
「もう全て流し終わったから自分達は隣国に戻るのね? 全て終わった証明の物を受け取る為にここにわざわざ来た……」
チラリとコチラをひと睨みした残党の一人はフンッと鼻で笑いました。
「……証拠は?」
「そうね、どこかの商会とどこかの貴族……って所かしら?」
「──!!」
「そんな驚いた顔しないで下さる? それくらいは……ねえ?」
「──チッ」
「ふふ、その態度正解だと言ってしまっているわよ?」
「──オレ達は下っ端も下っ端のただの運び屋だ。叩かれたって捕まったって何も出やしねぇよ。ただ上から切られるだけだ」
あら。なかなかに素直な人ですね。
「ふふ、成る程ね……忠義は無い……と」
「そんなもんあるわけねぇだろ。あるのは金だけだ」
「だけど貴方達四人は……仲間って事ね」
「──チッ」
やっぱりこの人素直だわ。
「貴方、名前は?」
「─── 」
「名前」
「─── 」
「ふぅ、仕方ないわね」
そう言って腰に下げている剣に手を掛けると
「脅されたって、斬られたって名前なんて言わねぇし、話す事なんて何もねぇ!」
「あら? 勘違いなさらないで? 斬るのは貴方では無いわ」
「?」
コンコンと部屋をノックする音がして扉が開くと昨日捕まった残党の残り三人を連れてシリルと兵士達が入って来た。
「お嬢無茶すんなよ?」
「失礼ねしないわよ」
残党の三人には壁に並んでもらい再度問いかけます。
「名前は?」
「─── 」
ふぅ、と溜息を一つ吐き剣をヒュンと一振りします。
壁に並んだ三人のうちの一人の服が横にスパンと切れました。
「──!!」
「名前は?」
「──っっ」
もう一度ヒュンと剣を一振りすると、先程服を切った隣の人の服をスパンと切ります。
「名前」
「──っぁっ」
三人目の首目掛けて剣を振ろうとすると大声で名前を叫びました。
「キースだ! オレはキース!!」
「なんだ、答えられるなら早く答えて頂きたかったわ。ごめんなさいね? お二人、お洋服切ってしまって」
フルフルと並ぶ三人は震え、目の前に座る男、キースは真っ青な顔をしていました。
「キース、貴方は悪人になりきれないみたいね? 心根が素直で優しすぎるのよ」
「──チッ!」
キースはそっぽを向き仲間に視線を合わせないようにしています。
「ふふ、キースここからは取引の時間よ?」
「──、昨日からアンタは何なんだよ。ただのお嬢様じゃねえのかよ……」
「あら、私はただのお嬢様よ?」
「剣姫だけどな」
「シリル! 恥ずかしいからそれはやめてちょうだい」
「だってお嬢、どこの世界に剣を片手に兵士と混じって訓練して一緒に獣退治したり賊を捕まえたりするお嬢様がいるんだよ?」
「あら、ここにいるじゃない」
「だから、剣姫なんだって」
「だからそれはやめてって。他になんか無いの? 剣豪みたいな感じで……剣嬢……ダサいか」
「───クッククッ」
シリルといつものようなやり取りをしていると、キースが笑い始めました。
「参った。面白いおネーチャンだな」
「オイオイお嬢はおネーチャンじゃねえよ。おネーチャンって言うのは、ボンッキュッボンッの事だろ?」
「──ちょっと! シリル!!」
「ハハハッ違いねえ! お嬢チャンにはまだ早かったか」
壁に並ぶ三人もクククと笑っていて肩が揺れています。
ザシュッ……
皆さん、失礼ですからね、少し腹が立ちましたので目の前のテーブルを真っ二つに割っておきました。
ニコリと笑って「お話しの続きをしましょうか?」と皆に問いかけると、コクコクコクと人形のように頭を振る四人の姿がありました。
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