16.オレの婚約者様
仕方無しにあの女と行動を共にしていると噂ってすごいなと感心する。
オレがあの女とどこで何をしていたかが一瞬で学園中を巡って行く。
嫌だな……ルーじゃない女の近くにいるだけで鳥肌が立つ。
一応この事は王命であり他言無用なのでルーにも詳しくは話せない。ルーなら分かってくれていると知っているけど、それでも嫌なものは嫌だ。
手っ取り早く近付いても下手こいて疑われてサプリメントをゲット出来ないなんて事になると更にめんどくさい事になるし……仕方無しに少し時間をかける事にした。
ルー!!!!!
ルーの匂いを嗅ぎたいよ────っっ!!
オレは禁断症状で発狂しそうだった。
そんなある日あの女と一緒にジムの所へ向かう途中で前方から愛しのルーが歩いてきたんだ。
オレは久しぶりに会うルーの姿を見て顔が綻びそうになったけど、グッと我慢した。
心の中では会えた事にガッツポ!!
すれ違う寸前に匂いを嗅いでおく。スンスン……離れていても良い香りが漂ってる。隣に居る女の臭い匂いに侵されたオレの鼻は愛しのルーの匂いを嗅ぎ続けた。
そしてすれ違いざまにルーが声をかけてきたんだ。
「フレディ、何か言う事は?」
ルーの美しい声。久しぶりに聞いて心が歓喜の叫びを上げていた。
それでも仕方ないんだ。嬉しさを押し込めて冷静にならないと。
「──特に……」
「──そう。わかったわ。じゃあね」
涙が出そうだった。分かってくれているとは思っている。だけどルーに対してこんなに素っ気なく話す事があるなんて……自分をぶちのめしたい気分だ。
ルーはそのまま視線を外し去って行った。
オレはショックと情けなさとルーを追いかけたい衝動ともう訳がわからない感情が爆発しそうでその場から少しの間動かなかった。
バカ女は何を勘違いしたのかオレの腕に腕を絡めてきて
「フレディ大丈夫? ルー様って怖いね……大丈夫だよ! 私が付いてるから!」
なんて事をほざいている。
○ね。マジで。
あぁ、失礼しました。
言葉が悪かったな。
その日にあの女はジム達の前でオレにサプリメントを渡してきたんだ。
飲んでみて、と。
オレは飲むフリをして取り出しポケットにしまった。一つでは足りないらしい。何個か持って来いと指令が出ている。
仕方ない。あと数日の我慢だ。
日は無駄に流れて行く。
サプリメントは手に入るようになったが少し怪しまれているのかすぐにくれなくなってきた。
あの女は何かを引き換えにしてこようとするから、サプリメントを手に入れる機会が減ってしまった。
暫くするとルーが実家に帰るという話をベスから聞いた。
焦った。一人で帰したくない。
ルー待って!!
全てを巻いた。
話したくもない話をあの女とする。
囮になるのはこれで最後だ。
ルーに手紙を送る。
ジム達にも見張られているような状態だから花びらだけを入れて。
白い花びらはアスターの花弁
【私を信じてください】
それだけを送った。
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