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腐れ縁の美少女幼馴染が何故かメイド喫茶で働いている件~「おかえりな……おかえりになさいませ、ご主人様」から始まるラブコメ~  作者: ときたま@黒聖女様
最終章 僕と幼馴染メイドの終わらない腐れ縁

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ウザ後輩の様子がおかしい④

「ねぇ、ゆうくん。私、今日ゴミ捨て当番なの」


「ペアは?」


「女の子」


 女の子か……。

 昨日、僕の下駄箱に入れられていた手紙。その内容のせいで幸奈を一人きりにはあまりしたくない。

 でも、田所のストーカーの件もある。

 幸奈と田所……二人のことを考えるなら。


「ゆうくん。私は大丈夫だよ?」


 幸奈は何も知らないから僕を安心させるように言うけど、僕は不安だ。


 僕の不安はただの杞憂かもしれない。でも、実際に後輩がストーカーされているのだから、もしもってことを考えてしまうのだ。


「ううん、僕もゴミ捨て手伝うよ」


「でも、それじゃ」


「大丈夫。今度はちゃんと考えてあるから」


 ちゃんと、二人ともどうにしかしたいから。



 そして、迎えた放課後。僕と幸奈は二人でゴミ袋を持って歩いていた。幸奈とペアだった子は僕も手伝うよと言ったら、丸投げしてとっとと帰ってしまった。自由奔放過ぎる。まぁ、ゴミを捨てるのに三人も必要としないからいいんだけど。


「なんだか、久しぶりだね」


「そうだな」


 幸奈がメイド喫茶で働いていることや隣の部屋に住んでいると知ったばかりの頃、今日みたいにゴミ捨てを手伝った。あの頃はまだツンツン全開で肩が触れただけで嫌がられたんだよな。懐かしい。


