プロローグ二
プロローグ二
地球では妖怪と人間が共存していた。
歴史を紐解くと古代より様々な妖怪が世界中で目撃されている。
日本でも数多くの妖怪が目撃されており、書物、あるいは伝聞により古くから伝わっている。妖怪を恐れ、遠ざける人々が大多数の中、積極的に関わりを持つ者も少なからずいた。
平安時代になると妖怪の加護を得てそれを戦力や時には権力に行使するもの達が現れた。その全世紀にいたのがかの「平清盛」である。清盛は多くの妖怪の加護を受け、宮中における絶対的権力者の地位を得たのであった。その姿はのちに「平家物語」において記されており、また、清盛は百鬼夜行の主として一族の繁栄に導いた。
盛者必衰とはよくいったもので、その後の平家の没落は歴史の教科書を見れば小学生でも知っているだろう。以降妖怪の加護をば得んと秘密裏に各地で激しい争いが繰り広げられた。しかし、それは決して歴史の表舞台には姿を現すことがなく、長きに渡り人類に認知されることはなかったのであった。
そして現代。
2045年から続いた第三次世界十年大戦は米軍とロシア軍によって使われた2度の核攻撃により2055年に勝者のいない終戦を迎えた。
戦争により疲弊した先進国の経済情勢は悪路を辿り、また、核兵器による甚大な被害から大量破壊兵器に対する撲滅運動が世界中を席巻した。
翌年、核兵器の放棄及び国際連合常任理事国間の戦争を禁止とする旨の東西協定が調印された。世界各国が軍備縮小に向かっていく中、世界の実権を長きに渡り裏側から握り続けていた種族が歴史の表舞台に現れたのだった。
それが「妖人」である。
妖人とは妖怪の加護を受けた人間のことをいい、その力は10人もいれば小国の軍事力にも匹敵するといわれている。
世界のバランスを保つために各国の妖術協会が政治・経済・軍部を裏側から操ってきたが、米露の対立から発展した第三次世界大戦を防ぐことのできなかったことからに各国(特にアメリカ)での妖人の支配力の低下が懸念された。
そのことに業を煮やした中華連邦妖術協会が2056年世界に自分達の存在・力を公表した。人民放送局で流されたその番組によってはじめて人類は妖人なるものの存在を認識することとなった。放送内容は至ってシンプルで中華連邦妖術協会が誇る妖人がデモンストレーションとばかりに生放送で山を文字通り消し去り、その力を見せつけたのであった。
放送された番組はインターネット上にアップされ瞬く間に10億回以上再生された。初めは半信半疑だった人々も翌日には主要各国で同じような発表があり、その存在を人々が信じるに達するまでそう長い時間は必要なかった。
核兵器の失った現代世界において、妖人の強さがそのまま国家間における軍事力指標となっている。国家単位で強力な妖人の育成・保護に注力されており、表舞台に立ってから妖人の特権はますます広がりをみせている。
日本においては一族毎に固有の妖怪をその加護に置いており現在7つの「妖雄七族」:通称ゼブンズ と呼ばれる有力な一族により各方面の実権を握っている。セブンズの入れ替わりは八咫烏が入って以来20年ほど無いが戦国時代などは毎年半数が入れ替わる等セブンズ以下の一族も大きな力を持っている。
現在偶然にもセンブンズは各地方ごとに散っており、八咫烏は北海道を本拠地としている。そしてここ東京には「龍族」の住まう屋敷がある。