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煙草



 向島家のリビングには主に食事用の通常のテーブルと、ソファを周りに置いた歓談用の背の低いテーブルの二つがある。まきるはソファに腰掛けてテレビを見ながら、通常のテーブルで同じようにお茶を飲みながらテレビを見る翔子に話しかけた。


「お母さんお母さん」


「なんだよ」


「お母さんって、昔はワルだったんだよね? 煙草は吸ってたのっ?」


「煙草? いや、煙草は吸ってねえな。一回吸った事があるけど不味くて駄目だった。んな良いもんじゃねえぞ、あれは」


「へー、吸ったことあるんだ」


「ああ、昔は光太郎が吸ってたからな。一本貰った。まきるを産む前の学生時代の話だから……二十年近く昔の話か」


「へー……って、お父さんが煙草吸ってたの!? 何だか意外だよっ」


「はっ、意外だろ? あいつは優等生みたいなツラ被ってる癖にそういう腹黒のとこがあるからな。あたしもそれ知ったときは驚いたぜ」


「ほえー。んと、それで、どうしてお父さんは煙草辞めたの?」


「んー…………色々、だな」


「色々、なの?」


「ああ、色々だ。大きい事とか、小さいこととかが重なってな。きっかけなんてそんなもんだろ」


「うーん。お父さんと煙草かぁ……」


「間違ってもあいつに『煙草吸ってる姿見せて』とか言うなよ。今値上がりして高いんだから」


「うっ!? 見抜かれてるっ!?」


「何年おまえの母親やってると思ってんだ」


「ちぇー」


 ガチャリ


「ふう、良いお湯だった。…………あれ二人とも、私がどうかしたかい?」


「んーん、何でも無いよ。ねー?」


「おう、何でも無えよ。なー?」


「え? 何この疎外感…………いや本当に何?」

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