第二話Apart
『そらを飛ぶ』。それは誰しも一度は夢視るのではないか。一度も視ないのは異常だ。人間じゃない。【空を飛ぶのが当たり前な私に言われても】だって・・・ごめんなさい。かわいい小鳥さん。・・・唐突で悪いけど、小鳥さんに質問。『そらを飛ぶ』ってどんな意味があると思う? 【自由を求める心】・・・うん、僕もそう思うよ。だけど、僕は『束縛のアンチテーゼ 』だと思う。・・・【同じやん】
だって・・・その通り。ただ、アンチテーゼを使いたかっただけで少しだけニュアンスが違うとか思ってないんだからね。真面目に答えるならば『見守る』かな。どこまでも続くそらからあなたを・・・みたいなね。なんで哲学者みたいなことをしてるかというと、現在進行形でそらを飛んでいるのさ。マジで。しかも地表までカウントダウン30秒前的な!! 断じてTUIRAKUなんかではない。絶対にだ。
ふぅ、こんな状態に至るまでの経緯でも思いだそうか。これがSOUTOUMAか・・・・・・・・・
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城に優るとも劣らない巨大な建造物が空に向かってそびえ立っていた。その身は黒く無骨であり、鈍い輝きを放っている。森は静かだった。
鉱石または金属に詳しい者がそれを見れば、卒倒するに違いない。『黒銀』。
『灰銀』の姉妹金属は自然界に存在することはなく遺跡、迷宮または人工的に入手するしかない。しかし、現代に古代技術の塊であるそれの製法は失われており、各国で研究者が現存している数少ない黒銀をもとに、製法を取り戻そうと長い間試行錯誤している。ちっとも成果は無いが・・・
灰銀は外界の魔力の波長に同期することで魔力をその身にまとわせ、強靱で軽くしなやかになる。いわば、魔力伝導性に優れる。それに対し黒銀は外界の魔力を保有し、それの波長を変換する。特有その波長と外界の魔力の波長が同期したとき溜め込んだ魔力を放出する。魔力を保有している間は強靱で重くしなやかになる。いわば、魔力保有、放出性に優れる。
特性、見た目の華麗さも相まって装飾品、武具、魔導具、建築などと用途が広い灰銀に対し黒銀は用途が狭い。軍事目的である。魔力を保有する限りオリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイト、ダマスカス鋼などに次ぐ金属として武具、千里を超える射程を持つ魔導砲、稼働し続ける魔導人形、飛空艇などの古代に存在していた兵器の数々。まさに夢の素材の一つである。
そんな黒銀がどうしようもない(くだらァァーー【悲鳴だよ】)計画に使われていたことを人々は知らなかった。