スプーン
夕食の時間。まきるはふと手に持ったスプーンを見た。
「んー…………まがれ~」
「曲がるか。馬鹿やってねえで飯食え」
「やっぱり曲がらないかぁ」
「当たり前だ」
「うーん…………スプーン曲げの有名な人って誰だったっけ? ユンケルみたいな」
「あー、そういやそんなやついたな。……何だったっけ、光太郎」
「ユリ・ゲラーかい? 昔だいぶ流行った」
「そう! それだよっ、ユリ・ゲラー! 超能力のっ」
「でも確かインチキだったんじゃなかったかな、スプーン曲げ」
「えっ」
「なにっ」
「まきるはともかく、翔子さんまで信じてたの?」
「う、うっせーよっ。ってかスプーン曲げくらいあたしだって出来るっ」
「お母さん、超能力使えたのっ!?」
「それは初耳だね」
「はっ、見てろよっ…………ふっ」
ビュッ キャオラッ
「あれ、なんか擬音おかしくない? 翔子さん。というかスプーンがグニャグニャになってるし」
「ほら見ろっ、スプーンが曲がっただろっ」
「…………お母さん、それスプーンを物凄い早さで振って曲げたんだよね?」
「うっ」
「……私の妻ながら現実離れしてるよ」
「ていうかこの技マンガで見たことあるよ、あたし」
「ううっ」
「スプーンも完全に駄目になったし、代わりに新しいやつ持ってくるよ」
「あ、お父さん、ついでにご飯おかわりっ」
「おっ、まきるは良く食べるなぁ。流石私の娘だ!」
「そりゃね、お父さんの娘だもん! お母さんみたいなアホな行動を取らないように、いっぱい食べてあたし勉強頑張るよ!」
「まきるは凄いな、ははははっ」
「うふふふっ」
「あたしが悪かった! 意地張ったのは謝るから、この空気はやめてくれっ」