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腐れ縁の美少女幼馴染が何故かメイド喫茶で働いている件~「おかえりな……おかえりになさいませ、ご主人様」から始まるラブコメ~  作者: ときたま@黒聖女様
3章 僕の幼馴染メイドがこんなにデレデレなはずがない

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幼馴染メイドは鈍感幼馴染を監視している―幸奈side―

「明日はちゃんと学校行くからね」


「ん、分かった」


「じゃあ、ゆうくん。また明日」


「あ、そうだ。言うの忘れてた」


 二人して、自分の部屋の扉に手をかけた時、ゆうくんは何かを思い出したようにこっちを向いてきた。


 なんだろう……あ、もしかして、まだ告白されてないし今からされるのかな!


 ゆうくんは真剣な目をしていた。私も弾けそうになる心臓を抑えながらゆうくんを見つめ返した。


「今日、幸奈が服屋で着せられてたの……あの時は言えてなかったけど全部似合ってた」


 ……っ、思ってた内容じゃない。けど、嬉しい。嬉しいよ、ゆうくん。


 お店で着せかえ人形のように扱われたのは嫌だったけどゆうくんにそう言ってもらえただけで意味がある。


「あ、ありがとう。今度買う時の参考にしてみるね」


 ゆうくんが喜ぶような服を買おう。ゆうくんに可愛いって言ってもらえるように。似合ってるって言ってもらえるように。愛してもらえるように。


「じゃあ、また明日――」


「――あ、後さ」


 今度こそ名残惜しいけどお別れかなと扉の方を向いた時だった。ゆうくんの少し大きな声が廊下に響く。


 ゆうくんを見ると何かを言いたそうに……でも、言えなさそうな。そんな、難しい表情をしていた。


 決意したように顔をキッとさせて、拳を握った。そんな、ゆうくんの真剣な表情を見て、息をごくっと飲み込んだ。


 ――ああ、これ、告白だ。私、今から告白されるんだ。


 素直にそう思えた。今まで私に告白してきた男の子達と同じ表情をしていたから。


 動悸が速くなる。答えは決まってるけどちゃんと言えるかな。噛まないで答えないと。


「幸奈の部屋の僕の写真は撤去してくれ」


「……へっ?」


 全然違った。てっきり、ゆうくんからの愛の告白だと思ってたのに言われたのはゆうくん写真の撤去。なんでなの!?


「や、やっぱり、重たくて気持ち悪い……?」


「そうじゃなくて……」


 どうしたの? どうして言いにくそうにするの? 私はゆうくんが嫌がることは出来るだけしないように頑張るよ?


「こ、これからは、僕が幸奈のことを見るから。写真は剥がしてアルバムにでもしたらいいと思う」


「で、でも、あの写真にはね見られるの意味だけじゃなくてゆうくんを見る意味も含められてるの」


 そう。朝起きて、まず目にするのをゆうくんにしたい。夜寝る前に、最後に目にするのをゆうくんにしたい。一日の始まりと終わりをゆうくんで埋めたいの!


「だ、だったら、本物の僕を見てたらいいだろ。その……写真より本物の僕を……」


 多分、私今スッゴくだらしない顔で笑ってる。確認しなくても分かる。だから、咄嗟に両手で口を隠した。


 ゆ、ゆうくんが妬いてる……しかも、自分の写真相手に! 可愛い!


「それって、僕だけを見てろって言ってるの?」


 こんなの聞くのいじわるだって思ってるけどさっきいじわるされたお返しだよ。


「さ、幸奈がそう思うんならそうなんじゃないか?」


「……それ、私が後輩ちゃんに使ってるやつだよ」


 ぷいってそっぽを向いてるゆうくんも可愛いな。なんだかんだ言って、ゆうくんってツンデレさんなんだよね。私は演じてただけだけど、ゆうくんはなかなか素直になれないツンデレさんだ。


「分かった。妬いてるゆうくんが可愛いから写真は剥がして大切に保管しておくね」


「だ、誰が妬いてるんだ!」


 むきになってるのも可愛い。そんなゆうくんが好きだからちょっといじわるしたくなっちゃうんだよ。


「ゆうくんのこと見てるから……私のこともちゃんと見てね?」


 わざとらしく小首を傾げた。あざといでしょ? これはね、深雪さんから教えてもらった可愛く見えるポーズなんだ。


「ば、バイバイ!」


 何も言わずにゆうくん入っちゃった。今までは何か言ってくれたのに……どうしたんだろ?



