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青い牙  作者: 椿 さつき
1/1

プロローグ

とりあえず続けられれば続くかもね。


「ね源蔵」


「んだよ?」


返事はしたが悪い予感しかしねぇ~と思いながら


源蔵は、民子に振り向く事なく返事を返す。


「トイレ行きたい。」


「またかよ!」


半ば予想道理の言葉に軽く絶望感を味わい言い聞かせる様に民子へ話かける。


「なぁ~今どう言う状況か解ってるよなぁ?」


「追われてる。」


「そう!追われてるんだよ!奴らは、しつこい!無能ばかりのくせに、群れなして負って来やがる。」


「でも、まいたじゃん!」


「今のうちにマージン稼いでおきたいの!」


「ここで漏らすわよ!」


「大人にもなって、お漏らし恥ずかしくないのか・・・なう」


「恥ずかしいからトイレ行きたいって言ってんの!


どっかのコンビニ寄ってよ!


それに、「なう」の使いかた間違ってるからね。」


「馬鹿野郎!そこ、注意されると恥ずかしかしいだろ!」


「今その話の追い討ちかけないでよ!兎に角どっかのコンビニ寄ってよ!」


「っち、しょうがねーな、ナビ!近くのコンビニ情報検索!」


「検索エンジンをグルグルに設定!半径10㎞圏内に5店舗存在いたします。」


車から妙に色っぽい女性の声が発せられ、運転席と助手席中央に仮想ビジョンが現れ、半径10㎞圏内の


コンビニがマーキングされ、選択可能状態になる。


「あ、ここ行きたい!」


「ば、勝手に決めんなよ!」


「選択を受け付けました。目的地をコンビニエンスストアーロックオンに設定致しました。案内を開始し

ます。」


「おいおいおいおいおいお~い!」


「お茶?」


「ちゃうちゃうちゃうちゃう~わい!」


「犬?」


「もう、解っててぼけんな!」


「だって、ロックオンのトイレ綺麗なんだもん!」


「だからって合流地点と逆方向のコンビニ選ぶか?」


「イイじゃん!目的地の予想、外してあげるのよ!」


「予想外!って俺もお前の行動予想外だよ!」


「やった!」


可愛く喜ぶ民子に一瞬心を奪われる源蔵だったが、今はそんな、呑気な事を思ってはいられないのだ

が、すでにコンビニに寄り道する時点で雰囲気は台無しだ!


