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腐れ縁の美少女幼馴染が何故かメイド喫茶で働いている件~「おかえりな……おかえりになさいませ、ご主人様」から始まるラブコメ~  作者: ときたま@黒聖女様
1章 幼馴染はツンツンメイド

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バイト終わりを待っているのは幼馴染メイドだった③

 僕は今、幸奈と二人……夜の町を僕達が暮らすマンションに向かって歩いている。……どーして、こんなことになってるのか理解しないままで――。



「ち、違いますよ。だいたい、僕に彼女なんていません!」


 僕は幸奈が僕の彼女だと誤解している今田さんに急いで全力否定した。


「そんな照れなくてもいいって。まぁ、俺も高校生の頃は彼女がいるのが嬉しいんだけどどこか恥ずかしいって思いしてたから分かるけどもさ」


 ダメだ、この人。まったく、聞く耳もってない!

 昔の自分を思い返しているのかうんうん頷いている今田さん。


「と、とにかく、違うんですよ!」


「いいからいいから。今日はあがって彼女を家まで送ってやりな。ほら、客足ももう少なくなってきたし。いったいった」


 僕は無理やり今田さんに押され、更衣室へ送られ高校の制服へと着替えさせられた。


「そんじゃ、楽しい夜を!」


 そう言いながら背中を押された僕は仕方なく幸奈のもとへと向かった。


「終わったの?」


「……おかげさまで」


「そう。なら、帰りましょ」


 幸奈はそそくさと後片付けを始めると店を出た。そのあとに僕も続いた。重い足取りで――。



 はぁ……ようやく、学校での噂が消え始めたと思ったら、今度は店長が誤解して……と言うか、幸奈のやつ、この前謝ってきたの忘れたのか?

 余計なこと言ったって謝ってきたくせにまた余計なこと言って……アホなの!?


 着替えながら店長に幸奈からなんて言われたのかを聞くとこう言われたと教えてくれた。


『今日は彼と帰る約束をしているんですけど何時に終わりますか?』


 そう聞かれて店長は素直に二十二時だと答えたらしい。すると、幸奈からは『待ってます』と返ってきたんだと。とびきりの笑顔で。


「なんで、余計なこと言ったんだよ?」


「なによ。こんな時間に私を一人で帰らせるつもりなの?」


「こんな時間って……だったら、最初に注文したやつ食ってすぐに帰ればよかっただろ? おかわりまでして……デブっても知らないぞ」


「私がいつ帰ろうが私の勝手でしょ? それに、私。いくら食べても太らない体質だから」


 ふふんと他の女の人が聞けば恨まれるようなことを自慢気に言う幸奈。僕はそんな幸奈のある部分を見ながら納得していた。

 ……ああ、なるほど。だから、つかないのか。


「はいはい、そうでございますか」


「そうよ。むしろ、感謝するべきなのよ。疲れきって一人でつまらなく帰るよりも私と楽しく帰れる方が嬉しいでしょ?」


 これっぽっちもそう思わないし答えないでおこう。

 それよりも、せっかく二人きりなんだしなんでここに来たのか訊いてみるか。


「……今日はどうして来たんだよ?」


「春くんからクーポン券を貰ったからよ」


 やっぱり、春か……余計なことしやがって。あの言い方からして、最初から幸奈に渡そうって考えてただろうし……こんなことになるんなら、春なんかに渡さなきゃよかった。


「だからって、なんで今日来るんだよ……」


「今日なら祐介がいるって教えてもらったから」


 …………は? なに、そのまるで僕に会いたいからみたいな言い方。悪寒がするんですけど。


「どーいう意味だよ」


「そのまんまの意味よ。祐介がいるから今日にしたの」


 僕の瞳を見て、真っ直ぐ伝えてくる幸奈。街明かりに照らされる頬は赤く染まり、目にはうっすらと涙らしきものが浮かんでいるように見えた。

 僕はそのような光景を知っている。これは、いくつかあるうちの『告白』のシチュエーションのひとつだ。

 でも、だからって幸奈が僕に告白なんて――。


「そ、それって――」


 どれだけ、幸奈のことを嫌だと思っても心は正直らしい。ドキドキするのが止まってくれない……。


「……ぷ、っあはは、な、なに赤くなってんの?」


「えっ……」


 突然、幸奈は楽しそうにお腹を抱えて笑い出した。まるで、雰囲気をぶち壊すように……いや、今ので雰囲気はぶち壊しになった。


「なに? もしかして、告白でもされると思ったの?」


 ……っ!

 僕の思い込みで済んでいるのはよかった。けど、実際にそう口にされるとますます意識してしまう。


「……また、赤くなった。自意識過剰だね。恥ずかしい」


 満足気に笑う幸奈。

 僕をからかってそんなに楽しいか?


「う、うっさい。赤くなんてなってないわ!」


 ただの恥ずかしさを消したい嘘だ。

 告白されると勘違いして赤くなってることなんて自分でも分かる。身体が熱い。


「だいたい、私が祐介に告白なんてするはずないでしょ?」


 そんなこと僕が一番分かってる。

 じゃあ、なんで告白されるなんて勘違いしたんだ。勘違いした自分を殴ってやりたい!


「知ってるよ。僕だってされても困るだけだし」


 もし、本当に……あるはずないけど幸奈に告白されて、あるはずないけど付き合い出したとして、それは僕の今までの生活を目まぐるしく変えることになる。

 主に学校の奴等と家族から絡まれて一気に穏やかな生活からうるさくて騒がしい生活に……そう考えただけでもゾッとする。

 僕は穏やかに、好きなことをして満足いく生活を送りたいんだ!


「そりゃ、そうだよね……。でも、祐介がいるから今日行ったってのは本当よ」

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