 部屋に入って、パソコンを取り出した。


 あのね、ゆうくん。ゆうくんは写真に妬いてくれたけどね、その必要はないんだ。だって、《《いつも》》見てるからね。ゆうくんのこと。


 パソコンを操作するとゆうくんが画面に写し出された。と、同時にヘッドフォンを耳につける。すると、聞こえてくるゆうくんの声。


『幸奈のやついつからあんな可愛いわざ覚えたんだよ……』


「……っ。もう、ゆうくん。そんなこと易々と言わないでよ……私、聞いてるんだからね?」


 ゆうくんは知らない。ゆうくんの部屋が盗撮と盗聴されていることを。


 目を閉じれば思い返す。あの日、朱里ちゃんと話したことを――。


『あのね、朱里ちゃん。私、ゆうくんのことを盗撮と盗聴したいの』


 朱里ちゃん、流石に引いただろうな。頬をピクピクさせてひきつってたし。


『あ、あのね、幸奈ちゃん。いくら、お兄ちゃんのことが好きでもそれは犯罪なんじゃないかな?』


『バレなきゃ大丈夫だよ。それにね、ようやくお金たまったの。私はゆうくんのことを監視したいの!』


『幸奈ちゃんって度が過ぎてるね……』


『だって、ゆうくんが私の気持ちに気づいてくれないんだもん……』


『お兄ちゃん鈍感だから……』


『だからね、朱里ちゃん。帰ったら伝えといてくれないかな?』


『ど、どうなっても知らないよ……?』


 朱里ちゃんはお母さんに伝えてくれた。夜、伝達完了の報告が届いた。


 朱里ちゃんは本当にいい子。ゆうくんのことが大好きなのに私のわがままのせいで離れ離れになった。なのに、私のことは嫌いにならないで応援してくれている。


 将来はゆうくんと一緒に沢山愛でてあげないと!


 そして、ゆうくんのお母さんの行動は早かった。たった数日で準備してゆうくんがいない間に部屋に設置してくれた。


『なんだかスパイ活動みたいで楽しいわね』


 ゆうくんのお母さんはノリノリだった。


『幸奈ちゃん。祐介のことよろしくね。チャンスだと思えばどんどんいっちゃっていいからね!』


『はい!』


 このおかげで今日、ゆうくんがおしゃれして出かける時はスゴくショックだった。きっと、後輩ちゃんか深雪先輩とデートするんだと思った。


 でも、全部私のために行動してくれた。

 私のためを思って、ゆうくんは行動してくれたんだ!


 と、まぁ、そんな訳で私は今幸せなのだ。ゆうくんと同じ気持ちなのも、ゆうくんが部屋にいる間は四六時中監視出来るのも。大変満足なのだ。


「これなら、誰にも迷惑かけないし……何も後悔しないからいいよね?」


 ゆうくんと仲直りした記念に撮ったプリクラを見る。頑張って、ゆうくんの頬っぺたにチューした光景が写ってる。

 咄嗟に唇に触れる……。


 チューした。チューした。チューしちゃった!


 思い返すと思わず恥ずかしくなってしまう。本当は口にが良かったけど、それはまだだと自負した。


 って言うか、頬っぺたにチューしただけであんなに恥ずかしかったのにキスになるとどうなっちゃうの!? 自分で自分を抑えられる自信がないよぅ!

 でもでもでも! いつかは、キスしたいから絶対にするもん。いつになるかは分からないけど絶対するもん!


「……だから。だからね?」


 画面の向こうのゆうくんに囁くように呟いた。


「私と仲直りしてくれてありがとう。これまでも、これからも……ずっと、大好きだからね……。だから、ちゃんと形にしようね」

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