「何処の世界にコンビニのトイレに寄り道する逃亡犯が居るかね~」


「ココに居るじゃん!」


「はぁ~嫌味も通じないのな」


「次のかどを右折して下さい。」


ナビが突然会話に割り込んで来る。


「取り敢えず、追っ手が来る前に済ませてくれよな」


「レディのトイレに口出さないで!」


「ヘイヘイ」


何を言っても無駄だと源蔵は、嘆息しながら、バックミラーに目を移し、追っ手が追い付いてこない事を

チェックしながらクルマをコンビニの駐車場へと滑り込ませる。


「ほら、速く行って来いよ」


「はぁ~い。行って来まぁ~す」


民子は、嬉しそうにコンビニの自動ドアをくぐって行った。


店内は、観葉植物のオブジェが所々置いてあり、コンビニにしては珍しくカフェの様な店内だった。


源蔵は、民子が出てくるまで店内をうろつきながら最近のコンビニ事情をチェックする。


「ほぉ~懐かしいのが有るな。」


源蔵は、棚の中から昔、子供の頃親にねだって買って貰った駄菓子を手にしながら値段をチェックする。


「値段は、昔と変わらないのか」


ガチャリとトイレのドアが開き民子が出てくる。


「お待たせ!」


「あぁ」


源蔵は、会計を済ませ車へ戻る背中に民子が「私も買い物済ませるぅ」と言葉を投げかけた。


源蔵は、もう、言い返す気力も無いので好きにしてくれとばかりに、背中越しに右手を上げる。


クルマのドアに手をかけ辺りを見渡す。


未だ追手の姿を確認する事が出来ない。


「おかしい・・・そろそろ追い付いてもいい頃なのに・・・」


源蔵は、空を見上げ監視衛星の光を探すが辺りにはそれらしき光は見当たらなかった。


事前にハッキングによって監視範囲を逃走ルートからはずしておいたとはいえ、今だに監視ヘリすら飛

んでいない静けさに苛立ちを感じる。


「ブルーファング!」


「Yes マスター」


左手に付けている携帯端末に話しかけると、女性のアニメ声で返事が聴こえる。


「相変わらず緊張感の無いアニメ声よね~ブルーファングの声って」


買い物を終え源蔵の隣へやって来た民子に車内へ入るように促しながら民子の声に応える。


「いいの!この緊張感の無い声が良いんだって!」


「源蔵ってちょっとオタクっぽいよねぇ~」


「うっさい!」


「申し訳有りませんマスター私が魅力的なばかりに民子に嫉妬させてしまって」


「チョット~なんで私は呼び捨てなのよぉ~」


「マスター、周囲5㎞圏内に無線車両の反応が多数確認されました」


源蔵は舌打ちし、ブルーファングからのデータをナビに受信しながら位置関係をチェックする。


「ちょっとぉ~私は無視なわけぇ~?」


「黙りやがれです。民子は黙ってろです」


「ひっど~」


「民子は、トイレにでも篭ってろです。  トイレの民子さんとして妖怪扱いの特別待遇として受け入れ

てあげるです」


「何よそれーいい加減解体するわよ!」


「すぐ、暴力を振るう暴力女は怖いです」


「そろそろいいか?」


「Yesマスター!」


「合流地点の修正を頼む」


「周囲包囲網の移動予測行動算出します。 こちらの移動速度加算、逃走ルート渋滞状況チェック! ル

ートの最適化を行います。 成功率の最も高いルートをそちらのナビに転送致しました」


 ナビは、ブルーファングからのデータをダウンロードし、「データのダウンロードが終わりました。 

画面に表示しますか?」と音声が流れる。


「頼む!」


 源蔵は、画面をチェックしながらクルマを走らせる。


「この赤いのが無線車両みたいね」


「ナビ通りに行くと次のかどで鉢合わせになるな」


「民子が頑張りやがれです。 他に特技の無い民子は、肉体労働がお似合いです」


「何よ~その言い方~」


民子は、頬を膨らませながらプンプンと擬音が出そうな感じで怒っていた。


「民子、そろそろ用意を頼む!」


「はぁ~い」


 いまいち緊張感のない声で民子は、おもむろに後部座席に置いてあるスーツケースからライフルを取り

出す。


「包囲網の中央で良いの?」


「あぁ」


 曲がり角にクルマの頭を突っ込みながら民子は、メガーヌのサンルーフから半身を乗り出しながらライ

フィルを構える。


バーン!と言う銃声の響く街道の中Officeビルの窓からちらほらと街道を見下ろす野次馬たちの目の前で

一台のパトカーが炎上し始める。


街道をふさぐパトカーは、横並びに道をふさいでおり、運悪く中央部分に位置する一台のパトカーは、燃

料タンク側が丁度こちら側に向いていたのを民子は、見逃さなかった。


だが、車が炎上した所で、その車が吹き飛ぶ訳でも無い、ただその場で炎上してるだけだった。


民子は、じぶんの仕事は終わったとばかりにサンルーフを閉め助手席に座りシートベルトを閉め始める。


「んじゃ~行きますか!」


源蔵は、とつぜん反対車線へと車を進入させる。


反対車線は、警察の交通規制で無人の道路だったが、中央分離帯を乗り越える為にはそれなりの技術が必

要だった。


ガリっという嫌な音を響かせながらメガーヌは、中央分離帯を超えてゆく。「ああああ~俺のメガーヌが

ぁ~」


源蔵は、頭を抱えるような悲鳴をあげる。


「治せばイイじゃん!メガネが傷ついただけでしょ?私は、ブルーファングのせいで傷心よ。」


「民子は、たいして働いてないくせに黙りやがれです。」


「もう!なんなの~この宇宙船!毒舌過ぎ!源蔵!データ書き換えてよ!」


「ばぁ~か!書き換えにどれだけの手前かかると思ってんだよ。 そう簡単にできる訳ねぇ~だろ!それ

にけっこう気に入ってんだよ!」


「そうです、マスターは、私にメロメロなのです」


「いや、メロメロとは・・・・・・・・・」


「いつも民子が邪魔しやがるのがいけないのです。 くたばりやがれです」


 源蔵の声をかぶせる様に民子へ毒を吐くブルーファングに源蔵は、やれやれと、肩をすくめる。


「ぶぅ~」


 民子は、頬を膨らませ可愛らしく怒りながらコンビニの袋からおもむろに飲み物を取り出しキャップを

