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血ぬられグッドディード -Blood Good deed-  作者: 瀧寺りゅう
第6章 被験者組と脱落者組 それぞれの思惑
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赤い浴室に輝く善意 【挿絵】

【挿絵回 苦手な方は非表示にしてご覧下さい】

 休憩フィールドの中ほどに建つ、他のビルにまぎれて目立たないさびれたモーテル。その一室で、バスタブに体を沈め、唐梅は”沈む”。


「……」


 先日の耐久戦。眼球にこびりついて離れない、砂漠蔵や詫無、スタッド、一度殺した相手を何度も、何度も殺し続ける映像。


 顔をぬぐう。夕焼けによって、湯水が赤い液体に見える。全身が血に浸かっている錯覚を覚えた。



挿絵(By みてみん)



「……グッディ、ちゃんといるね」


「何ですか、ご主人様。私は今忙しいんです」


 浴室のドアの向こうで、グッディが見張り番をしている。実際には自分がグッディを見張っているのだが、グッディには自分が風呂に入っている間見張りをしてくれと言ってある。


 耐久戦で殺しの衝動はすっかりおさまったらしく、危険な相棒はハンバーガーをかじって大人しくしていた。それでも目を離すわけにはいかない。常に近くにいてもらわなければ。


「仲間がくれたログインボーナス、本当に全部食べていいんですか」


「食べ物だけだよ」


「武器やアイテムを食べるわけないでしょう。バカにしてるんですか。殺しますよ」


 回収したボーナスの中から、食べ物だけを寄りわけてグッディに渡しておいた。相棒がボーナスの処理に忙しい間、再び耐久戦について思い返す。


 仲間を守ることはできた。回復薬を使うこともなく、グッドディードの力でやっと完璧に守ることができたのだ。多くを殺し、少しを救えた――だが、しょせんこれは言い訳だ。


 いくらそれらしいことで着飾ろうと、結局はグッドディードの殺害衝動を発散するために、殺す相手を選んだというだけにすぎない。そう、殺しているにすぎない。


 少数の仲間を救うためだろうと、こんなのもの、こんなのものは完全に――……。


「……悪だ」


 ふと、湯水が本当に赤くなっていることに気づく。仲間は無傷だったが、自分はケガを負ったことを思い出す。


 腕をもいでいいなどとグッディに言い、自己満足の罰を自分に与えた。……本当に、ただの自己満足でしかない。


 自分のケガは放置して、眼鏡をつける。情報パネルを出すと、薄暗い浴室がぼんやりと輝く。自分の”悪行”をしっかり数字で見ておくために、クエストで集まったポイントを確認していく。


「……?」


 達成したクエストの一覧に違和感があり、顔を近づけた。一番最後の項目に、見覚えのないクエストが書かれている。


『クエストI:誰かを守る』


「……」


 最初、追加されたクエストを確認したときにはなかったものだ。また追加されたのか? いつの間に……。しかし、不可解だ。


 「誰かを守る」。あのホウライたちがこれを追加したとは思えない。じゃあ一体、誰が? あの研究員たち以外に、誰がいると――……。


「ご主人様。陽子が呼んでいます。耐久戦について、もう一度説明してほしいと」


「! ……ああ、わかった。今行くよ」


 パネルを消し、湯から上がる。新しいクエストに見え隠れする奇妙な”善意”に気をとられながらも、血と夕日に赤い浴室を出た。






「唐梅くん! 昨日ぶり~! グッディも元気にしてる?」


 部屋に戻ると、驚いたことにそこには蜜月がいた。凄惨な実験を終えたばかりとは思えないのんきな調子で手を振っている。


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