第2話 その4
エアリスは、高く飛び上がるとローブの男に飛びかかった。
「まだ、懲りぬのか。ちょっとお仕置きが必用だな。炎多段流星!」
《人獣化形態レベル2》
エリアスの体の筋肉が盛り上がり、蛇のような瞳にかわると牙がはえ前進にはうろこ状のものが現れ、顔が人間というよりドラゴンに近い顔に変わっていく
「貴様、獣人かなにかか! その顔は・・・・・・まさか、貴様が」
複数飛んでくる火の玉をエリアスは腕を振り下ろし叩いて、そして、蹴り飛ばし近づいてくる。
「なんだと! 素手で魔法を叩き落とすだと!!まずい」
体につけている首飾りと指輪が赤く光り始める。
「絶対防御壁」
ローブの男の前に光り輝く壁が現れた。
エアリスは、猛獣のような雄叫びをあげながら拳を握りしめると、指の根元から更に大きな3本の指が生えたと思うと、さらに長い獰猛な爪が生え始めた。
その爪を光る壁に突き刺した。
「バカな! この障壁に突き刺すなぞ。ありえん!」
さらに、雄叫びを挙げながら、両手の巨大な爪を突き刺していく。
そして、突き刺した爪を両腕いっぱいに広げて壁を引き裂いた。
ローブの男は、すかさず杖を前に突き出すが、大きなつ目にみじん切りにされていく。
後ろに大きくのけぞり、空に飛び上がった。
「逃さねーぞ!!!」
エリアスは、着地と同時に大きく屈伸するとロープの男目掛け飛び上ると、剣を引き抜き、力いっぱいに振り下ろすとローブの男は真っ二つに切られた。
エリアスには、切った感触はなくそこにはロープが切られて宙まっていた。
「ふぉはは、小僧! おもしろかったぞ。また、次の機会に相手してやる。貴様もおそらく実験対象だからな」
どこからもなく、声が響き渡り消えていった・・・・・・。
日はすっかり沈み、辺りは暗くなっていた。
「よかったよー。 もとに戻ったんだね! また、森で一緒に遊ぼう!」
マリーは、魔獣が正気に戻ったのを確認すると、足元に抱きつき喜んでいた。
魔獣も嬉しそうに鳴き声を上げているようだった。
アーシェ達が駆け寄ってきた。
「あれは、一体・・・・・・そして、君も何者なんだ。それに、先程のあの姿は・・・・・・」
エリアスは、すっかり元の姿にもどっていた。
遮るように、走りかけてくる足音が聞こえてきた。
「隊長! 大変です! 見てください!」
一同は、指を刺している方向に振り向いた。
そこには、重装備された兵士の大部隊がオオトカゲに跨り配置されこちらの様子をうかがっていた。
すべての兵士の鎧は、真紅の色の鎧に統一され辺りは赤く染まっている。
やや小高いところに、一人の指揮官らしい物が立っていた。
指揮官も真紅の鎧に、同じ色のマントを翻し腕を組み兜は被っておらず、高茶色の髪の毛が風になびいていた。
「あれは、最初に来た時にいた、えーと、双剣のたしか、ソニアって子じゃなかったかな」
「まずい! あれは、爆炎の剣士か! 王国軍なのか! 撤退するぞ」
「何いってんの? あれは、知り合いだよ。向こうが覚えているかわからないけど」
エリアスは、軽い足取りで指揮官の方に手を振りながら向かっていく。
「おーい! ソニア! おぼえてる おれだよ。ほら一緒に召喚されてきた。うーん、覚えてないかな? そうそう、一日だけパーティくんでダンジョンへ・・・・・・半年も経つおぼえていない?」
(なんか、雰囲気かわったなぁ。もっと大人しい感じの子だったのに)
真紅の大型の鎧を着込み、腰には2本の剣を帯剣し仁王立ちになってミニスカートからは太ももがみえている。
少女は、人差し指は唇に添え得て悩んでいた。
「えっと、ここに災害の発注がありまして」
「もうここで暴れていた魔術師はおれが倒したぜ。魔獣も正気の戻って森にもどるところだ。 ざんねんだったな」
ソニアは、首を胸の前で軽く手を叩くとにこやかな表情をした。
「面倒くさいので、みんな死んでくださいね」
「へっ?」
ソニアは、ウィンクしながら言うと紅茶色の髪が赤くほんのり発光し、風とはべつに、激しく揺れ始めた。
「生きているものは、すべて殺せ! すべてを焼き払い。草の根一本すら残すな!」
右手を高らかに上げると振り下ろした。
それに呼応しあたり一面から咆哮のような声が響きわたった。
「うふふ。あなたも従いなさい」
指を鼻先につきつけてウィンクして見せた。
(あれ、なんか、頭に、感情に、ソニアの言葉が心地よく響いてくる。心がとろけて消えていきそうだ・・・・・・そうだ・・・・・・殺さなきゃ・・・・・・みんな、殺さなきゃ)
「うふふ。みんな殺すのよ。我々以外すべていらないわ。あははは」
「だめよ! エリアス! 気をしっかりもって! 言うこと聞いちゃだめ!! 何か強制力を持っているスキルを使っているわ!」
ラシェルも命令が届いているが、苦しそうに耐えてアーシェとマリーを押さえつけていた。
《人獣化形態》
エリアスは、極力人間の外見を保つが、体の筋肉は盛り上がり、目は蛇のような縦長となり牙がはえ、爪が伸びるのは抑えられなかった。
だが、十分、意識を集中すると正常を保っていられた