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一話

 まず最初に感じたのは疑問だった。

(ここはどこだ?)

 いつから自分が住んでいる家は、丸太を重ねて作られたような自然あふれる家になったのか。とにかく冷静に昨日のことを思い出してみようとまた目を閉じた。



 目覚まし代わりのカンカンという甲高い音で目が覚める。父が朝から仕事をしているようだ。とにかく朝食を準備しようと、布団から起き上がり顔を洗い台所へ向かう。

(きょうは味噌汁と卵焼きにしよう。)

 冷蔵庫の中身を思い出しながら朝食のメニューを決める。父さんは和食が好きで、朝は必ず和食にしている。いつものように手早く作り上げ、父さんに声をかけようと――

『おう充吾(じゅうご)めしできたか?』

 ひと段落ついたのか父さんが来た。父さんは家の一階の大半を工場にし、金属を加工する仕事をしている。すぐに席に着こうとするので止め毎日繰り返す質問をする。

『手は、洗った?』

『あー……今から洗うつもりだった。』

 急に方向転換し、洗面所へ向かう背を見てうそが下手だなと軽く笑いつつ席に着くと、父さんも少し遅れてに熊に例えられる大きな体を揺らし席に着いた。

『『いただきます。』』

 幸せそうに食べる父の顔を見つつ自分も箸を進める。まあまあの出来だろう。

『うまいなこの味噌汁。』

『母さん程じゃないよ。』

『十分だ……あいつも必ずうまいと言うだろう。』

 嬉しそうに笑い箸を進める。

 母はもういない、もともと体が弱かった母は、11年前死んでしまった。自分が小学校に入学してすぐのことだった。自分にはよく分からないが、どうも心臓の珍しい病気らしく田舎のこの町ではどうにも出来なかったようで、そのまま眠るように息を引き取った。その日は、父さんと一日中泣いていたのを覚えている。父さんが泣いたのは、後にも先にもその時だけだった。後で聞いたが母さんは、どこかのお嬢様だったらしく父さんと駆け落ち同然でここに来たようで、葬式には誰も来なかったのを覚えている。

『御馳走さん。』

 いつの間にか父さんは食べ終わっていたようで、あわてて自分も残りのご飯をかきこむ。急がないと学校に遅刻してしまう。

 父さんの弁当を置き自分のカバンをつかみ叫ぶように言う。

『いってきます!!』

 飛び出すように走るバスの時間までぎりぎりだ。父さんから貰った腕時計を見てさらに速度を上げる。

 

 そして昼休み一本の電話が入る。席を立ち騒がしい教室からでて話を聞く、警察と名乗った相手に軽く動揺しつつ聞くととんでもないことを言い出した。

 

『あなたのお父様が通り魔に刺されました。』

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