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銘菓

翌日、まだ早い時間から朱里は会社で仕事をしていた。

いつもなら始業時間10分前に朱里は会社に来るのだが、今日は色々なデータの承認処理をする日でこれが結構手間取る。もし夕方から打ち合わせに時間を取られるなら、システムからデータが上がってくる11時までには他の仕事をできるだけ終わらせてしまった方がいい、そう思って今朝はまだ暗いうちから起きて、準備をすると会社に向かった。

11時になるまでに、ひと段落ついた朱里は眠い目をこすりながら給湯室へ向かう。

昨夜も遅くまで仕事をしていたし、今朝は今朝で早めに会社に来ているからとても眠い。

目をこすりながらコーヒーの粉をマグカップに移していると来客用のお茶碗を下げてきた里美と会う。


「昨日はごめんね」


「いいえ、何時まで残業だったんですか?」


「11時」


「ええっマジですか」


「あのまま電話に出ないで、里美ちゃんと帰ったら良かった・・・でも帰ったら今日が大変か・・・」


「川上さん、電車間に合ったのかな?」


「いやぁ、もう会社から駅まで走ってたんじゃないかな」


「一緒に走らなかったんですか?」


「私は制服着替えなきゃならなかったし、商談席で解散したよ」


「そうですか」


少し間が空く、里美の言葉には、薫のことを気にしてるのかと思わせたものが見えて・・・


「里美ちゃん、これいうのすごく恥ずかしいんだけど、私ね・・・いいなって思ってる人がいるの・・・今は傍にいないんだけど、もうそろそろ帰ってくるはずで・・・」

だから、石橋薫とは無関係だから、里美は気にやまないでいいよって、朱里は心の中でつぶやく。


「そんな人いたんですか、知らなかった、どんな人なんですか?」


「私も実はよく知らないの・・・最近ちょっと話してそう思っただけで」


「会社の人?」


「ではないけど・・・もし何かあったら報告するね」


「もちろん、わぁなんか楽しみです」

少しぎこちないような2人の空気が緩和されたような気がして、朱里はホッとする。



昼からは大量の仕事を休まずに続けたせいか

その日の仕事は夕方までにはほぼ終えられて朱里はホッとした。

夕方からの仕事に備えて栄養補給を・・・と机の引き出しからお菓子の入った箱を取り出そうとしていたら


「こんにちは」

と頭の上からすっかり聞きなれたすました声がした。


「ああ、石橋さん、もう済みますから商談席で待っていて下さい」

上川の声がして、あーあ、と朱里は思う。

いや、時間はあるからお菓子はとりあえず食べよう、と箱を開けて中身を物色していたら

スーッと手が伸びて、出張のお土産にもらった銘菓をひとつつとって薫は席を離れていった。

いいやつを持っていかれた・・・朱里は少し悔しそうな顔をすると自分用にいくつか机の上に出して、お菓子の箱をしまった。


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