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耳かき



 二階の自室から降りてきたまきるはリビングへの扉を開けた。


「お母さーん」


「あ? なんだよ」


「耳かきしてー」


「今洗濯物畳んでるからちょっと待っとけ」


「はーい」


「…………よいしょ、と」


「終わった?」


「ああ。耳かき持ってこっちこい」


「耳かき耳かき、と。ふふー、とりゃ」


「うおっ。勢いつけて頭を乗せるなよ」


「ごめんごめん。宜しくお願いしまーす」


「はいはい。ほら、あっち向け」


「はーい」


「ったく、耳かきくらい自分で出来るようになれよ…………よっ、と」


「うふふー」


「どした急に笑って」


「いや、気持ちよくてつい声が」


「そんなもんかね…………ほいっ、と」


「そんなものだよー。…………くふふっ」


「…………よし、終わりだ。次、こっち向け」


「はーい。…………お母さんってさ」


「んー?」


「甘い匂いするよね」


「そうか?」


「うん、するよー。何だか安心するー」


「分かったから、もうちょい腹から離れろ。やりづらい」


「はーい」


「…………よいしょ、と。よしっ、終わり」


「ありがとー。うりうり」


「やめろっ。くすぐったいっての」


「えー、何か気持ちいいもん」


「ったく、いつまでもあたしが耳かき出来る訳じゃねえぞ」


「うん、だからもうちょっとだけー」


「仕方ねえな。手のかかる娘だ」


「ふふふー。お母さん大好きっ」


「…………ぐりぐりするな」


「翔子さん翔子さん」


「あ? どうした光太郎」


「次、私も良いかな」


「おまえ、さっき自分でやって無かったか?」


「やってたけどやってない」


「無駄な嘘をつくな」


「だってだってっ! うらやましいじゃないかっ。翔子さん洗濯物畳んでるしなぁ、と思って遠慮した私を差し置いてまきると……まきるだけと…………っ!」


「あほかおまえは。…………まあ、まきるが退いたらやってやらんこともない」


「っ! ……まきる、そこを退きなさい。これはお父さんの命令だ。繰り返す、これはお父さんの命令だ」


「えー、やだよー。久しぶりにこのふにふにのお腹を堪能してるんだからっ。うりうり」


「っ、くすぐったいって」


「…………お小遣いあげるよー」


「お金じゃ買えない価値がある。きっとその一つがこのふにふに」


「…………ふっ、どうやら私に本気を出させたいようだね、まきるは。よろしい、くらえっ。お父さんマッスルファイナルスペシャルアイラブショウコアタァァ―――」


 ピピピ ピピピ ピピピ


「あっ、そういや鍋に火をかけてたんだった。またいつかな」


「あっ、翔子さん…………」


「…………お、お父さん?」


「……――覚悟は、出来たね?」


「ほ、ほらっ、お金で買えないものがあるっ! それは娘への寛大な愛情……」


「愛って、残酷だよ」


「あっ、あたし宿題が――」


「くらえっ、お父さんブロークンマイハートショウコマジラブソニックアタッークッ!!【偉大な父の愛の鞭】」


「何その名前っ! いやぁぁぁあああっ!」


 バァ――――――――――――ンッ!!

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