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14.オレの婚約者様

フレディ視点です。


 オレの婚約者ルイーズ・メルベルクの朝は早い。



 太陽が上がり始め鳥の囀りが聞こえ始める頃には既に身支度を整えて屋敷の周辺を見回りがてら走る。

 息も乱さずに10周程すると、次は大きな木の枝にぶら下がり懸垂。そして腹筋、腕立てと筋トレを続けた後、木刀を振る。


 簡単に木刀を振ると言ったがその木刀かなり重い。

 オレも一度持たせてもらって振ってみたが5回程で息が上がった。


 朝から一通り身体を動かすと軽く汗を流して朝食を摂り学園に向かう。


 品行方正で美人なルーは皆の憧れの的そしてオレの自慢。

 学園でもオレ達は憧れのカップルとして皆に羨ましがられている。


 

 いいだろ? 羨ましいだろ? オレとルーは相思相愛!!



 そんなルーとオレの出会いは生まれる前にまで遡る。オレの母親とルーの母親(王女様)とベスの母親は幼馴染みで親友だった。


 親友三人が同時期に子供を授かった。

 男女だったら結婚させれたらいいよね〜程度にマタニティライフを楽しんでいたようだ。


 そして出産。

 オレ、ルー、ベスの三人は赤ん坊の頃から家を行き来し(王都にある屋敷が近所だった)三人まとめて一緒に育ったワケだ。


 小さい頃のオレは身体が少し弱くて他の同年代の子よりも小さかった。ルーは健康優良児で走り回るのが大好きで一番背も大きかった。ベスは大人しかったが本が好きで頭も良かった。


 ルーがオレを連れて走り回って、ベスは木陰で本を読んでそれを見ているという図が普通だった。それは王都でもそうだったし、それぞれの領地でもそうだった。

 

 ある日いつものように母達がテラスでお茶をしていて、オレ達はコロコロ走り回っていたんだ。

喉が渇いたオレはお茶を貰おうと母達の元へ行った、その時の会話がこうだ。




 「ルーちゃんは相変わらず元気ね〜」

 「元気すぎて困ってるわよ、コーエンがお嬢は剣技の才能がある! 鍛えさせて欲しい! なんて言ってくるの」

 「コーエン団長? ふふ、すごいわね! フレディなんてまだまだ弱くてね……」

 「あら、ベスなんて本の虫よ? 元気に走り回ってるのっていいわよね」

 「あ、そういえばジェイムス殿下の婚約者選びが始まるって?」

 「そうね、そうなるとそろそろルーも考えないといけないわね」




 ルーの母上の言葉にオレは焦りを覚えたんだ。ルーが取られちゃうって!

 急いでルーに結婚を申し込まなくちゃって。

 そのまま走ってルーの所に戻って近くに咲いてた赤いバラを摘んでルーに言ったんだ。




 「ルー! オレとけっこんしてずっといっしょにいよう!」



 そしたら、少し考えたような顔をしたルーはフフッと綺麗に笑って花を受け取ってくれた。



 「フレディわたしのおむこさんになりたいの?」

 「うん! なりたい! いっしょうしあわせにする!」

 「うーん、いいよ! フレディのことすきだし!」



 やった! って思ったらルーはオレの顎をクイッとするとチューッとキスをしてくれた。



 ベスはそれを見て急いで母達を呼ぶと「わたしがしょうにんです!」と鼻息も荒く二人の婚約を祝福してくれたんだ。



 いつでも白紙に戻せるような内容で婚約を交わすと(オレはそんなモノ必要ないって言ったんだけどね)ルーと毎日楽しく過ごしていた。



 ルーの家は辺境だから年に数回辺境へ帰るんだ。その時は必ずついて帰った。




 オレ達が中等部に入る頃ルーの実家に行ったら、新しく兵士団に入団した男の一人がコーエン団長の知り合いの息子でシリル・エイトルだった。


 この男、ルーが兵士団の訓練に参加すると知って「ここはお嬢ちゃんのおままごとの場所じゃないぜ?」と鼻で笑ったんだ。

 オレはルーの凄さを知っていたから言い返そうとしたんだけど、ルーはそれを制してとりあえず共に訓練しましょうと話を進めたんだ。



 結果は、走ってはシリルよりも長距離を走り、懸垂はルーの勝利、腹筋は引き分け、最後の手合わせでは引き分けだった。

 中等部の女の子に惨敗だったシリルは顔を青ざめてクッと悔しそうだったが、ルーの使っていた木刀を手にした瞬間膝を着いて騎士の誓をたてていたんだ。


 ルーの使っていた木刀はコーエン団長の物で特別性。重い。通常の木刀の10倍の重さだった。


 さすが、オレの愛する人は素晴らしい。

 シリルが惚れるのだってわかる。


 ルーは天然の人タラシで……懐が深いから受け入れるととにかく心を砕いてくれる。

 屈託のない笑顔とかたわいもない会話、ここ辺境では王都では見せない普段のルーの姿を見せてくれる。


 だけどさ、オレとしては少し面白くないんだよね。ルーが愛してると言ってくれるのはオレにだけ。それは分かっているんだ、だけどその笑顔をオレ以外に見せないで欲しい、オレ以外の男と楽しそうにしないで欲しい。


 そんな事は言えないけどね……



 ルーが辺境に行く時に一緒に帰るのは王都でじっと待ってなんていられないからだ。今誰と何をしているのか気になって、嫉妬で気が狂いそうになるからだ。


 そんなオレの心を分かっているのかルーはオレが付いて来るのを断ってきた事は一度だってない。

 


  

 「フレディ?」

 「ルー!! 終わった?」

 「ええ。フレディも手合わせする?」

 「じゃあ、お願いします!!」



 オレも成長して今ではルーよりも背は高いし筋肉だってルーより付いてる。

 スラリと引き締まった体は誰よりも美しいと噂されているのは知ってるんだ。


 

 ガスッ、ボコッ、ドスッ……



 「参りました……」



 ルーには秒で負けるんだよなぁ……。シリルには3勝7敗くらい。団長にも勝てた事は無いけど、兵士達には勝てるくらいには強くなったんだけどね……。



 ルーには勝てないよ。

 

 だってルーだからね。


 

 今日もオレの婚約者様は朝から走って鍛錬して汗を流して学園へ向かう。



 「フレディおはよう」



 ニッコリ笑うこの顔がだいすきだ。





 

読んで頂きありがとうございます!!

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