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バイト終わりを待っているのは幼馴染メイドだった①

 幸奈の現状――ツンデレ女王様というなんともメンドクサイ症状を発症していると知って数日が経っていた。


 幸奈とはあれからも特に何もなく、お互い口もきかないためあの問題の件は『本当に何もない二人』という新しく出来た噂に流れ始めていた。……それでも、どこで知られたのか分からないけど、下駄箱に思い出したくもない呪いの手紙みたいなものが入っている時もある。気分が悪いったらありゃしない。

 それでも、僕は今もこうして生きている。自分の命を大切にしながら。

 あ、スクールライフでの話ね。本当に生きる死ぬとかじゃないから。もし、本当に誰かに殺されでもしたらソイツにはこう言いたい。誤解で殺人を犯した残念なやつだと。人生くたばれ!



「春、これあげる」


 僕は一枚のチラシを春に渡した。


「なんだ、これ?」


「バイト先のクーポン券。バーガーセットがいつもの半額になるから彼女とでもどうぞ」


「半額ってなぁ……つーか、これお一人様だけじゃん!」


「うん。だから、春はそのままで彼女さんは安くでいいんじゃない?」


「なんでだよ。どうせなら、二枚持ってきて二人とも安くなるようにしてくれよ」


「一枚しか余らなかったんだから仕方ないだろ?」


 この半額になるクーポン券は昨日、僕がバイト終わりに店長から余ったからあげると言われて貰ったもの。

 でも、なんとなく自分がバイトしている店のクーポン券を使う気になれなくてそのまま春に譲渡したという訳だ。


「いらないんなら捨てるなり誰かにあげるなりしてくれていいから」


「……あー、本当にいいのか?」


「うん。僕、使わないし」


 そもそも、バーガーセットを食べたい時は賄いとして安くで買えるようになってるし。


「じゃあ、ありがたく貰っとくよ。そのかわり、どうなっても文句なんて言うなよ?」


「……僕のことなんだと思ってるの?」


 ……って言うか、何に使うつもりなんだ?

 その意味深な笑顔が怖いんだけど……。


「強情な意地っ張り」


「意味分からないんだけど……」


「あと、鈍感野郎」


 鈍感野郎って……。

 幸奈からも『この鈍感!』って怒られたけど、僕のいったいどこが鈍感なんだ?

 は、もしかして、あれか。一人分しかクーポン券がなかったら春の彼女が気を使うからか!

 そこまで頭が回ってなかった。確かに、僕は鈍感だな。


「ごめん、春。今度からはちゃんと二枚用意して、春と彼女の分として渡すよ」


「……はぁ、ほんとそういうところだよ」



「ありがとうございましたーー!」


 ふぅ、晩ご飯時だから忙しくなってきたな。

 バーガーショップは基本的に訪れる人が止まない。その中でも特に忙しいのが晩ご飯時だ。家族連れ、学生同士、仕事帰りのサラリーマン等……沢山の人が食べに来る。

 今日もしっかり働いて稼がないと!


 別にお金に困ってるという訳ではない。

 親が一人暮らしを言い出したため、家賃や食費などは実家から出ている。だから、別に無理にバイトする必要もないっちゃない。

 でも、なんとなく全て親任せというのも嫌で社会勉強兼お小遣い稼ぎとしてバイトしている。

 それに、お金はあるだけあるにこしたことないしメイド喫茶に通う分とメイド系のゲームとか本に注ぎ込む分は自分で稼がないといけないしね!


「いらっしゃいま――」


 笑顔を向けて挨拶。

 それは、バイトをして初めて教えてもらった基本的なことで肝心なこと。

『笑顔で挨拶することが何よりの仕事』

 それが、店長の言い分だった。


 だから、今日も笑顔を作って接する。

 さっきまでもそうしていたんだから、この新しく訪れてくれたお客様にもそうしないといけないんだと分かってる。……頭では。

 でも、顔が拒否していた。いや、拒否というよりは固まって動けなかったという方が正しいだろう。


「バーガーセットひとつ」


 なんせ、新しく訪れてくれたお客様は幸奈だったのだから。

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