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あまり休憩はとらず馬車に揺られ馬に乗りながら3日程で実家の辺境伯へと到着しました。
強硬策では無いものの少し私のペースにさせすぎましたね。
従者と馬に休息を与え、王都で起きている事を父母に説明をして(まあ概ねご存知のようでしたが)補足と自身の見解を述べてから砦の方へ向かいました。
ここはやっぱり落ち着くわ。
コンコンとノックをして執務室の扉を開くと銀髪にグレーの瞳の細身の男性が椅子に座って書類を片付けていました。
「ルー!!」
「お兄様来たわ」
お兄様…… アルフレッド・メルベルクは辺境伯補佐官として若くして活躍しています。
「なかなかに大変みたいだね」
「そうね、色々と考えさせられるわ」
「そうか、まあゆっくりしていきなよ」
「そうさせてもらうつもり」
お兄様と話をしているとノックの音がして扉が開きました。
「失礼します! 砦越えをしようとする……っ失礼しました」
「いいよ、続けて」
兵士はペコリと頭を下げると話を続けました。
「砦越えをしようとしているのは前回の残党のようで……」
「お兄様お話の途中ですみません、私行きますね」
「ああ、また後で」
仕事の邪魔をしてはいけないので退室する事にしました。
砦内の廊下を歩いていると、兵士の皆さんが声を掛けてきてくれます。
「ルイーズ様! 帰ってらしたんですね!!」
「わ! ルイーズ様!! 後で是非!!」
「ルイーズ様!」
わぁわぁと集まってきてしまって、少し大事になってしまいました。
「皆さんご機嫌よう、また後でね」
サッと挨拶をして砦の外へ出ます。
山を開いたこの場所は建物は重厚感があるけれど綺麗です。
ふぅーっと息を吐いてこの高い場所から町と王都の方角を眺めます。
小さい頃からここと王都を行ったり来たりの生活でした。どちらも好きですが、どちらかを選ばなくてはいけないなら……この場所の方が好きだと思います。
──私の家は辺境伯です。
母は王女でした。
なので王は叔父さんに当たります。王妃様は母と幼馴染みで仲が良かったのもあって、幼少時に遊んでもらうような事ができたのです。
そしてジム……ジェイムズ殿下は従兄弟。取っ組み合いの喧嘩をしていたのは私とジムです。
父は元々辺境伯子息でそこに母が嫁いで来ました。
どちらかと言うと母からの猛烈アプローチで。こんな辺境に王女を来させる事なんて出来ないと父はお断りをしていたらしいですが、最終的に陥落したそうです。
父は王都に年数回行かなくてはいけないので幼少の頃は家族総出で行ったり来たりしたものです。
辺境に父だけ残り私達だけで王都に向かう事もありました。
学校に通うようになってからは春夏冬の長期休暇のみ辺境へ戻るようになり、中等部に入る頃には母は辺境に完全に戻り王都には兄と私と執事達だけの生活になりました。
父母が王都に来るのは年に数回。
そして兄が学園を卒業し辺境へ戻ると私一人だけが王都に残る事になったのです。
執事や侍女、メイドさん達がいるので生活に困る事はありません。
ただ女一人だけ……というのもあって毎日フレディが家に来てくれていたのです。
……あの日以来フレディが家に来る事が無くなりました。
寂しさはあります。不安はないですけどね。
まあ、それも致し方のない事。
するとカンカンカンカンと警戒を促す音が響き渡りました。
先程お兄様の部屋に来た兵士が言っていた人達の件でしょうか。
砦の外階段が騒がしいですね。
ふと目を向けると顔を布で隠し剣を持った人物が4名私の居る方へと向かってきます。
あら、大変。
私、今剣を持ってないんですよね……。
「待てっ!」
兵士の声が大きく響きました。
ダダダッと走り寄ってきた賊は私の姿を見つけるとニヤリと笑いました。
「ちょうどいい! お姉ちゃんがいるじゃねぇか! 人質……」
最後の言葉まで言えなかったのは私がその人の剣をスルリと奪いヒュッと顔の布一枚を切ったからです。
「──っっ!! な、なんだ!?」
布を切られた男性の腕を剣先で撫で腹をポンメル(柄頭)で突き出します。
「──っぐ」
次に向かって来る人を剣で往なして交わす瞬間に足を掛けてブーツの先を剣で刺して身動きが取れないようにしておきました。
形成が悪いと見たのか今度は二人同時にかかって来るので、仕方ないですね。
二人の剣をお借りする事にします。
スルリと手元を掴んで剣を奪い一人は首の後ろの服の部分を岩壁に刺して拘束。
もう一人は殴りかかって来ようとするのでそれを往なして首に剣を当てて動きを止めました。
さて、これで全員でしょうか?
バタバタと砦の兵士達が集まってきて、この惨状を見て一瞬動きを止めましたがそこにお兄様がやってきて「何やってる! 早く確保だ!」と兵士達を動かしてくれました。
男達4人は拘束されて震えながら兵士に連れられて行きました。
「ルー、助かったよ」
「最近運動不足でしたからね。ちょうど良かったです」
ニッコリ笑って答えると兵士の一人が呟きました。
「剣姫様……」
あら、懐かしい。
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