お・み・や・げ
何も思いつかない時はぶらぶら歩きまわるに限る。
何も思いつかないというか、やりたいことが多すぎて決まらないというのが正しいのだけどね。
先日草を刈ってもらったばかりの庭を歩く。
花壇の花や薬草だけ避けて刈っている。
良い仕事だ。
そうだ、私がもう一人の友にして同居人の彼女はどこだろう。
「ウロー!!」
ウロ、とは彼女の名だ。
隣の森の方からズドドド!!と凄まじい音が響いてくる。
どうやら森へ遊びに行っていたようだ。
「やあ。遊びを中断させて悪いね、ウロ嬢。」
「こふー、こふー。」
おや、いつもならシューシューと愛嬌を振りまいてくれるのだけど。
口に何かいれて転がしている。
美味しい獲物を捕れたのかな?
ウロ嬢とはこの場所を買ってからの付き合いだ。
研究中の『亜種竜属と竜、龍の鱗構造について』の協力者でもある。
ウロ嬢は吸血性肉食亜竜。
コモドドラゴンを大きくし、背中にはふっかふかの毛が生えている。
ゆうに5メートルはある巨体にも慣れたものさ。
ウロ嬢はよく森に行くから、誤って狩られないよう銀に光るごつい首輪をプレゼントさせてもらった。
そしてこの背に乗ってぶらつくのも楽しいもの。
今回もそのつもりだった。
ウロ嬢が一歩引き、頭を下げる。
口の中のお土産を出すようだ。
彼女はこうやってたまにお土産を取ってきてくれる、見上げた御嬢さんなのだ。
かぱぁ。と口が開かれ、彼女の唾液まみれのお土産が二つ転がり落ちる。
「………………………おお。」
いつものように喜ばず固まる私に、少ないならもう一狩行ってくるわ、といったように再び森に行ってしまったウロ嬢。
ゴメンな。ウロ嬢。でも少ないわけじゃないんだよ。
二つのお土産はぴくぴくと動いていて、まだ息があるようだ。
それがいいのか悪いのか。
お土産は人型だった。
サイズ的に子供であろう。
半透明の唾液にまみれすぎて何の種族かはわからない。
ここで疑問がひとつ。
ウロ嬢の行動範囲はこの森の中のみ。
ウロ嬢の性格上縄張りより外に行くことはまずない。
なら子供は森の中にいたことになる。
しかしこの森はお世辞にも安全とは言えず、子供が勝手に入ることは許されてない。
家が無事なのはひとえにウロ嬢の寝床だからである。
何故子供が、この森に?