会長の見解
「メールの混信?」
僕はスマホに届く混信メールの事を高島に話した。一昨日から届き始め、今日も数件のメールが届いている。
「なるほど、電情研向きの事件じゃないか。是非とも見せてくれたまえ」
乗り気な高島にスマホを渡すと、早速メールを確認する。
といって情報は限られているし、新たに分かることは無いだろう。
「ちょっと転送させてもらうぞ」
「ん、ああ……」
高島は自分のスマホへとメールを転送する。そして、僕のスマホは返してくれた。
「メールというのは、文章だけを送っている訳じゃない」
「件名や宛名とかの事か?」
「そうだ。他には送信時間や、何を使ってメールを作成したかといった情報まで付加されていることがある」
そういいながら、自分のスマホへと転送したメールを、文章を編集したりするテキストツールに読み込ませる。
「そしてこのメールは引用のないショートメール。多分、LlNE系のメッセージアプリだろう」
「な、なるほど」
高島の説明に頷く。伊達に電情研の会長を務めているわけじゃなさそうだ。
「ウチの学校は、タブレットなどを授業で使用する一環で、wifiが開放されている。おかげで学内にいる間は、通信速度が早い上に通信容量がかからないので、ほとんどの生徒はスマホでもwifiを利用している」
「入学の時に登録方法を教わったからな」
「さて西藤、君もエシュロンは知っているな?」
「確かアメリカが導入している電波傍受システム……だったか」
「うむ。以前は都市伝説として語られる程度だったが、昨今ではその存在はかなり認知されている」
メールなどでテロなどを計画する内容を書くと、監視されるとか陰謀論的に語られることの方が多い。
実際、日々飛び交うメールの量は莫大で、その全てを検閲しているとなるとかなりの情報処理能力が必要だ。
「でもそれが何の関係が?」
「エシュロンと同じように、学内のメールもチェックされているとしたらどうだ?」
「……は?」
荒唐無稽な展開に、僕の思考は混乱する。
「もちろん、逐一内容をチェックするような事はないだろう。エシュロンがテロなどにワードを絞るように、イジメや援交などといった学校にとって都合の悪いワードを自動検出しているとしたら?」
「wifiを通じて? そんな事ができるのか?」
「可能性はあるって話だ」
「それと混信との繋がりは?」
「検閲してから内容をストックするシステムで不具合があり、学校のサーバーではなく、お前のスマホに送られたのではないか?」
「そ、そんな事が! ……いや、ないだろ」
「まあ、無いだろうな。単なる陰謀論だよ。メールの内容も検閲にかかるようなモノではないしな」
なんだよそれ。
「ま、メールの混信自体は実害は無いし、こっちは被害者だ。メンテか何かで解消されるのを待つしかないだろうな」
「結局それしかないか」
「なかなかいい暇つぶしができたよ。それではまた会おう、同志よ」
何の解決もないまま、高島は去っていった。部活の終了時間まではまだ時間はあるので、自分の用事の暇つぶしに来ただけのようだ。
「なんだったんだ、結局」
色々と話した割には実りがなかったような……でも学校がメールを検閲ねぇ。実際にそんな事をしたら、マスコミの餌食になりそうだな。
子供の人権無視とか、プライバシーの侵害とか。
それでイジメや不良行為などを見つけられるとしたら、どっちが世のためにいいんだろうか。
例えば防犯カメラ。導入当時は監視社会の始まり。国民の自由が奪われると叫んでいた人権団体があったらしいが、今では犯罪捜査の基本として重宝され、早期逮捕や犯罪抑止に役立っている。
メールを検索フィルターでNGワードを検知するシステムがあれば、深刻な事態になる前に抑止が働かないだろうか。
そんな風に考えられるのは、普段からあまりメールを使わないからかなぁ。
実際、誰かに見られるかもと思うと、迂闊なことは書けないし、窮屈にもなるだろう。
それとも昨今のSNSで犯罪暴露してる連中みたいに、思ったほどは意識せずにいるんだろうか。
何というかいかにも電情研向けの議題のようにも思える。電子情報が社会に与える影響と、その監視システムとか。
学祭に向けて資料でも作っていこうか。
僕は久しぶりに部員としてのやる気が出てきていた。




