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休日出勤

さすがに昨日はぐっすりと眠れたな、と朱里は自分のベッドで目を覚ますと大きく伸びをした。

今週は週明けから仕事でドタバタしていて、寝不足で頭が飽和状態だった上に、更に金曜の夜はいきなり高級フレンチの店に連れて行かれて、緊張の中でも、おいしくご飯食べてたけど、その後、ものすごい美人と石橋薫がキスしてるのを見ちゃって・・・すごい衝撃だった。

しかもその人に、私クスって笑われたし。

確かに場違いだった私にあの場所と相手は・・・


自分でもわかってたけど、私の行くような感じの店じゃなかったんだ。

私なんて、急な話だったから、服装だって、化粧だってものすごく適当だったし。

思い出しただけで恥ずかしくなって、朱里は掛け布団を頭までかぶる。


ああいうお店にエスコートされる女性はあの店のテーブルに飾られていた薔薇の花のように可憐かもしくは艶やかな存在であるべきなのだろう。

そういえば、あいついつもあんな艶やかな女性とお付き合いしてるんだ・・・年上の大人系か・・・

自分とは正反対だな

まあ、確かに石橋薫にとって私は対象外だわ、ああいうのが『彼女』の標準だったら・・・


帰りのことはもうあんまり記憶無い、寝不足の状態でお酒飲んだし、疲れも溜まっていた。

タクシーで送ってくれたけど、寝落ちしてしまって、気がついたら家の近くまで来ていて、

部屋に上がるとそのまま倒れるように眠ってしまったから・・・


頭の中はすっきりしているようで、でも胸の中はもやもやしている。

なんとなく布団の中に入ってると息が苦しくなって、ぱっと布団をまくる。


しっかりしろ!私

あいつにああいう女がいようと、自分には関係ない

こういう気分で一日家にいてはいけない。

今日は今週頑張った自分にご褒美をあげよう。

これから起きて仕度したら、おいしいランチを食べて、ジムに行って、帰りに古本屋に行って本を大人買いするか、図書館で大量に好みの本を借りるか、する。

それか、ランチを近くのお気に入りのお店でサンドイッチとケーキに変更するとか・・・


・・・なんてささやかなご褒美なのだろう・・・古本の大人買いか、図書館って・・・

ランチだって、あんなご馳走食べた翌日じゃおいしいと思えるかどうか・・・


だめだめ、暗くなっちゃ、楽しいこと考えよう

・・・そういえば・・・芦田さん・・・中国から帰ってきたのかな、昨日・・・

頭の隅っこにずっと残ってる疑問

個人の連絡先も知らない・・・だから確かめられない

昨日、石橋薫に聞くこともできたんだけど・・・なんか言いづらくて・・・


・・・石橋薫はもういいって・・・さあ、起きよう!

朱里は体を起こすとベッドから降りた。




日曜日、薫が自分の会社にやってきたとき、芦田はもう席に着いて仕事をしていた。

出張帰りでいきなり土日、両方共休日出勤か・・・相変わらず真面目な奴

まあ、自分もそうなんだけど・・・俺の場合は半分は仕方なくな・・・と思う。

この会社で自分達の年代で忙しくしてない奴は、とっくに出世をあきらめた奴かそういうことがわかっていない奴くらいのもんだ。

人の何倍も働かないと、人より成果は出ない、出ない奴は目立たないから会社の上の人間には目をつけてはもらえない。

目をつけてもらえば、より良い、より大きな仕事につかせてもらえる。

そして、そこでまた成果を上げれば、更に大きな仕事がもらえる。

すると更に仕事は忙しくなる。

今回の上川との仕事は今まで経験したこと無い程の大規模のものだから、これが成功すれば確実に出世の軌道に乗れるだろう、そう薫は思っていた。

それに比べてこいつは・・・芦田をちらっとみる。


学生の頃から同じだ

真面目でなんでも熱心にうちこむ性格

大学でもそうだった、小学生から内部上がりで大学まできた俺と違って

地方の高校から外部受験で大学に入ったこいつは他のやつとは抜きん出て、頭が良かった。

俺だって一応教育熱心な親に育てられていたから、わりとなんでもそつなくできたほうだったと思う。

しかし、こいつは俺が他のことに気を取られている間もずっと研究一本で、毎日深夜まで大学に残っていた。

だから教授の受けも良かったし、成績も卒論も・・・他のことも、完璧に負けた

あの頃の俺が彼に勝てるのはルックスとコミュニケーション能力くらいのもんだった。

そういう自分がすごくみじめで・・・そう思わせる彼に嫉妬した、ここまで人に嫉妬したは生まれて初めてだった。

多分、こいつは俺のそういう気持ちを知らないだろう・・・いや、もしかしたら気づいているかもしれない。

学生最後の日にああいうことをしてしまったから・・・





夕方になって、薫は仕事の手を休めて、ひといきついた。

明日もあるし、今日はこのくらいにしておこう。

芦田もそろそろ引き上げるようだ。




「これからどう、飯でもいく?」


「いや、出張中、連日飲みで疲れた・・・帰って寝るよ」


相変わらず、愛想が無い・・・それに『帰って寝る』ってことは今日は何も予定がないらしい。

・・・俺は、ジムにでも寄って帰るか、運動不足だし



「そういえば、金曜も部長と飲みに行ったのか」


「ああ」


芦田がまっすぐに薫を見る。

何か薫は違和感を感じた。



「来なかったな」



「忙しくてさ、そういえば取引先の上川さんは呼ばれてただろ、部長が上川さんとこに電話かけた時、その場にいたんだ」

そう薫は答えながら気づいた。

ああ、そうか、五十嵐朱里だ

朱里と金曜の晩一緒にいたのを上川から聞いたのか・・・



「仕事・・・代わってくれてありがとう・・・問題なかったかな」


「ああ、あそことは、もう次のプロジェクトに入ってる」


またしばらく沈黙が続く


「そうか、じゃ」


そういうと芦田は先に会社を出て行った。

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