驚きと新たな進化
第一章 一応これで終わりです
意を決し ベヒモスにかぶりつき 力の限り血を吸っているが不思議と満腹にはならずいつまでも吸い続けていれた
俺が血を吸っている途中なんどもベヒモスから フグッ グゥ などいう苦悶に耐える声が聞こえ何度も
口を離そうと思ったが それはベヒモスの覚悟と誇りを汚す行為のようで俺はやめることをしなかった
どれくらい吸い続けていたのかわからないが俺は自分の中で色々と葛藤しながら一心不乱にベヒモスの血をすすっていた
すると一瞬ベヒモスの身体が ブルっと 震えたと思ったらその後一気にその体の熱がなくなっていった
俺が我に返りベヒモスの様子をうかがおうとし口を離そうかなと思ったとき
「フングゥ!!??」
突然口に大玉の飴玉より少し大きな球体が飛び込んできた
前にもこんなことあったが 心の準備のない状態でいきなり飛び込んでくるこの球体にはきっと一生慣れることはないだろうがそんなことを思う暇もないほど 焦り 渾身の力で血を吸っていたそのままの勢いでその球体が喉に 転がり込んできて のどに詰まりそうになり窒息しそうになりながらも ウグウグ いいながら必死に飲み込んだ
するとベヒモスの身体から淡い光の粒子みたいなものがどんどん出てきて 俺は苦しさと驚きでベヒモスから口を離し その場にへたり込んでその様子をただ茫然と眺めた
どんどん光の粒子が増えていき その粒子は上に上にと登っていき空気と混ざるかのように消えていく
ある意味 真っ暗なこの部屋で淡い光を放ち消えていく粒子は幻想的でとても綺麗だった
それに驚くのも忘れ見惚れていると光の粒子の数が今度はどんどん減っていき しまいにすべて消えてしまった
また暗くなった部屋で俺はベヒモスに目線を移すとベヒモスの身体が段々と透き通って消えていくところだった
俺は
『ベヒモス!!?』
と心の中で声をかけたがベヒモスからの返事はなく あれほど巨大だったベヒモスはあっというまに
透けて消えて行ってしまった
俺はしばらく茫然とそのベヒモスが消えた場所を眺めているとそこになにかあるのを見つけた
そのなにかがある場所に近寄りみてみると
少し大きな宝箱とその横には俺の頭より少し大きな水晶のようなものが真っ二つに割れて落ちていた
俺はこの箱と割れた球をなんだろうと不思議に思いながら手に取ろうとした瞬間
「ぐっ!!! ガハァァァァ!!!」
突然全身を焼かれるような痛みが襲い 息もできないくらい苦しく 俺は立っていられずその場に横たわり痛みに耐えて悶えた
どんなに我慢しても痛みがなくなることはなく むしろ体中の血管が破裂しそうな痛みと全身を針で刺されまくってる痛み そして未だ体の中から全身を焼かれるような熱さに地面を転がることもできず
ただただ倒れたまま悶え苦しんでいた
すると今度は骨が体の中で爆ぜるような痛みも襲い掛かってきて俺はとうとう死を覚悟し意識を失った
ぶるぶるぶる
少々肌寒く小さく身震いをし目が覚めるとそこは日の光がわずかに指す 木々や長めの草がうっそうと茂っている森の中のようだった
俺はそこに横たわっていて 先ほどまでの今まで経験したことがない もしかしたら魔神様のところで一度死んだ時よりも激しい痛みが 噓のようになくなり むしろ体も意識もすっきりしたような感覚すらあるなか 自分の目の前に右手を持ってきて 見てみるとその手をみて驚いた
俺の右手は 青白い肌でまさに人のそれになっていた 若干 生気が感じられないが完全なる人間の手が目の前にあった
俺はそれを信じられず なんども握っては開きを繰り返していたがどうやら本当に俺の右手のようだった
俺はそれを再確認し 今度は全身に力を入れ思い切って立ち上がり今度は体を自分の目でみれるすべての範囲を確認した
そして確認をした結果
「人間に戻ってる・・・・・」
とつぶやき それを聞き さらに驚いた
そう!
