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食堂

昼食に入った店は食堂だった。

向かい合わせの席に座って、お勧めのから揚げ定食を2つ頼むとすぐにお皿に大量に盛られたから揚げとご飯とお味噌汁が来た。

無言で食べ始める。


「五十嵐さん、僕のこと嫌ってますよね」


箸を止めて、朱里が顔を上げる

冷めた顔で薫を見た。


「石橋さんは・・・私に対して、わざと、避けてるような態度を取ってましたよね」


「・・・なかなか鋭いな」


「どういう考えでそういうことするのかわかりませんけど、私は別にあなたに気があるわけではありませんから・・・迷惑がっていただかなくて結構です」


「あ・・・いや・・・そういうんじゃないんだけど」

あわてたように薫はいう。


しばらく、無言が続く。

から揚げの量は尋常じゃなく多い。

確かにおいしいが、量が多すぎて、朱里は半分も食べたところでもうおなか一杯になった。

薫は途中で食べるのを止めて、早速報告書を作成しているようだ

朱里も、残したいのだが、手持ちぶたさだし、薫と話をしたくないから箸が止められない。


そんな、朱里の状態に気づいて薫が慌てて言う。


「・・・まさか、これ全部食う気?・・・適当なところで止めとかないと太るぞ」


「普通男が女に対して、そういうこと言います?」


言いながらも、朱里が箸を止める。


「じゃあ、なんでスポーツジム通ってんだよ、体型、気にしてるからだろ・・・まあ、ジャンクな味もそれなりにうまいけどさ」


薫はそういいながら、手を止めていた、大きめにカットされているから揚げに再び、かぶりついた。


・・・ジャンクな味・・・みっちゃんのおすすめは一刀両断にされてるよ・・・

まあでも、こんな頬を膨らませて食べてる姿って確かに彼には似合わない・・・でもそういうのも悪くないけど・・・

つい、朱里はそう思ってしまった自分に再びむかついてくる。


「・・・私、あなたみたいなタイプは好きじゃありません、いつもどっかにふらふらしてるような落ち着きのない人と真面目に付き合えるわけ無いでしょう?」


さすがの朱里も言い過ぎた・・・そう思った。

世間一般で言う、こういう『いい男』と話すのは苦手で・・・更にどうやら嫌われているらしいとわかっているらしいのに、ちょっと「いいな」と思ってしまったのが悔しくて、つい本音が口から出てしまった。


さすがにムッとしたのか、次に出た朱里に対する薫の言葉は辛らつだった。


「確かに・・・五十嵐さんみたいな人には僕は合わないと思うよ。理解できないことなのかもしれないけど・・・僕はまだ1人の女性と落ち着こうなんて思えないし」


「・・・」


「なんとなく気づいてると思うけど・・・おれははっきり言ってもてるし、チャラいし、1人に決めて付き合っても他に目移りして浮気するのも自分でわかってる。それが原因で恋人に泣かれたりするとしんどいし、面倒だ」


男の本音をこんなところで、しかもこんな人から聞くとは思わなかったので朱里は何もいえないでいた。


「だから君みたいにお付き合いするなら結婚まで、なんて考えそうな真面目な女は面倒で声かける気にもならないよ、そういえば君は満足するのかな」





薫はむかつきつつも、半分ヤバイと思っていた。

なんでこいつ、つっかかってくんだよ、仕事上このままじゃまずいと思ったから飯誘ったのに・・・見事に逆効果じゃん。


売り言葉に買い言葉、朱里の自分に対するイメージそのままを口にして余計に印象を悪くしてしまった。

確かにおれは言われた通りの人間だけど・・・と薫は自嘲する。

でもダメだろう、これは・・・取引先だろう?相手は・・・

フォローしないと・・・



「まあ、おまえみたいな奴はうちの芦田みたいなのがお似合いだよな」



途端にさっきまで凍り付いていた朱里の表情が変わる

不意打ちをくらった顔

わかりやすいな・・・こいつも満更でもないって感じだな


「あいつは真面目だし、浮気とかありえなさそうだしな」


「芦田さんと・・・仲いいんですか?」


「大学が一緒だったからね、でも友達って訳でも無いけど」


「そうですか・・・あの・・・今出張中ですよね」


朱里の顔色がみるみると赤くなる

すっかり好戦的な態度はなくなったようだ

これでなんとかなりそうだ


「そう、次のプロジェクトの準備で行ってるよ上川さんとの仕事も、もうほとんど終わりだしな」


「・・・そうですか・・・」


またしばらく無言が続く

なんか聞きたそうだな、車の中で探ってみるか・・・


「もう、お昼いいよな、話しあるなら車の中で聞くから、出よう」


そういうと、勘定書きを持って薫はレジに向かった



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