引き出し
向島家の階段の真下にあたる部分には物置がある。その中の引き出しをまきるはまさぐっていた。
「……んー、ないなぁ」
「まきる、どうしたんだい?」
「お父さん、あたしの冬用の体操服知らない?」
「体操服? なんでまた」
「んとね、これからまだまだ寒くなるから、部屋着の一つにしようと思って」
「ああね。体操服か…………ちょっと分からないなぁ。翔子さんなら分かるかもしれないけど」
「分かった。お母さーん! おかーさーんっ!」
ガチャリ
「何だよまきる。どうした?」
「お母さんっ、あたしの体操服ど……こ…………」
「体操服? ああ悪い、寒かったからあたしが借りてた。すぐ使うか?」
「…………ううん、良いよ。お母さん使いなよ……」
「ん? まあ、あたしは助かるから良いけど。んじゃ昼飯がもうすぐ出来るから、少ししたらリビングに来いよ」
「うん……」
ガチャリ
「…………胸が」
「まきる?」
「胸の名前がびよーんって、びよーんってなってたっ!」
「……んー、まあ、まきるはまだ高校一年生だし」
「向島がむこーじーまーになってたよっ!」
「ま、まあ、そうだね」
「お父さん、どうしてお母さんはあんなのなのに、あたしはこんなのなのっ!? 理不尽だよ、おーぼーだよっ」
「そう言われてもなぁ…………あっ」
「どうしたのっ? やっぱり何か秘密があるの!?」
「そういえば翔子さんは昔から野菜とか納豆とか良く食べていたような……」
「おかーさーんっ! お昼にサラダと納豆追加してっ! お願いします、後生だか…………」
バタバタ、ガチャリ
「ふう、行ったか。真っ赤な嘘だけど健康に良いし問題無いか。……翔子さんが高校の時にはあのスタイルだったことは言わないで良いよね?」