人間の言葉でしゃべれたのだ!!!
俺はベヒモスを喰らい 人間へと進化したのだ!!!
それを実感すると
俺は手を合わせ空にベヒモスに感謝の祈りをささげた
そして改めて自分の身体を触りながら確認してみると
せっかく装備していた腰蓑はなくなっていて現在の俺は再び一糸まとわぬ生まれたての姿だった
そして左手の甲には十字架のような刻印が刻まれていて身に着けていた呪いのブレスレットがなくなっていた
そして俺の足元のすぐ脇には ベヒモスが消えた後にあった宝箱と割れた水晶のような球が落ちていた
俺はまずその宝箱を恐る恐るあけてみると
「おぉ・・・・ベヒモス・・・・なにからなにまで・・・本当にありがとう・・・・」
宝箱の中には
黒いブーツ 黒っぽい灰色のズボン 赤いベルト 白い長そでのワイシャツのような袖付きの服に真黒なフード付きの長めにできた外套 そして2つの金色でそれぞれに赤と黒の宝石があしらわれた指輪 黒に金色の装飾が入った鞘に収まった細長い剣と直径30㎝を超える大きな魔石 最後におびただしい数の金貨がパンパンに入った革製の大きな袋2つが入っていた
その中身を確認して上記の言葉が自然と口からでてきたのだった
俺はその宝箱の中身を装備した 欲を言えばパンツと靴下 それに肌着の様なものがほしかったが
とりあえず街にいって買うことにした
それと不思議なことに ブーツは履いた時にはガフガフで大きかったのに履くと足にジャストフィットした
指輪も付けた指に合うサイズに勝手になった
そして最後に割れた水晶の様な球を拾おうと左手でそれ触れると 左手の甲に刻まれた十字架のような刻印が光 手のひらがその球を吸収するように手の中に消した
俺はその光景に本日何度目かの驚きをし左手の手のひらを凝視しながら何度も握っては開きを繰り返した
結局原因もわからず何が起こったのかえさえわからなかったのであきらめて
とりあえず俺がいたダンジョンがどうなったのかあたりを見渡しても入口さえ探せず ここがどこかもわからず途方に暮れた・・・・・が ふと我に返り とりあえず自分が何になったのか 本当に人間になったのかを確認するため俺はステータスをみることにした
〇名前 コウ(元 麻生 甲太郎)
〇年齢 0
〇種族 不死族 下級ヴァンパイア(進化希少種)
〇職種 無職 (野生)
〇LV128
〇HP 3800/3800
〇MP 6500/6500
【スキル】
吸血LV10・吸魂LV10・夜目LV10・飛翔LV10・音魔法LV10・毒耐性(大)・麻痺耐性(大)
火魔法(上級)・幻影魔法(固有:上級)・闇魔法(上級)・血魔法(上級)・空間魔法LV10
瞑想LV5・無音歩行LV10・隠蔽LV5・剣術LV6・魔眼LV8・日光歩行LV10
【称号】
魔神の憐み・巻き込まれし者・器用貧乏・貶められし者・闇の十字架を継し者・核破壊者
元異世界人・魔族転生・希少種・進化種・スライムキラー・格上キラー・魂捕食者・急成長
・
・・
・・・
「に・・・人間じゃねぇ!!!!」
ステータスをみて自分が下級のヴァンパイアに進化していて 先ほど人間になったと思い込んでいた反動で両手と両膝を地面につけうなだれながらつい大声で叫んでしまった
すると少し離れた場所から
「おい!? 今の声聞こえたか?」
「あぁ! おぉーーーーい! 誰かいるのかぁーーー!!?」
という声が聞こえ その声はこちらにまっすぐ向かってきているようだった
俺は立ち上がり焦って外套のフードを被ると それと同時に 長い草をかき分けて3人の人間がこちらを
