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隣に住んでいるのは幼馴染メイドだった②

「どういうことだよ、母さん!」


「朝っぱらから何よ。うるさいわね~」


 僕は急いで母さんに電話していた。母さんは寝ぼけているのか、気だるげに答えている。


「だから、なんでアイツが隣に住んでるんだって言ってるの!」


「ああ、幸奈ちゃんのこと? 何よ、祐介(ゆうすけ)。あんた、今知ったの? もうそこに住み出して三年目でしょ? 遅いわね」


「速い遅いの問題じゃなくて説明してよ。ここを勧めたのは母さんだろ!」


「ああ、もううるさいわね。幸奈ちゃんのお母さんと一緒に決めたのよ。二人とも一緒にいることが少なくなったから隣同士にすれば昔みたいになるんじゃないかって」


「はぁ!?」


「あんたは気づいてないようだけど、高校も私と幸奈ちゃんのお母さんで一緒に選んだのよ?」


 確かに、思い返せば僕が高校を選ぶときやたらと今通っているところをお勧めされた。特に通いたい所もなかったから、母さんの言う通りに選んだけど――幸奈も一緒の高校を選ぶとは限らないだろ。


「だからって、なんで……」


「幸奈ちゃんもあんたと同じで高校にあまり興味なかったみたい。で、勧めたら案外すぐに行くって答えたらしいわよ」


「マジか……」


 僕は背を向けて同じ様に母親に電話している幸奈をチラッと見た。幸奈も僕同様、同じ事実を聞かされ動揺しているようだった。汗をだらだら出しているようだったし。


「で、今知ったってことはまだ昔みたいに仲良くなってないの? 私はてっきり今頃は二人仲良くお互いの家を行き来しあって一晩中汗をかきまくってるものだと思ったけど」


「ぶっ!  な、何を言って……」


「あんた、ちゃんと幸奈ちゃんと仲良くしなさいよ。昔は結婚するーってどこに行くのも一緒だったじゃない」


「そんなの子どもの時の話だろ」


「あんたねぇ……幸奈ちゃんみたいに可愛い子そうそういないんだから、子どもの時の話でも実現させなさいよ。そうじゃないと、幸奈ちゃん、他のどこの馬の骨とも知らない男の人によろしくされちゃうわよ?」


「そ、そんなのどうでもいいし……」


「そう。じゃあ、あんたは一生独身でいるのね?」


「待って、なんでそうなるの?」


「なんでって……あんた彼女いるの?」


「うっ……」


「いないなら独身でいることを覚悟しなさい」


「い、今はいなくてもこれから先出来るかもしれないだろ……」


「あんたには無理よ。幸奈ちゃんみたいな良い子が近くにいてくれたおかげであんたは知らず知らずの内に女の子に幸奈ちゃんと同じかそれ以上のものを求めてしまってるのよ。自分で分からない?」


 ……確かに、僕は同年代の女の子を見てもあまり可愛いとか付き合いたいって思ったことがない。

 僕は知らず知らずの内に幸奈に恋してる……?


『何見てるのよ? 私は別にあんたと楽しい一時なんて過ごす気ないから。って言うか、過ごさせる気なんてないから』


 ……って、ないない。あんなに憎たらしくて鬱陶しい幸奈に恋だなんて……あり得ない。


「独身が嫌なら幸奈ちゃんと昔みたいに仲良くすることね。私は早く孫の顔も見たいしおばあちゃんにもなりたいわよ」


 そう言い残すと母さんは電話を切った。

 僕は何も言い返せないまま、暗くなったスマホを力強く握った。


 はぁ、母さん……いつからそんなキャラになったんだ?

 僕が呆れて途方に暮れていると後ろから幸奈の焦る声が聞こえてきた。


「あ、ちょっと、ママ。待ってよ。切らないで」


 幸奈の方を見ると幸奈も無理に電話を切られたようでその場に立ち尽くしていた。何を言われたかは分からないけど……御愁傷様。


「……ちょっと、何見てるのよ……?」


 少し涙目になりながら、僕の視線に気づいた幸奈は睨んできた。


「別に」


「……ふん、なんで私があんたなんかの隣の部屋で住んでないといけないのよ」


 それは、こっちのセリフだ……と思っても、口にはしない。今言えば明らかに機嫌を損ねると分かっているから。

 ……はぁ、神様。どうして、幼馴染だけということなのにこんなにも腐れ縁にするのですか? 僕、何かあなたにしましたか?

 僕はずきずきと頭痛がしたのを感じた。

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