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私の、確認テスト?

 


 円陣を組んで女子という女子を囲み、若干脅迫気味であるサッカー部の勧誘。それを僕も受けた。

 あー、面倒臭い。

 ということで、小さく身軽になった体を人と人の間に通してその場から逃げた。勝ち目がないこんな時こそ、逃げるが勝ちです。

 そんなこんなで、少々の心労があったけれど、無事に家に着きました。体育館での勧誘は五時までで、用事が済んだ生徒は随時帰ってよしということになっているので、僕は四時過ぎに学校を出て、今は四時四十分ぐらいの時刻。

 インターホンを鳴らすと、優也が出てくれた。学校からの距離的なこともあって、帰ってくるのが早かったようだ。

 喉が渇いたので、まずはリビングに入ると、ただいまよりも先に冷蔵庫を開けた。すると、ニュースを見ていた母が"おかえり"と言ったので、お茶を探しながら返事をした。

 そのあとは特に何もなく、部屋に戻って学校の持ち物を片付けたりしていると、晩ご飯の時間はあっという間にやってきた。

 今夜の食卓の話題は、友達は出来たのかとか、部活は何にするなどの、四月上旬の定番だった。

 まず、母は僕に質問した。

「優は学校どうなの?」

「話した人はいるけどまだ友達とは…。でも二日しか行ってないし、慌ただしかったから」

 そうなんです。まだ久米島としか話してないんです。

 えっ、中村先輩? あれは蚊帳の外です。

「それもそうね。優也は?」

 次は優也の番になった。

「三人」

 と、返答は素っ気なかった。何しろ食べるのに必死だもんね。あっ、今喉にお米詰まらせかけた。

「はぁ、なんであんたはそう、何というか…」

 素っ気ない?

「味気がないのかねぇ」

 ちっ、惜しい。

「ほっといてくれよ」

「本当に反抗期は面倒臭いねぇ。ところで部活はどうするの?」

 確かにそうですね。僕もそう思います。それにしても、こっちの優也は反抗期真っ盛りのようです。

「部活は水泳をやりたいと思ってる」

 僕は"素直"に答えた。

「もう野球部に紙出した」

 優也は"ぶっきら棒"に答えた。

 というのはさておき、優也は二日目にして仮入部をすっ飛ばして入部してきたという衝撃発言をかました。

「紙出したって、判子はどうしたの、必要でしょ?」

「持ってった」

 優也は特に悪びれる様子もなく、テーブルの真ん中に置かれたトンカツの一切れを口に運びながら言った。

「あんた、家の判子を持っていくってあり得ない」

「シャチハタだから問題ないだろ」

 優也はモグモグしながら言う。

「そういう問題じゃない!」

 優也の態度に、母の顔はいきなりおっかなくして荒く席を立つと、優也を無理やり立たせて廊下へと引きづり出していった。そして、優也は正座をさせられて、怒号混じりのお説教が始まった。

 廊下とリビングを仕切る扉は、淵を木で覆った磨りガラスになっているので、話している内容ははっきりとは聞こえてこないが、動作がぼやけているけれど確認できる。今日のこの光景は、個人的に面白かった。

 それにしても、優也が母を怒らせるようなことは滅多にしないのに、印鑑 (シャチハタだけれど)を持ち出すなんていかにも怒られそうなことをするなんて思わなかった。

 僕が女子として生まれてきたことになっているから、周りの環境も多少なりとも変わってくるということなのだろうか?

 僕は初めて、僕が周りに与える影響があることを知った。今までは、別にいなくたって特に変わらない、なんて思ったこともあったけれど、そんなことはなかった。


 五分後程経つと、母の逆鱗はひと段落したようで、優也は解放されてリビングに帰ってきた。顔はげっそりしていた。


 その十五分後、父が帰ってきた際にその話題が再び挙がり、今度は父に怒られたというのはここだけの話。




 翌朝、僕はあることを思い出した。それは家を出る間際だったので、ブツを急いで探し出してスクールバックに入れるのが精一杯だった。


「今日は課題の確認テストをします」

 本原先生がHRの終わり際にそう言った。高校生活三日目のイベントは春休み中に出されていた課題の確認テスト。

 まずいです。勉強してないんだけれど…。

 例によって課題は済ませてあった。しかし、内容はさっぱり覚えてない。

「篠塚さんは勉強した?」

 本原先生が教室から出ていくタイミングで久米島がそう聞いてきた。

「課題は終わってるけど…」

「なら大丈夫だね。俺なんかやってすらいないから放課後に答えを写さないといけないから面倒臭い」

「忘れてたの?」

「やろうとやろうと後回しにしたツケ」

 久米島は自分の行いを悔いるように天を仰いでいた。

 まぁ、大体の人がそのパターンだよね。

 僕はそう思った。

「篠塚さん、自信あるの?」

 上を向く久米島を眺めていると、後ろから肩をチョンと突かれてそう声を掛けられたので、僕はその方を向いた。

「えっと…」

「名前? 須永(すなが) 香織(かおり)

 声を掛けてくれたのは、出席番号十九番の須永さんだった。ちなみに、男の時には喋ったことがないので、顔も名前もすっかり忘れてた。というか覚えたことがない。

 我ながら酷いかもしれない…。

「自信はないなぁ。須永、さんは?」

「うちがそんな秀才に見える?」

「ええっと…」

 確かに見えないけれど、だからといって普通口に出しては言えないでしょ。

「固まったってことは見えないと言っているのと一緒」

 女の感、恐るべし。あっ、別にこれは普通か。

 僕の心中を見抜いた須永さんはそのまま続ける。

「怒ってないよ? 勉強嫌いだし気にしてないから」

「そう、なんだ…」

 僕は須永さんの対応の仕方がわからず、こんな感じの返事しか出来なかった。先刻は女友達を作ろうとか簡単に言っていたけれど、同性としての女友達はかなり面倒かもしれないと思った。

「課題は?」

 僕らの会話を見ていた久米島が横から話題を振った。

「途中でやめてそのまま忘れてた」

「おっ、仲間一人はっけ〜ん」

 能天気なテンションで久米島がハイタッチのモーションに入ると、須永さんもノリで答えてパチンと手を合わせた。そして、須永さんはそのままの流れで僕にも掌を向けてきた。

「あの…、課題はやってある、から…」

「ふーん、なーんだ」

「あはは…」

 須永さんの楽しそうな顔が元通りになって、僕は苦笑いしか出来なかった。

 僕は、嘘でもノリに乗ってやっておけばよかったと後悔した。

 これは自分でも悪いところの一つだと思う。あまり人に合わせてやるということが、何と言うか苦手な部類に入ってしまう。自分が納得出来ていないことに対しては渋ってしまう。それが他人からは、場の空気を読まずに抵抗を示しているように見えるらしく、その上挙げる意見もないのにただ嫌だと言っている人、というのが印象なんだと、僕は勝手に思っている。実際はどうかわからないけれど。

「テスト配るぞー」

 僕がネガティブシンキングしていると、チャイムと共に大量の紙を持った先生が戻ってきた。

「まずは数学一時間。その次に英語一時間。終わったら仮入部がある人以外は下校という流れだから」

 テストは数学と英語の二科目だけ。時刻は九時三十分になろうとしていた。


 あっ、休み時間にやろうとしてた見直ししてない………

今回は文量が少ないかもしれないですけれど、ネタ切れとかやる気がないとかではないんでご安心下さい。

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