第一章中学生編1
人間には未知の潜在能力が存在する。その説が言われてから四十年でそれの潜在能力を発現させることに成功した。
潜在能力、それは人間一人一人が持っている力。いわゆる超能力である。肉体を強化したり、物質を生み出したり、物を浮かせたりといった魔法みたいなことができる力。
さらにそれから三百年。今では能力発現技術が発展し、能力を使った新たな競技もで始めた。世界はこの能力を中心に動き、超能力時代となっていた。
声をかき消すほどの雨の中、雷が部屋の中を照らす。「はぁ、はぁ。」そこには、鮮血に染まった幼い男の子に血塗れの倒れる四人の死体という光景があり、悲劇の後を物語っていた。
バンッ!勢いよくドアを開ける。
「警察だ!動くな!……ッ!」
その光景を見て絶句し息を飲む。
何だこれは。そこに居た男の子と目が合ったと思ったら、男の子は気を失ってしまう。
駆け寄る警察。
「はっ?!大丈夫か?きみ!きみーーーッ!」
十年後。
「人間には未知の能力がある。この事はみんな知ってると思う。で、この能力を発現させ易くするため、産まれてからすぐに一度研究所に預けられる。その研究所で調整を受けると、ある条件下で能力が発現し自在に使えるようになる。この条件とは何か?えーっと、じゃあ三井。」
「自分にとって劇的な事が起こった時です。」
「うん、正解だ。この事で発現する能力は、必ずしも一つではない。まぁ普通は一つだが、資質次第で二つ以上持つ者もいる。2つ能力を持つ者をdouble ability〔ダブルアビリティー〕、3つだとtriple ability〔トリプルアビリティー〕と呼ばれる。」
キーンコーンカーンコーン!
「じゃあ、今日のここまで。ちゃんと復習きとけよ。」
授業が終わる。
「はぁ、やっと終わった。」
「おい、神崎!どうだった授業は?」クラスメイトが話しかけてきた。
「っ、坂部。」
「未だに能力が発現してないお前には、辛い授業だったんじゃないか?」
坂部は、馬鹿にするような口調で話す。
「うるせーよ!」
こいつの言う通り、僕はまだ能力が発現していなかった。僕ぐらいの歳には、どんなに平凡なやつも1つは能力があるものだ。この歳で1つも能力がないと言う事は、この世界では超激レアの無能力者。つまり、潜在能力無しといつ事を意味していた。
はぁ、何で僕には能力が発現しないんだ。
能力に関わる授業がある度に、こんなやり取りをしていた。
「坂部。!」
驚き振り返る。
「あんた、そんな事言ってる場合じゃあないでしょう。」
「げっ。宇良田。」
宇良田 杏果〔うらた きょうか〕。学校一の能力使いだ。
「うるせーよ。」
坂部は中三の二月なのに、まだ高校が決まっていなかった。
「へっ!いいよな。一流高校に行く事が決まってるやつは。」
悪態をつき、立ち去る坂部。
彼女は一流能力学校の一つ、国立第三能力育成学校。通称サードアカデミーに入学する事が決まっていた。
「たく。あんなの気にしなくねいいからね。」
「うん。」
返事をするが内心凄く気にしていた。それもそうだ、能力次第で就職先すら決定してしまう時代に無能力者という事は、途轍もないハンデを背負う事を意味する。況してや、まだ十五の子供が、能力主義のこの時代に、能力への憧れを捨てられる訳もなかった。
「あと、高校のことだけど。何であんな遠い学校なの?家の事なら気にしなくていいって言ってるじゃない。」
「いや、居候なのに何時迄も厚かましい事言ってられないって。」
僕は幼い頃に両親を殺され、警察をやっている彼女の両親に引き取られ、彼女の家にお世話になっていた。
「まぁ進路の事に口を出すつもりはないけど、…決め方がねえ…。」
「僕のことはいいんだよ。それよりお前だよ、一流学校に行くんだ色々準備しないといけない事あるだろ。寮にも入るんだから。」
「うん…分かってる。…でもっ……いや何でもない。」彼女はその場を立ち去る。
キーンコーンカーンコーン!
学校が終わり、帰り道。
はぁ。何で僕には能力無いんだ。劇的な事、何度もあったも思うんだけどな。
まさか、本当に僕には潜在能力がないのかな。
思い詰め歩いていると電気屋のテレビのニュースが目に入る。
「では、次のニュースです。昨夜、五人の人が殺害される事件があり、その犯人がとある犯罪組織ではないかという事が警察の調べにより分かってきました。この事について国内の犯罪組織について研究されている城島さんに来てもらいました。では今日はよろしくお願いします。」
「まず、国内に存在する三つのテロ組織を紹介します。……ハーミット、クライム、そしてパンドラ。」
ドクンッ!
パンドラの名前を聞いた途端、鼓動が早くなり呼吸が荒くなる。
「この三つの組織は国内で最も大きいテロ組織です。そして今回の事件…と言うか10年前くらいから行われている殺人事件の半分はパンドラによるものだと思います。」
さらに鼓動が早くなる。
「それはどう言う事ですか。」
「何年か前からパンドラの仕業ではないかと言う手掛かりは掴んでまいました。10年前、ある殺人事件がありました。その事件で殺されたのは四人。2人はその家に住む夫婦、一人は近所に住んで居た5歳の女の子。で、もう一人はパンドラのメンバー……。」
僕は走ってその場を離れた。
「何だ……今のは?」
呼吸を整え、歩き出すと。
「危ない!」
子供が車に轢かれそうになっていた。はっ!と思った次の瞬間。
ドクンッ!
その瞬間、意識を失う。
気がつくと、子供を抱え反対側の歩道に居た。目の前には子供の親が何度もお礼を言っていた。
「ありがとうございます。ありがとうございます。…………………………。」
「はっはあ。」
何が起こったかわからない僕は、生返事をしながら、その場を離れる。
何だったんだ今のは?変な気分だったな。
帰宅後、今日の出来事について考えていた。
本当に今日のは一体何だったんだ?まっ!まさか!能力が発現した?!それか発現の前兆とか?
「……ありえる。……よし!」
何かを決意すると、ベットから飛び降り。
「はっ、はぁーっ、ハァーーーーッ!」
勢いよく片手を挙げ叫ぶ。
その僕の目の前には杏果が立っており唖然としていた。
「おっ!お前!いつからそこにっ!」
「ついさっきだけど、何してたの?」
「べっ、別に何でもねーよ。で、何よーか?」
「いやー、大した事じゃないけど、明日の全校集会で二階堂教授が来るんだって。」
「えっ?!あの二階堂教授が?」
二階堂秀樹。最も人間の身体を知り尽くしていると言われている男。この国では、この人の事を知らない人はいないと言われるくらいの有名人だ。そして僕はこの人の大ファンだった。
「うおー!テンション上がってきたーッ!」
彼女は笑みを浮かべ、部屋立ち去る。
この時、あんな大事件が起こる事など誰も想像していなかった。
とある場所では。
「おい、準備は出来てるか?」
「はい。」
「よし、ではボス。」
「ああ、分かってるな。」
「はい!二階堂秀樹を殺す。」
「よし、行って来い。」
「はい。」
下っ端と部屋を出る。