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新作です!よろしくお願いします!
「エリザベス・ヴァントウェル! 今日この場でお前との婚約を破棄する!!」
音楽も人の騒めきも全てが止まりシンと静まり返ったホールに一人の男性の声が響きました。
最近流行りの婚約破棄モノの舞台を見ているようですね。
「……ジェイムズ殿下、そのお言葉本心でございますか?」
「ああ! 本当だとも!! 学園でのお前の悪行は聞いたぞ! そんな奴に王妃になる資格など無い! そして私は真実の愛を教えてくれたスザンヌ・マリオエラと新たに婚約を結ぶ!!」
あぁ……と何とも言えない騒めきが起こりました。
「……嘘偽りはございませんね?」
「──あるわけが無い!!」
「──皆様お聞き届け頂けましたか?」
エリザベスと呼ばれた女性は赤髪に赤い瞳のゴージャスな美人。
婚約破棄という不名誉な言葉を投げつけられ、それでも堂々と凛とした佇まいを崩す事なく周囲を見回しています。
ホールの前方でそんな事が起こっているのにも関わらず、殿下の側近である筈の私の婚約者様フレデリック・ルフェーブルが涼しい顔で私にケーキをアーンとしてきます。
「ちょっと、フレディ……」
「ん? どうしたの?ルー」
ついチッと舌打ちが出てしまいました。
「どうしたの? じゃないわよ。殿下がアホみたいな事ほざいているわよ? あなたは行かなくていいの?」
「えー?」
何、その心底面倒くさいと言う顔は!?
「えーじゃないわ。いいのかって聞いてるのよ」
「あ、うん」
って軽!!
「いいならいいけど……」
「いいんだよ、ルーが気にする事は一つも無いんだから」
「そうなの? でも、ベスが……」
私と第一王子の婚約者のエリザベスは幼馴染みで親友です。だから余計に……。
「ベスは大丈夫だよ」
「?」
「ほらルー、アーン」
イヤイヤイヤ、今そんな呑気にしていられるような状況じゃないですって……。
「フレディ、もう口聞かないわよ?」
「──!! ルーそんな事言わないでよ……」
金髪碧眼で美丈夫なフレディは公爵家の子息で第一王子の側近であり次期宰相でもあります。
そんなフレディと私も幼馴染みで小さい頃はベスも一緒にコロコロ3人で走り回っていたものです。
フレディとの婚約は親同士が決めたと言うよりもフレディ本人がそう望んだそうです。
3歳の時に求婚されて良くわからないながらも、大好きなフレディとずっと一緒に居られるならいいよ! と私の方から唇を奪ったそうです。
真っ赤になったフレディとニコニコ笑っている私を見てベスが拍手をしながら「わたしがしょうにんです!」と言っていたらしい。
親達も仲が良かったので一応そのまま二人を婚約させて万が一の時は円満に解消できるような条件で婚約を結びました。
あれから15年。
私とフレディは変わる事なく共に歩み続け、ベスは第一王子の婚約者という大役を担う事になりました。
ベスと第一王子のジェイムズは5歳の時に婚約を結びました。
その当時、私とフレディとベスはよく王宮で遊んでいました。
今思い返せばちょくちょく王や王妃も交えて鬼ごっこをしていたような……気もします。
恐れ多い事ですね……。
その頃無口で無愛想だったジェイムズ殿下の事が私は大嫌いでした。
これも今思い返せば自分の両親が普段自分とは全く遊ぶ事などないのにいきなり来た子供達と一緒に遊んでいるなんて、とても腹立たしかった思いをしていた事でしょう。
睨まれたり意地悪されたりするのも仕方のない事だと思います。
ただ、私は殿下に虐められたらきっちりとやり返していました。
それを見たフレディは毎回、勝てない戦はするなと殿下に言い聞かせていました。
当時は本当に子供らしく走り回ったり取っ組み合いの喧嘩をしたりと意外と普通にさせてもらっていたと思います。
貴族にあるまじき、ましては王族に対してあるまじき事だったのだと今なら十分に判ります。
そして成長するにつれて皆少しずつ大人になっていきました。
フレディは次期宰相としての勉強、私は公爵家へ嫁ぐ為の勉強、ベスは王妃教育、殿下は帝王学と公務。
皆がそれぞれに忙しくなって一緒になって遊ぶような年齢を過ぎていきました。
私とフレディはそれでも婚約者同士なので時間があれば王都にある私の家にフレディはやって来ます。
というか……毎日来ます。
そして食事を共にし何気ない話をして帰っていくのです。
そこにベスも時折息抜きをしに来ます。
この時ばかりは3人共が昔の幼馴染みの顔に戻るのです。
そんなある日、変な噂を聞いたの……とベスが話してきました。
ジェイムズ殿下が今年入学してきた子爵家の娘と懇意にしていると。
それ以外に殿下の側近(フレディ以外)も、だと。
それぞれ皆様婚約者も居られますし、まさかねとその時は思っておりました。
しかし、新入生は貴族らしからぬ言動で、高位貴族の子息達に近付いて触れ合う事で心をほぐし、どんどんと自分の取り巻きを増やしていったのです。
ベスは第一王子の婚約者として新入生に絆されて夢中になった子息達の婚約者達から泣きながら相談をされていたそうです。
そんな令嬢達の話を上手く宥めながら何とかしなくては、と何度となく子息達に注意を促していました。
ですが、その都度バカ子息達はベスや婚約者達を糾弾し新入生を守るような行動を取り始めました。
ベスは殿下にもやんわりと注意を促し、もう少し上手く立ち回って欲しいと懇願したのです。
しかし、結果としてはバカ王子、バカ子息共は新入生スザンヌ・マリオエラの味方に着いたのでした。
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