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 ベスには強い味方がいました。

 

 それは子息達の婚約者達、この騒ぎに無関係の貴族令息令嬢達、そして平民の同級生達。勿論私とフレディも。

 ベスは見かけによらず(と言うと本人怒るのであまり言えませんが)人当たりも良く、貴族も平民も変わらぬ態度で親身に相談に乗ってくれるととても慕われています。



 それこそジェイムズ殿下よりも人望が厚かったのです。



 

 そうした日々の中で徐々に孤立して行ったのは殿下達の方でした。

 皆、もう見向きもせず勝手にやってくれとばかりにそこにいないモノとしての扱いになっていったのです。



 私はベスの親友です。

 そして殿下達の考えがよく分からなかったので基本的には関わり合いの無いように過ごしていました。

 フレディにもそう言われておりましたしね。




 ──そんなある日事件が起きました。


 

 ベスの鞄の中に水を入れられるという信じられない事が起きたのです。


 

 ベスとフレディには止められましたが私は犯人探しをしました。

 


 クラス、学年、全学年、先生方、学園理事に至るまで聞き込みをしました。

 

 結果犯人は一人。

 

 スザンヌ・マリオエラ、かのご令嬢でした。

 その日の移動教室でクラス全員が移動した後、具合が悪いと分かりやすい仮病をし保健室へ行くフリをして教室に戻りベスの鞄に水を入れたのです。


 何という卑怯でバカな事をするのでしょうか。


 私は膨大な証言をキッチリと書面に起こし、いついかなる時でも戦えるように準備を整えておりました。


 それに気付いたフレディとベスはその書面を手に、私にはこれ以上関わって欲しくないのだと懇願され仕方なしにこの案件から手を引いたのです。



 それ以降は少しも関わる事無く通常の生活を続けておりました。



 そして、ある日ベスにキツくヒドイ事を言われたと泣いて殿下達の元へ駆け込んだかのご令嬢を庇い、ジェイムズ殿下達がベスを囲もうとしたのです。



 その時私とベスはカフェテラスで久しぶりのおしゃべりに花を咲かせていて、その楽しいひと時をバカ者達が邪魔をしに来たのです。


 

 「ベス! どういうつもりだ!!」

 


 あぁ、最悪。

 わらわらと一人では何も出来ない奴らが寄ってたかってか弱い乙女に何てひどい事をするのでしょうか。


 ベスは私に向かってニコリと微笑んでから殿下に対して礼を取りました。


 

 「ご機嫌ようジェイムズ殿下。何かございましたか?」

 「──何かだと! しらばっくれるつもりなのか!」

 

 

 何なのでしょうこのバカは。

 大きい声を出せば女は大人しくなるとでもお思いなのでしょうか?


 

 「貴様はスージーに対してキツく当たり散らしたそうではないか!」

 「──あら、殿下。わたくし本日は王宮にて王妃様のお手伝いを済ませて先程やっと学園に到着致しましたのよ? いつその方に物を申す時間がございましょうか」

 


 そうなのです、先程到着してその足で私とカフェテラスでお茶をしているのでいつ?という感じです。


 

 「──っこっ、ここに来る前にでもいくらでも出来るだろう!」


 

 バカなの?


 あら、殿下の後ろにはかのご令嬢がプルプル震えながら殿下の腕にしがみついているではないですか。


 

 「──殿下、わたくしは馬車で学園まで来て門からここに至るまでルーと一緒におりましたのよ? 他の方々も証言して下さると思いますよ?」

 「──っバカにするなよ!」

 「──しておりませんが」

 「ジム! いいんです! 私がエリザベス様の気に触るような事をしてしまったのだと思いますから!」


 

 ベスと殿下のやり取りに勝手に割り込んで騒ぎ立てる、かのご令嬢が涙目で何かよく分からない事を主張しています。

 まぁ、気に触るような事をしている自覚はあるという事なのですかね?


 そこだけは良かったと思います。

 

 その姿を見て殿下と数人のスージー派の方々は心打たれたような? 心酔しているような顔をして、「君は何も悪くない」と庇い立てています。



 ??? どんな茶番劇よりも下らないモノを見せられ、私の気持ちはベスとの楽しいひと時から一変して最悪なモノへと変化してしまいました。



 「───お」

 「ジム!! 何をやっているんだ、こんな目立つ所で」



 私が口を開こうとした瞬間にフレディが少し息を切らしながらカフェテラスに入って来ました。



 ……命拾いしましたね。



 「ジム、説明を」

 「こ、コイツがスージーに対して……」

 「ジム、曲がりなりにも公爵家令嬢で婚約者でもあるエリザベス嬢に対しての呼び方では無いと思うが?」

 

 

 フレディが最もな事を注意すると、殿下はグッと喉が詰まったような唸り声をあげられました。



 「──ベスがスージーに対してキツく当たり散らしたらしいんだ! スージーは傷ついたのに、自分が悪いと言ってこのおん……ベスを庇おうとしたのだ! 心優しいスージーが可哀想だと思わないのか!?」


 

 かのご令嬢はフレディが来た事で更に涙目を強調し、しかし頬を染めていかにも可哀想な私アピールをしています。


 

 「──ジム、オレには君が何を言いたいのかよく分からない」

 「──っな!! フレディ!! お前はオレの側近だろう!!」



 あらあら、殿下一人称がオレになってしまっていますわよ?

 


 「──側近だけどな、その前に友人でもあると思っているが?」

 「──!!」


 

 フレディの一言に何故か殿下はフルフルと震えグッと唇を噛みしめました。

 その後何も言わずに去っていかれたのです。


 「殿下」と後を追うバカどもと、チラチラフレディを振り返りながらかのご令嬢は去っていかれました。




 「フレディ、ありがとう」

 「エリザベス嬢、申し訳なかった。ルー? 大丈夫?」



 ふぅ……と息を吐いて、腹立たしい気持ちを拡散させました。



 「ベスとの楽しい時間を台無しにされたわ」

 「ルーったら。まだ楽しい時間はこれからよ?」

 「え? 夜ご飯も一緒に出来るの?」

 「ええ、ルーとフレディが良ければ……だけどね」

 「勿論いいわよね!? フレディ?」

 「オレはルーがいいようにしてくれたらいいよ? あとで一緒に戻ろう」

 


 そう言ってフレディは私の髪にキスを落とすと「とりあえず治めて来るわ」と言って殿下の後を追いました。



 「ルー?」

 「フレディも大変よね……」

 「──そうね、でも後もう少しの辛抱かしらね」



 そう言うと美しく微笑んでカップを持ち上げました。


 ? どう言う意味か分かり兼ねましたがまあいいか、と私もお茶を飲むのでした。

 

 


 

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