拠点がきまるよ?
ギルドから帰ってきたシュリさんと合流しミレーユさんの案内で物件に向けて街を歩いていくと
「おっ!? ミレーユさん!? いい野菜入ってるよ!」
「シュリちゃん!? 今日休みなの!!? 俺らと飯でも どーっすかっ!!?」
「コルアたん!! ハァハァ」
などなどとすれ違う店の人や冒険者らしき人・・・・あと特殊な趣味を持っているであろう人たちから3人は次々声をかけられ 愛想笑いでかわしたり 露骨に断ったり 生ごみを見る目で見下しスルーしたり
それぞれが対応していた
「3人とも街の有名人なんですね」
と僕がにこやかに話しかけると
「うふふふふ 私はよく買い物もしますからね」
「露骨に下心丸出しの暑苦しい人たちしか寄ってこないのが・・・・ちょっとね」
「触れないで」
ミレーユさん シュリさん コルアの3人がそれぞれ答えてくれた
・・・・・うん コルア ごめんね・・・・
そういうやり取りをしながら僕たちはどんどん街の東に進んでいくと街の東門が見える位置にある3階建てで結構な敷地を有している少し古めでレンガ作りの建物の前にたどり着いた
そして その建物の前には 紺色のビジネススーツようなものを着ている白髪をオールバックにして真四角のレンズの眼鏡をかけた男性が一人立っていた
その人にミレーユさんが
「ラング! 久しぶりね! 今日は急にでごめんね?」
とにこやかに手を振りながら ラングと呼ばれた人に小走りで近づいていった
するとラングさんは
「いえ ミレーユさんからの用件は最優先ですのでお気になさらず」
と笑顔で深々と一礼しながら答えた
それに対して
「もう 相変わらずねぇ」
とミレーユさんは苦笑しながら答えた後
「ラング? 一応改めて紹介するわ! 娘のコルアと こっちがエヴァンスの娘のシュリ
それから 娘と『今のところはただの』パーティーメンバーのコウさんよ」
と僕たちを紹介すると コルアは
「なによ! いまのところはってのは!!」
と顔を真っ赤にしてミレーユさんに怒鳴りシュリさんは クスクスわらっていた
そんな中ラングさんは
「コルアちゃん 大きくなられましたね! それにシュリさんはお母様のエヴァンスさんによく似ていらっしゃる」
と笑顔で二人に挨拶した後 目つきを キッ! と鋭くし 眼鏡の淵を人差し指と親指でクイっとあげながら僕を下から上まで品定めをするようにみながら
「はじめまして ここで小さいながら商会を細々と営んでいるラングと申します」
と一応挨拶をしてくれたので
「ご丁寧にどうもありがとうございます 僕は冒険者をやっているコウといいます
訳あってコルアさんやミレーユさんにお世話になっています よろしくお願いします」
と一礼するとラングさんが驚いたような顔をした後 ミレーユさんのほうを振り向き
「お世話になっているとは!? まさか ご一緒にお住まいで!?」
と少し取り乱したかのように早口でまくし立てる様にミレーユさんに質問すると
ミレーユさんは 笑顔で
「えぇ そうよ! 彼には色々助けられちゃってね どっちが助けてもらってるかわからないわ」
と答えると
「と・・・とりあえず物件をみてもらいがてら中で詳しくお話を聞かせてください」
と額の汗をハンカチで吹きながらいい 建物のドアのカギをあけて
「一応 最低限の修繕と掃除は定期的にしておりますので どうぞ中をご確認ください」
と僕たちを中に招き入れてくれた
僕たちはそれぞれ礼をいいながら 建物の中に入ると
「「「おおぉ~!!」」」
そこには一階すべてがワンフロア という感じでものすごく広々した空間にカウンターのようなものが
入口のまっすぐ突き当りと左奥に広がっている広場の様な1階の奥に1つ設置してあり
僕 コルア シュリさんはその光景をみて 感嘆の声をあげて周りを見渡した
「ね? いい物件でしょ?」
と僕ら3人をクスクス笑いミレーユさんが話しかけてきて
僕が はい と頷くと ラングさんが
「この階はこの手前のカウンターが宿の受付で左奥に見えるあのカウンターの奥が大きめのキッチンとなっておりここは ロビーと食堂を兼任できるようになっております」
と淡々と説明してくれた
それをきき
「広いし食堂とロビーの仕切りを自分たちで決めれるのは素敵ね」
とシュリさんがいい コルアも うんうん と満足げに頷きそれをみたラングさんが嬉しそうにしていた
そして少し気をよくしたのかラングさんが
「客室は2階と3階になります 2階はシングル 3階はダブルとツインの部屋となっております 階段はこちらです どうぞ」
と皆を案内してくれた
2階につくとラングさんが一番手前の部屋を鍵であけ
「2階はすべて同じ広さの部屋になっております」
と客室の1室をみせてくれた
部屋はシングルベッドが壁際に1つあり窓際に机と椅子が1脚 そして備え付けのクローゼットがあった
なんというか・・・・昔ながらのビジネスホテル的な印象をもちながら部屋を見ていると
「奥の扉の向こうに狭いですが水浴び場とトイレが1部屋に1室づつ設置しております」
とラングさんがベッドと反対側の壁についているドアを開け中をみせてくれた
「一部屋に1つづつトイレと水浴び場があるのはいいですね!」
とシュリさんが笑顔で言い
「部屋の鍵もしっかりしてるみたいだし女性客には嬉しいかもね」
とコルアも納得していた
そして皆が部屋を出ると再び鍵をしめたラングさんが
「では3階へご案内いたします」
と僕たちを3階に案内してくれた
そして着くと
「3階は15部屋ありますがツインが8部屋 ダブルが7部屋となっております 部屋の広さはどちらも同じで配置もシングルと同じとなっております」
