二話
『父さん!!』
思わず声を上げる。父さんが大きなベットの上で横になっている。顔には白い布がかかっていて表情が読めない。
『大丈夫ですか?』
(そんな訳あるか!!)
怒鳴りたいのを我慢して大丈夫だとだけ答える。心配しているのか分からないが今は父さんがどうしてこうなったのかだけが頭を巡る。
少し話をしませんかという声に促され暗い部屋を出る。涙もでなかった。
ゆっくりと歩いて家に帰りながらその話を思い出す。
どうやら昼前、父さんは買い物に出たらしい。近くのスーパーに向かっていたが途中、怪しい男を見つけ不審に思い声をかけたところいきなり包丁のような刃物で刺されたようだと刑事の男が言った。周囲の住人の証言らしい。刺されながらも犯人を押さえつけ、警察が来るまで粘り男が捕まった後気絶し病院に運ばれたが間に合わなかった。
今後についての話はまた明日にしようと自分を気遣うような声にうなずき逃げるように病院を出た。もう空は暗くなりかけていて急ごうとも思ったがなんだか力が入らず歩きながら帰ろうと思った。
家に帰り電気をつけるとなんだか広く感じた。そして気づいた。
(自分は…………これから一人だ…………)
朝目覚まし代わりのカンカンという音もなくなるし、朝食も一人で食べるし何もかも一人になるだろう。
先ほどまで出なかった涙が出てきて止まらない。声もなくただ涙だけが溢れてくる。持っていたカバンを、床に落としベットに倒れこむ。ぐちゃぐちゃになった頭を抱えているとすぐに意識が遠くなる。
(つかれた……)
眠る寸前に思う。
(全部夢だったらいいのに……)
目が覚める。どうやらまた寝ていたようだ。
(また?)
違和感を持つがよく分からず、まずは朝食の準備をと思い起き上がろうとして気づく。
(ここは、どこだ?……そういえばさっきも)
どうやら昨日のことを思い出そうとして寝てしまったようだ。いまだ丸太小屋のような家の寝室で寝ている体を起こし周りを見る。
自分がいるベットは柔らかく今までの布団よりいいものに思える。窓際には、花が飾られその香りがそよ風に乗りこちらに運ばれてくる。いい香りだ。壁には、何かの絵が飾られてるがよく分からない。
――――すると突然――――
ガチャッ
(!!!!)
ドアが開き一人の女性が入ってきた。手にはコップが乗ったトレーを持ちこちらを見て驚いた顔になり、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
『よかったわ~起きてくれて~。』
やんわりとしたしゃべり方をしている。どうやら年上らしい。
『あの』
『大丈夫よ~とにかくこれを飲んでおちつくわ』