ひねる。


プシュっという音をたてながら、ペットボトルの飲み口にその、薄く艶やかな唇をそっと触れさせる。


ゴクというのどの奥から液体が通り過ぎる音に源蔵が振り向く。


「民子、お前なに飲んでんの?」


「いろはそ ほんのり巨乳巨峰味!」


「いや、そじゃね~だろ?」


「だってほんのり巨乳成分注入だし!」


「いや、だからそうじゃねぇ!そもそも俺は、巨乳より丁度良いCカップくらいが好きだ!」


「民子め!マスターを惑わすなです。 宇宙の藻屑にしてやるです」


「あらぁ~嫉妬かしら?」


「民子じゃああるまいし嫉妬なんてしないです。 民子如きで嫉妬なんて笑えない冗談です」


「如きってなによ! もぅ!」


「ちがぁーう! そんな事じゃーなぁーい!」


「じゃー何よ?」


「では、何ですか? マスター」


「民子、お前ただでさえトイレ近いのに、何飲み物飲んでるんだよ! 追われてる中トイレ寄れ何てゴメ

ンだぞ!」


「大丈夫よ~! 子供じゃあるまいし」


「民子は子供以下です」


「いちいち感に触る宇宙船ね!」


「わぁ~った! 解ったから、言い合いは後ろの五月蠅いのまいてからにしてくれ」


ファンファンとサイレンを鳴らしながら追ってくるパトーカーがやっと気付いてもらえたとばかりにいっ

そう音を大きく鳴り響かせ、「前の暴走車両止まりなさい」と無駄な台詞を絶えずはき続ける。


「さて、民子、もう一仕事頼めるか?」


「えぇ~」


嫌そうに顔をしかめながらも、ライフルに手を伸ばす。


「わりぃーな。 とりあえず高速入るまでに距離かせいでおかないとブルーファングが収容できねぇし」


「もぅ! しょうがないな~」


民子は、サンルーフを開け、もう一度上半身を乗り出し、今度は、後ろ向きに立ち、ライフルを構える。


「とりあえず、今後ろにくっ付いてる車をどうにかしたらいいのね?」


「あぁ、頼む」


 空は、午後の日差しを浴び、かすかに西の空が朱に染まり始めた頃、響き渡る銃声が通行人の視線を集

める。


何度も響き渡る銃声に、街道沿いを歩いている人々は、あわてて建物の影へと身を隠そうとする者や、野

次馬のように見入っている者、突然何が起きたのか把握できず唯、立ち尽くしている者達で混乱し始め

た。


そして、銃声と連動するように次々と、フロントを打ち抜かれた警察車両の群れがおのおの好き勝手に暴

れだす。


そして、お互い制御できなくなってきた車体をぶつけ合い、獲物との距離を開き始める。


警察車両達は、悔しそうにクラクションを何度も何度も繰り返し響き渡らせだんだんと距離を開いてゆく

源蔵たちへ無駄な台詞をスピーカーからはき続けるだけだった。


「サンキュー民子」


「民子にしては良い仕事です」


源蔵は、高速の標識を確認してから車を目的地へと向かわせる。


高速の入り口へ入った頃に、ブルーファングから、何度目かの通信を受信する。


「マスター、ETCが無いので私は高速へ入れません」


「お前宇宙船だから要らないだろ?」


「マスター酷いです。 私を、機会みたいに言うなんて!」


「あんた、もともと宇宙船じゃん!」


「民子は五月蠅いハエですか?」


「ハエじゃないもん!」


 すっかり、手玉に取られてしまってる民子を哀れと思いつつも面白いから頬って置く源蔵だが、ブルー

ファングの毒舌は源蔵まで飛び火する。


「そういえば、マスターのカード今月は引き落とし残高ゼロです」


「なんで、お前が俺のカードの事情知ってるんだ?」


「こっそり、貯蓄を増やそうと株に手を出してみました」


「おぉい!何で俺のカードの暗証番号知ってるんだよ?」


「民子から聞いたです」


「何でバラすのよ!」


「・・・お前ら、実は仲良いんじゃね?」


「「冗談!!」」


二人の声がハモる。


こんな馬鹿話をしている間に車は高速道路に入ってゆく。


「ブルーファング、ルートC4、X地点での回収を頼む!」


「Yesマスター!」




 西暦30xx年アンドロメダ星雲の片隅で発展してきたその星、α星は外宇宙へと出る技術力と元々そ

の星の前人類が残していったテクノロジーによって爆発的な発展を遂げていた。


 人々は、前人類の遺産を使い宇宙船を作り、外宇宙へと旅立つ事により様々な人類を発見し、交流を深

めていった。


 外宇宙の交流により、高められた技術力は前人類の残していったロストテクノロジーの解析に大いに役

立つものの、全てを解析できる事はかなわず、ほんのわずかな技術の向上を遂げるだけで終わっていた。


 だが、そのわずかな向上ですら、人類にとっては過ぎた技術であり、扱いきれない物も多くあり、何度

かの失敗により、星一つを失う事故に繋がる結果を招く。


 星間協定により、ロストテクノロジーの解析は一部禁止事項に含まれ、星間技術機構へと解析は一任さ

れることになる。


 星間技術機構とは、ロストテクノロジーの出資元であるα星を中心とした星々の技術者を集めた団体で

あり、星間協定に基づき発見した技術の公表、それにより著作権での収入と各星のパトロンによりその運

営で成り立っていた。


 発足当時は、各星の代表技術者がお互いの技術力に過信することで、成果を挙げるどころか、他の星の技術者の足を引っ張ることで技術力の向上が見受ける事ができず、ばらばらに研究テーマをこなしていたチームを一つにまとめ、星同士の交流を深めてゆく事で、技術の発展を高めていった。


 そして、チームメンバーのチーム力が高まったことにより、星間技術機構に新たなチームを迎える事により、天才は突然現れる。


 つなし 源蔵げんぞう今まで無名だった技術者の一人でしかなかった源蔵の名前が星間全てに響き渡ることになる。

 

 彼の功績は星間の歴史の中で確実にその名前を大きな文字で表されるだろう。



お疲れ様です。

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