四話
『落ち着いた?』
しばらくされるがままになっていると声をかけられる。何だかつっかえていたものが取れたようで、少しすっきりしたような気がする。
『もう大丈夫です。』
『そう……まあ何かあったら私を頼りなさい何でもするわ。』
『……ありがとうございます。』
抱きしめていた手を放し体を起こす。少しもったいないような……。
(いや何考えてんだ!相手は、自分の恩人だぞ!)
頭を振り、邪な考えを消す。心配そうにこちらを見る瞳に、大丈夫だとだけ伝える。
『なら良いけれど……そうね、まず自己紹介しましょうか。』
そうだ、まだ互いの名前も知らないままだった。
『では自分から、自分の名前は、安藤 充吾 安藤が苗字で充吾が名前です。17歳の高校生です。』
『私は、志乃姫 愛華ここ水風村の近くで活動する冒険者よ。ちなみに20歳。』
軽くウインクしながら告げられる。やっぱり年上だったか。しかし、聞き捨てならない言葉があった。
『さっそく質問なんですけど、冒険者ってなんですか。』
『ああ、あなたの世界にはなかったのね。』
愛華さんの話をまとめると――
①ギルドと呼ばれる、特定の国に属さない大規模な組織に所属するものの事で登録したら誰でもなれる
②ギルドは大きな町なら必ず支部があり、付近の住民や国から様々な依頼を受け所属した冒険者に依頼を紹介する。
③ギルドには誰でも所属できるが依頼でトラブルがあっても自己責任
という事らしい。この世界の住人は、ほとんどが近くのギルドに所属しているようだ。
『あなたは異界人だから登録する義務があるけど、ここの生活に慣れてからにしましょう。』
『分かりました。』
確かに、まず足場を固めないと何もできない。
『まずは、村長にあいさつに行きましょう。村でしばらく生活するから、許可を貰わないと。』
村長か、どんな人だろうなんとなく腰の曲がった老人を想像する。
『とにかく服を着替えましょう。そこの箪笥に、いくつか着替えがあるから適当に選んで。私も準備してくるから。』
と言い部屋を出ていく。自分も準備しようと箪笥に向かう。ふとなぜ、異世界なのに箪笥があるのかとも思ったがとにかく後で聞いてみようと思い箪笥を開けた。
村長の家に向かう道で箪笥について聞いてみた。
『この国を作った初代の皇王様も異世界の人だったらしいからもしかしたらあなたと似たような世界から来たのかもね。』
わからないけど、という言葉を聞きつつ思い出す。そういえば出されたお茶も日本茶とよく似ていたし少なくとも近い文化を持つ世界から来た可能性も十分あるだろう。
『着いたわ。ここが村長の家。』
今まで見てきた家と変わらないしいて言えば大きいぐらいの家があった。声が聞こえる。どうやら家にいるらしい。
『こんにちわ~愛華です。彼を連れてきました。』