発見し駆け寄ってきた
「おい! あんた大丈夫か?」
と先頭で草をかき分けてきた 金髪に碧眼のごっつい大男が俺に声をかけてきた
そしてそのあとを追ってきた くりくりと癖の付いた金髪にグリーンの瞳で細身の男が
「君もダンジョン内から飛ばされてきたのかい?」
と続けざまに声をかけてきた
最後に数m遅れてきた 茶色の髪でふわっとしたボブカットで瞳の色が赤い 背の小さな女の子が
「怪我はありませんか?」
と心配そうな顔で俺の安否を確認してきたので俺はそれぞれに
「少し気を失ってたけど運よく怪我はありません どうやらお三方も私と同じダンジョンにいたようですが・・・・どうなってここに?」
と3人に聞くと代表して 大男が
「やっぱ俺らと同じでダンジョンにいたのか」
とつぶやき ダンジョン内でのことを教えてくれた
どうやらダンジョンに魔力を送っていたベヒモスが消えたことによりダンジョンがなくなってしまい
内部にいた人間は急にダンジョンが揺れだし壁や床が光ったと思ったら 気を失い 気づいたら
ダンジョンの入口があった場所の近くに仲間とともに倒れていたそうだ
話を聞きおわると 突然思いだしたかのように
「そういやまだ名乗ってなかったな! 俺は ガストン こっちの細っこいのがザイル
んでこの ちびっこが コルア だ! こいつらとはチームを組んでてアルゼンの街で冒険者をやってるこう見えてもCランクのチームなんだぜ? んで? お前は?」
と聞いてきた
話の途中 紹介されたザイルは 細っこいってなんだよ? と苦笑しながら コルアは頬をパンパンに膨らませ 筋肉しか能のない筋肉ダルマに言われたくない! と怒鳴っていたが・・・・・
「私の名前はコウと言います 実は・・・先ほどからなぜ自分がダンジョンにいたのか・・・・どこの町にいたのか・・・・思いだせないんです・・・・覚えているのは・・・先ほどガストンさんがおっしゃった通りダンジョンが急に揺れた場面だけ・・・正直さきほど名のなった名前もふと思い出しただけで本当に自分の名前なのかも・・・わからないんです・・・・」
と3人のやり取りをみながら必死に考えた言い訳をいうと
「まじか・・・・」
とガストンが絶句し
「・・・記憶喪失ってやつじゃないのか?」
とザイルが顔を引きつらせいい
「そんな! じゃぁ・・・なにも思いだせないんですか!?」
と驚愕の顔をしたコルアが聞いてきたので 俺は 深刻そうに 頷くと
「と・・・とりあえずアルゼンに帰ろうぜ? コウって言ったよな? とりあえずお前も俺たちと一緒にこいよ!?」
とガストンが言ってきたので俺は はい お願いします と礼をいった
すると
「んー身なりもいいし礼儀も正しいからひょっとしたら どこかの商会の息子とか 下手したら貴族だったのかもしれないね」
とザイルが顎に手を当てながらそうつぶやき
「うんうん! フートであまり顔が見えないけど 筋肉ダルマと癖っ毛もやし よりずっと素敵だよ!」
とにこやかにコルアがいった
2人は おい! とツッコんだがコルアは俺の手を握り
「大丈夫! 私たちが街に連れて行ってあげるし ギルドに相談してみよう? それでも行くとこなかったら私が面倒見てあげるよ!」
と笑顔で言ってきたので コルアさん お世話になります と礼をするとコルアは顔を赤くし
いいのよ! いこう? と俺の手を笑顔でひっぱり
ほら!さっさと行くよ! 筋肉ダルマ!もやしっ子! と2人をせっついた
俺は苦笑しながら3人と一緒にアルゼンという街へ向かった。