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また届くメール

「ん……これは?」

 見知らぬメールが届いているのに気づいたのは、明日の為の動画をコピーしようとした時だった。

 時刻は午後4時ごろ、放課後に送られていたようだ。

 内容としては、授業がだるかったとか、宿題面倒とか、気晴らしに駅前行こうとか、他愛のないものだ。

 差出人、宛先は、やはり数字の羅列。

 混信が続いているのか。

 少し気にはなったが、時間が解決してくれるだろう。僕は深く考えていなかった。



 1人になって考えるのは、比奈森さんの事だ。小柄で小動物を思わせる愛らしさ。

 必死になって身振り手振りを交えながら話す姿は、ハムスターがひまわりの種を頬張るのにも似ている。

 いわゆるオタクの特性である好きなジャンルになると、饒舌になってしまうを実践していた。

 我に返った時のギャップも可愛く思えて……。

 いやまて、まだ少し話しただけで何を舞い上がっている。

 とはいえ、趣味は同じ傾向で、第一印象は悪くないだろう。明日からも色々と話せるだろうと、期待するのはおかしくないはずだ。


 となると気を付けるべきは身だしなみか。制服の新しいシャツを準備して、風呂にもゆっくりと浸かる。

 鏡を見ながら鼻毛をチェックして、短めに整えておく。

 確か眉毛も整えた方がいいんだったか……でも、鏡を見ながらでも慣れぬ眉に手を出すのはどうなのか。

 変になって切りすぎてしまっては元も子もない。

 今日の所は止めておこう。


 などと予期せぬ異性の接近に浮かれてしまったとして、誰が責められようか。

 モテない男に全力を尽くす以外の選択肢などないのだ。




 翌日、喜び勇んで学校へと早くに到着。教室で一人一人登校してくるのを待って過ごす。

 しかし、朝のHRの時間になっても比奈森さんは姿を見せなかった。


「比奈森は風邪で休みだ。季節の変わり目で、体調を崩しやすい。皆も注意しろよ」

 担任のガタイのいい歴史教諭の言葉に、僕の気持ちはどん底に落ちてしまった。



 ブブブ、ブブブ。

 机に突っ伏して自らの浮かれっぷりに自己嫌悪に陥っていると、マナーモードにしてあったスマホが振動しているのに気づいた。

 比奈森さんからのメールか!?

 がばっと身体を起こして確認すると、例の混信メールだった。

 よく考えれば比奈森さんには、アドレスも教えていない。

 再びどよーんと自己嫌悪の闇が降りてくる。


『ちょっと相談したい事があるんだけど』


 少しドキリとして確認するが、宛先、差出人は例の数字で混信メールであるのは明らかだった。

 つまり、これは僕宛てのメールじゃない。

 その証拠にしばらくすると、更なるメールがやってくる。


『昼休みに中庭でいいかな?』


 中庭か。春から夏へと変わりゆく季節、今日も曇り空ですっきりとしない天気だが、寒くも暑過ぎもしない。

 紫陽花あじさいが植えられていて、それなりに景色のいい庭になっている。

 たまには外で昼食も悪くないか。

 別に覗きの趣味はないが、気にならないと言えば嘘になる。

 比奈森さんが休みなので、一緒に過ごす人もいない。まあ、比奈森さんが来てても、まだ一緒にお昼とはいかないだろうけど。

 何にせよ消沈していた意気を少し回復させて、午前中の授業を過ごすことができた。

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