12月
向島家のリビング。椅子に座る光太郎は足下から伝わる寒さに身を震わせた。
「さ、寒い」
「ほら、膝掛け」
「ありがとう、翔子さん」
「しっかし、最近めっきり寒くなったな」
「そうだね。今年ももう十二月だしね。歳をとると時間が早くて早くて」
「そういや十二月か。最近街が明るい、とか思ったらクリスマスだったか」
「いつも思うけど、ああいうイルミネーションとか早過ぎる気がするよ」
「まあ、そうだな。まだ一カ月近くあるし」
「ああ、でも一カ月なんてあっという間だしなぁ。……締め切りが早い……!」
「まあ、ほどほどにな」
「…………翔子さん」
「あ?」
「……クリスマスプレゼントは何が良い?」
「クリスマスプレゼント? 別に良いよ今更」
「いやいや、駄目だよ。私の気持ち的に」
「……そうだな」
「うん」
「おまえが今年一杯健康でいること」
「え」
「そこまで欲しい物も無いし、家族全員で年が越せれば良いや。最近おまえは仕事し過ぎだしな。……いかん、あたしまでおばさん臭い事を言うようになっちまった」
「し、翔子さんっ」
「ん?」
「私っ、仕事頑張って早く終わらせて、とびっきりのプレゼント買うよ!」
「え、いや別に」
「よし、死ぬ気で頑張るぞ! 今日から徹夜だっ。ふははははっ」
「いや、だからあんまり頑張るなって」