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仕事の関係

朱里のいる会社の商談席に薫は座って背もたれに体を少しだけ預けて目を閉じた。

さすがに連日、深夜帰りは疲れるな、と薫は思った。

週末、上司との付き合いでゴルフに行った折に、

「週明けの会議でゴーサインが出るから」と聞かされたその日の夜から薫は今の仕事にかかりきりになっていた。

家でも会社でもいつでもこの仕事しか頭に入らない。

今までしていた他の仕事をこなしているときも、頭の片隅にいつもこの仕事があり、家に帰っても頭から離れないので結局眠っているときしか、仕事のことを考えないでいられる状態はなかった。


食事だってあまり喉を通らなくなっていた。

それなのに、打ち合わせに来てみると、どれを食べようかと能天気に箱の中のお菓子を物色している朱里がいた。同じ仕事をしているのになんとのんきな、という腹立たしい気持ちと、何やっててもこいつは変わらないなという半分救われたような気持ちもあって、つい箱の中からひとつ取ってきてしまった。


朱里と昨日改めて一緒に仕事をしていてわかったことがある。

上川の下で働いているだけあって、彼女は使える、ということに。

彼女は特別有能って訳ではないが能力の範囲内であれば確実にこなす。

しかも仕事には真摯だから自分の関わる仕事を遂行させる為であれば、相手が誰であれ、文句も言わずついてくる。性格が素直だからか仕事に対しても率直でわからないことはわからないとはっきりいう。そしてもくもくと仕事をこなしていくのだ。

プライベートでは飛ばしすぎの感じもある朱里だが、仕事ではそういうこともなさそうだし、薫には朱里の考えていることが手に取るようにわかるから、付き合いやすかった。

正直に言えば、野心やプライドの高い薫の会社の後輩より他社の朱里との方がやりやすい。

上川にはもうちょっと技術的なことを勉強してもらって、芦田との仕事の時よりももうちょっと彼の仕事を増やしたいし、朱里もある程度は巻き込むつもりだった。

だから友好的な態度で接しないとダメなんだけどな・・・と思ったところで薫はため息をついた。

・・・どうも朱里とはうまくいってそうにない・・・

何がきっかけかうやむやだが、会う度に暗転している。

なんとかしようと近づいてもいい結果にはならず、いつも口喧嘩で終わっている気がする。

もう考えるのも面倒だ、とも薫は思う。

プロジェクトは始まったし、今は仕事に集中したい。

何もしなくてもきっと彼女は仕事に私情は挟まないタイプだろうから、このままでも大丈夫だろう。

それもわかってる。


だが朱里との関係の修復したいという気持ちもなかなか頭から離れない。

それもできるだけ早いうちに。

早い、というのがいつまでのことなのだろう、とぼんやり頭の中で考えていると上川が資料を持って現れた。

薫の頭の中が仕事モードに切り替わった。

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