とラングさんが説明し
「まずはツインの部屋です」
とツインの部屋をみせてくれたがシングルより二回りほど広いゆったりとした部屋にベッドが2つと
机の代わりに小さいテーブルが1つと椅子が2脚置かれている部屋だった
そして次にダブルの部屋をみせてもらったが ベッドが2つかダブルサイズ1つかの違いだけだった
部屋を見終わったあと1階にもどり入り口付近のカウンターの前までくると
「こちらのカウンターの奥が従業員の方々の居住スペースになっております」
とラングさんがいい カウンターの奥を案内してくれると カウンターの奥のすぐに小部屋があり
「ここが宿屋の事務所となります 次に右側ですが」
といい左右の壁に設置してあるドアの右側をあけると10帖はありそうな広い部屋があり
「こちらは洗濯室と従業員の水浴び場も兼ねた部屋となっております 奥の扉をあけると中庭につながっておりますので天気のいい日は外に洗濯物を干して頂けやすいと思います」
と説明してくれた
そして事務室に戻り左側のドアをあけながらラングさんが
「こちらが従業員の方々の生活スペースとなります」
といい見せてくれると広々としたリビングがあり奥のほうには階段もみえた そして少し狭いながらも
キッチンもちゃんと設置してありリビングには中庭がみえる大きい窓があった
「おぉー! 広くて素敵なリビングですね!」
とコルアがラングさんに笑顔でいい
「2階もあるんですか?」
とシュリさんが興味津々としてラングさんに聞いていた
「2階と3階がございましてどちらも個室があります そして3階からは屋根裏の小部屋と屋上にでることができます」
とラングさんが説明すると二人は顔を見合わせた後笑顔で
「「みてきます!!」」
といい走り出した
二人の背中を見送った僕とミレーユさんとラングさんだったが
「コウさんもみてこなくていいんですか?」
というミレーユさんの言葉に僕は
「いや 先ほどからラングさんが僕のことの説明を待っているようだったので・・・」
というとミレーユさんがラングさんの顔をみたあとクスクス笑いながら
「あの子たちがいない間に座って話しましょうか」
といい3人でリビングにあったソファーに腰掛け話し始めた
話の内容は まず僕がコルアたちとどうであったのかと言う話をし その後 話を引き継ぐように
僕たちが一緒に住んだ経緯とどのような生活を送っていたかという話をミレーユさんがした
そして話を一通り聞いたラングさんが
「そうか・・・・女性二人との生活と言う面では未だ不安を持つが君の不憫な身の上を聞く限り
致し方ないな」
と ふぅ と短いため息をついたあとそういい そして
「それに君が最近 街の方々が話していた 奇特な冒険者 だということならば信頼せざる負えない部分もある・・・・が!・・・・お二人になにかしたときはそれ相応の覚悟を持ってくれたまえ」
と眼鏡を光らせて言ってきたので
「あの 実はもうすぐ冒険者ランクがあがるようで あがったら一人暮らしをはじめようとおもってたんです」
と僕がいうとラングさんが え? と少し驚いた顔をしたあとミレーユさんのほうをみると
「えぇ それでね? せっかく家族のようになったのにさみしいことをいうから前倒し的にこの物件を買おうかなとおもったのよ」
と笑顔でミレーユさんがラングさんに説明すると ラングさんはあからさまに力が抜けたように はぁ~ と大きいため息をついた
それをみてミレーユさんが
「それでね? 中庭の奥の小屋を改装してコウさんの一人暮らしの家にしようかなと思っているのよ」
というとラングさんは
「あそこは 馬小屋と馬車を預かるものが世話の間 休憩する場所ですよ?」
というとミレーユさんが
「じつは私だけでは馬の世話や馬車の保管はできないから マイセンさんに委託してあるの」
というとラングさんが驚いて
「マイセンにですかっ!?」
と聞きなおしミレーユさんが笑顔で
「えぇ この裏にあるマイセンさんの馬車屋さんで預かってもらえるようになっているのよ」
と答えた
そうしていると部屋や屋上を堪能してきたであろう二人が弾む声で会話しながら階段をおりてきて
「お母さん! ここにしよう!!」
「ギルドからの距離も今までと大差ありませんし私もここでいいかと思います!!」
とコルアとシュリさんがいうと
「そうね! じゃぁ ラング ここ買うわ!」
とミレーユさんが笑顔でラングさんにいい ラングさんが ありがとうございます と礼をし
「ではこのあと売買契約のほうを私の店で行いましょう」
といい立ち上がったので
「ちょ! ちょっとまってください!! 僕はどうしたら?」
と話をふると ラングさんが 何を言ってるんだ君は という顔をした後
「先ほど 中庭の休憩所を改築して住むという話にきまったであろう?」
とため息交じりにいったので
「え? あれ決定事項なんですかっ!?」
と驚きながら聞くと
「君は女性3名でこの広い敷地に住めというのかね? ここは比較的治安はいいほうだが宿屋をやるとするとどのような客がくるかもしれない それなのに君は 受けた恩もわすれ・・・」
「わかりました 住みます」
と話の内容を折り いたたまれなくなった僕はそういった
するとミレーユさんが笑顔で
「たすかるわ コウさん!」
と笑顔でいい なんだか すべてミレーユさんの手のひらで転がされた気がしたがとりあえず
中庭から自由に外にでれるので あらたな拠点ができてよかったと思った
そしてミレーユさんとラングさんが契約をしにいき 僕たちはそれぞれの家にいき荷物の整理をすることにした