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ネットの陰謀

 そんな風に考えていた時期が僕にもありました。

 部室にいて、あまりやる事が無ければ真面目に調査もしてみようかと考えていたが、家に帰ってみれば、溜まっているアニメもあるし、ウォーホライゾンも見直している。

 そして翌日に体調を崩していた比奈森さんが、登校してくれば僕の意識は、監視システムの有意性などと堅苦しい議題は頭から吹き飛んでいた。


 授業中も窓際に座る彼女が気になって、チラチラと視線を送ると偶に目が合って、すぐさま逸らす。

 思春期の中学生かと突っ込まれるかもしれないが、そんなものは経験がなければ成長もしない。

 どうしたって意識せずにはいられないのだ。


 とはいえ、休み時間に話しかけるなんてのはもってのほか。近づく事すらはばかられる。

 当然、昼食もアニメを見ながら1人で食べて終わってしまう。

 結局は放課後を待つしか無いのだった。




 待ちわびた放課後。

 ちらりと視線を送ると比奈森さんもこちらを見ていた。僕は一つ頷くと、先に部室へと向かう。

 教室内で波風を立てるのは得策ではない。

 というか、実際の所は今後も僕と話してくれるかなんて分からない。

 後ろを振り返り確認したいところだが、廊下で振り返り、振り返りしながら進むとか、不審者だ。

 比奈森さんにがっついていると思われて嫌われる可能性すらある。

 階段を上る曲がり角でちらりと見るだけでは、その姿を見ることはできなかった。



 部室は相変わらずの熱気で、僕は窓を開けて、扉を開けたまま固定するドアストッパーを準備する。

 扉の前で深呼吸。ちょっと髪を手櫛で整えてから、扉を開いた。


「おお、同志よ。今日もお勤めご苦労」

「高……島」

「ん、どうした。鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をして。水谷か渡辺とでも約束してたのか?」

「い、いや、高島が2日連続で部室に顔を出すとか、珍しいなと思ってね」

「何、昨日の一件を自分なりに考査してみてな。西藤に伝えておこうと思ってな」

「昨日……の?」

「混信メールの件に決まっておろう。ただ時間は無いから、これを渡しておく」

 そう言って取り出したのは、プリントアウトした紙束。10枚ほどあるだろうか。

 昨日話していたエシュロンの事や、情報流出、振り込め詐欺といった文言が並んでいる。


「ネットからの情報漏えいは、現代社会の重要な問題だ。電子情報研究会としては、これらの問題を精査するのが大事だと思うのだが、どうかね?」

「は、はぁ……」

 昨日僕が考えた事を、高島も考えていたみたいだ。


「学祭は秋だが、前もって準備するのも良かろう。同志の意見もまとめておいてくれ。それでは、またな」

「え、あ、ああ」

 今日はこれを渡しに来ただけらしい。毎日忙しい奴だな。まあ、何をしてるかは聞かないほうがよさそうだが。



 渡された資料をパラパラとめくっていると、控えめなノックが聞こえて振り返る。

 そこには比奈森さんがやってきていた。


「さっきの方は……?」

「うちの会長。同い年だけどね」

「部室に来るのは迷惑……かな」

「いやいや、ほとんど1人だし。会長なんかは偶に来るけど、すぐ帰っちゃうしね」

「そう……なんだ。普段は何をしてるの?」

「明確にコレってのは無いんだけどね。ネットで流行ってるものを確認したり、調べものしたり」

「ふぅん……」

 僕が見ていた資料にも興味があるようだった。


「エシュロンって傍受システムだよね。多国間で情報共有しながら、犯罪組織なんかを捜査してる」

「詳しいね。少し前までは都市伝説扱いだったけど、今の情報処理技術をもってすれば、実現可能らしい」

「毎日億単位のメールを精査してるとか。どうなってるのかな」

「スパコンでぶん回してるんだろうね」

「今期の電脳使徒って見てる?」

「え、ん〜、見てないかな」

「ちょっと女子向けの絵なんだけどね。テロ対策ユニットの話で、ネットの中にダイブして、クラッキングしながら情報を集めてく感じでね」

 比奈森さんのスイッチが入ったようだ。どうやらサイバー犯罪モノのアニメを見ているらしい。

 ネタ的にもタイムリーなので、たっぷりと話を聞かせてもらった。

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