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メールに記された約束

 昼休み、クラスの皆には気づかれないように教室を抜け出し中庭へと向かう。

 といって、僕に気を使う人なんていないけど。

 昼になっても空はどんよりと曇ったままで、雨は降っていないが湿気が高く蒸し暑い。

 紫陽花の植え込みに囲まれた中庭には、いくつかのベンチがあって、昼食を食べに来たであろう生徒の姿もちらほらと見える。


「意外とベンチが隠れるな」

 人の胸ほどの高さがある植え込みは、ベンチに座った人を隠してしまっていた。

 そしてそんな人目を隠せるベンチでは、リア充達が一緒に過ごしていたりして、1人フラフラと歩く僕には居心地の悪い空間になっていた。



「動き回るより、ベンチに座って観察した方がいいか」

 空いてる席を見つけて、昼食を開始。何気ない素振りで行き交う人々を眺めていく。

 やってくるのはほぼ男女のカップル。視線が合うと男子の方から睨まれるので、足元を眺める事になった。

 上履きの色で学年はわかる。まずは僕と同じ2年の生徒かを靴で判断する事にした。

 そして、学年が絞れたら少し視線を上げて、ズボンかどうかを確認。また視線を落とす。


 昼食を食べ終えるとスマホに入れたアニメ『ウォーホライゾン』を再生しながら、周囲にも気を配る。

 ウォーホライゾンは、SFロボットの戦争モノで、アクションシーンも多い。ストーリーはごくシンプルに、2つの勢力が互いを攻撃しあっていて、その中でヒューマンドラマが展開するモノだ。

 主人公は、付き合う女性が次々と敵の手で殺されていくという悲劇に見舞われ、仇を討つべく戦場に駆り出されていくという、ちょっと不毛な展開。

 賛否の分かれる部分でもある。

 比奈森さんは、その辺の切なさがいいらしい。



 CMを除く20分ほどを見終わる頃には、昼休みも終わろうとしていた。

 結局、女子ばかりでくるクラスメイトは見つけられなかった。僕の視界に入らない位置にいたのか、見落としてしまったのか。

 ふとメールの着信を感じて、スマホを確認。


『ありがと、それで様子を見てみるね』


 どうやら相談は無事に終わってしまったらしい。いったい何処にいたんだ?

 ん?


『そっか、じゃあそっちで。あんがと』


 最初のメールの後でそんな返信が。場所は中庭じゃなかったのか!?

 てゆーか、それくらい確認しろよ僕。

 片側からのメールで、引用もついてないので、相手の反応は想像するしか無いのも、難しいところだ。

 まあ、アニメを見ながら昼食という日課を過ごしただけかな。


 僕は盛大な空振りに肩を落としながら教室へと戻る。午後の授業も気が抜けたまま過ごした。




 放課後、部室へと向かうと先客がいた。電情研の部員の1人、高島だった。


「おお、同志よ。ちゃんと出席しておるようだな」

「高島くんこそどうしたの、珍しい」

「我輩とて部員。用事がなければ顔を出す。普段は忙しくて時間がとれぬだけだ」

 用事と言っても、アニメグッズを買いにいったり、ゲームをしたりだろうけどな。

 彼が来るんだったら、比奈森さんはいなくて良かったかもしれない。

 ウォーホライゾンについては聞いたことは無いが、甘々なハーレム系が好きな彼のことだ、ヒロインが次々に死ぬウォーホライゾンは、酷評するタイプに見える。



「で、変わった事はないかね?」

「え……」

 高島は僕と同じ2年だが、電情研の会長。面倒な生徒会との折衝などをやってくれている分、出席が悪いのも文句は言えない。

 そして、変わったことと言われて最初に思い浮かんだのは、比奈森さんの事だ。

 男ばかり、先輩もおらず自由な部に、女子が訪ねてきたとなれば、それは事件と言える。

 しかし、今はまだ打ち明ける気にはなれなかった。

 高島は言動こそオタクっぽく変だが、容姿はそんなに悪くない。比奈森さんの気持ちがなびくのは、少し、いやかなり悔しかった。


「ふむ、何かあるようだね。会長たる我輩が聞いてやろうではないか」

 そして妙に鋭い所も持ち合わせている。このまま誤魔化すのは難しい。


「じ、実は……」

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