「なに笑ってるの?」


「いや、あの時幸奈と肩がぶつかってスゴく嫌がられたなって」


 こんな時に不謹慎だとは思う。

 でも、あの頃を思い返すとどうしても懐かしくなってしまう。


「うっ、ごめん。で、でもね、あれは照れ隠しだから。ゆうくんが手伝ってくれて……ゆうくんに触れることが出来て……本当は嬉しかったから」


 幸奈は隣で焦るように訂正してくる。僕が怒ってるとでも思ってるんだろうか。


「幸奈は照れ隠しのつもりでもあんまり隠しきれてなかったぞ?」


「本当に?」


「僕から見て楽しそうに見えたからな。僕が気づくってよっぽどじゃないか?」


 幸奈の気持ち事態には気づいてないからなんとも言えないんだけど。それでも、あの楽しそうにしていると感じたことは正解だったらしい。


「わ、私、普段から顔に出ちゃってるのかな……」


「う~ん、どうなんだろ。幼馴染の僕だから気づくってこともあるかもだし」


「そ、そうだよね……気を引き締めないと」


 そんなことを話しながら校舎から離れたゴミ置き場に着いた。ゴミ袋を適当に放り投げ、当番終了。これから、田所の方へ向かおうとしたその時、スマホが鳴り響いた。

 春からだった。


「もしもし?」


 電話に出て、内容を聞くと電話を切った。

 そして――


「幸奈。急いで同好会行くぞ。捕まえたらしい」


 空き教室に向かって幸奈と一緒に走り出した。



 空き教室の扉を開けると中には田所と春、秋葉、そして、見知らぬ男子生徒がいた。きっと、ストーカーだろう。捕まったからなのかビクビクしていた。


「春、ありがとな」


「いいよ。ストーカーとか許せないしな。じゃ、めぐ待ってるし帰るわ」


 春はそう言い残すととっとと出ていった。男でも惚れそうになる行動に思わずグッとくる。イケメンは去り方さえカッコいいらしい。


 幸奈も心配だったけどもちろん田所のことも心配だった。だから、僕は春と秋葉にも協力を頼んだ。二人は快く受けてくれた。

 そして、田所に事情をLEINで伝え、空き教室辺りをうろうろするようにも伝えておいた。

 春にも無駄に空き教室の周囲を歩いてもらい、何かあった時のため秋葉には中で待機してもらったのだ。


「田所の知り合いか?」


 問いかけると首を横に振る田所。

 当然の如く、他人に興味のない僕は誰か知らない。幸奈と秋葉にも確認してみるが答えはノーだった。


「お前、名前は? 学年とクラスは?」


 そう問いかけるとストーカー生徒は一瞬だけ睨んできたが、観念したように口を開けた。


蔵野(くらの)……学年は一年。クラスは三組」


 ストーカー……もとい、蔵野と名乗った男子生徒。次は理由を聞き出さないといけない。


「どうして田所のあとをつけた?」


 蔵野は田所の方をチラッと見る。そして、視線をこちらに向けた。


「この人ならあなたたち二人についてなんか漏らすと思ったから」


 目線を動かして僕と幸奈のことを交互に見る。


「どういう意味だ……?」


「僕があなたたち三人の写真を載せたんですよ。そしたら、予想以上にみんながわらわらと盛り上がってくれたんで、もう一回あなたたち二人の秘密でも載せてみようと思ったんですよ」


 幸奈は恐怖を感じたのか咄嗟に僕の後ろに隠れた。


「でも、あなたたちが二人で一緒にいる日はない。それに、お姫様を守る人はいっぱいいそうなんでバレたら何されるか分からない」


 だからと言って田所の方を見る。


「この人なら何か秘密でも漏らしそうだなと思ってつけてたんですよ。この人に興味なんて微塵もありませんよ」


 鼻で笑う姿にどうしようもない怒りが沸いた。そして、気づいたら胸ぐらを掴んでいた。


「ゆ、ゆうくん。暴力はダメだよ」


「そ、そうっすよ。私、気にしてないんで大丈夫っすから」


 二人に止められて冷静になった。手を離すと蔵野はゴホゴホと咳き込んでいた。


「はぁ、最悪ですよ。せっかく、昨日手紙まで書いてここ最近周りをうろうろしてる邪魔物を排除しようとしたのに」


 昨日の手紙を書いた正体も意味も分かった。僕と幸奈についての秘密を得るために邪魔な僕と幸奈を消すためのものだったらしい。


 そして、僕はそれにまんまと引っ掛かり、幸奈を優先してしまった。田所の方に向かわなければならなかったのに……。


 蔵野と情けない自分に対してまたどうしようもない怒りが沸いてくる。

 そもそも、どうしてそこまでして秘密を欲しがるのか分からない。


「何がそこまでさせるんだ? たかが、僕達の秘密を知るためだけだろ?」


「気持ち良かったんですよ。自分が載せた写真で多くの人が動かされるのを見てて楽しかった。それを求めただけです」


 確かに、自分が何気なく載せた写真一枚で多くの人が動かされるのは見てて楽しいものだろう。人は誰かに認められている時に幸福を感じるのだから。

 でも、だからって、自分のために田所を不安にさせていい理由なんてどこにも存在しない。


「お前の下らない理由で田所はずっと怖かったんだぞ」


「そんなの知らないですよ。僕は何もしてませんし。ただ後ろを歩いてただけです」


「……っ、お前……」


 まったく反省しない蔵野に怒りだけが大きくなっていく。でも、どうやって解決したらいいのか分からない。


「はぁ、時間を無駄にしましたよ。可愛くもない人のあとをつけて収集なしなんて。これなら、お姫様を直接狙った方が――」


 その瞬間、銃声のような音が鳴り響いた。誰も予想していなかった出来事に一瞬静まり返る。


「……なにが、可愛くもないよ。あなたはね、ひとりの女の子を怖がらせたの。ぐちぐちぐちぐち言ってないでとっとと謝りなさい!」


 最近では見なくなったツンツン……いや、ツンなど関係なく、幸奈が蔵野の頬を叩いていた。僕以外には誰にも触れさせないと言っていた幸奈自身の手で。

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